プロローグⅠ『残された絶望』
それは遥か未来へと繋ぐ希望。
それは貴女を縛る呪いの言の葉。
『この身を貴女に捧げます』
「どうして、そこまでして戦うんですか?」
——そう問われて、僕は笑った。
「約束、したから」
◆
——何故、彼女がこんな目に遭わなければならないんだ!?
生きとし生けるものの生涯が摘み取られた荒廃の大地。
すのぴは眼前に佇む異形を見上げながら、数日前まで繰り広げられていた大きな戦いの記憶を反芻していた。
世界に加護をもたらし、この地に生きる者達を繁栄させてきた世界樹はその大半が無惨に破壊されてしまった。
なお残る加護は、その巨大さゆえの生命力の賜物だろう。
この世界を襲う悪しき存在——意思疎通も叶わず、本能のまま襲い掛かる相手。
生存競争を勝ち抜いた喜びも束の間、侵略者が残した呪いによって、守ると誓った最愛の存在は悍ましい化け物へと変えられてしまった。
僅かに残されていた人格も今まさに消え失せようとしている。
——ああ……どうか……
癒えきらぬ傷の痛みに顔をしかめながらも、彼女だったものに手を差し伸ばす。
腐臭と錆びた血の臭いを乗せた風が、僅かな希望さえも吹き飛ばしてしまいそうだ。
だが、今のすのぴに余計なことを気に留める余裕はない。
その身に取り込んだ呪いが、意識を飲み込もうとしてくる。
「——っ」
歯を食いしばり、口内に血の味が広がっていく。
喉を焼くような感覚が、途切れそうな意識の糸を辛うじて繋ぎ止める。
焦点が合わなくなってきた視界で、それでも目の前の存在を見据える。
あらゆる生物の特徴を掛け合わせたような異形の存在が、巨大に膨れ上がった体躯に見合った頭部を近付けてくる。
「どうか、この身を糧に……生き延びて」
それは残酷な願いだ。
元の彼女であれば、そのような自己犠牲は聞き届けられないと叱責してきたであろう。
しかし彼女には果たさなければならない責務があり、すのぴの中にある願望が、この選択を導く。
——彼女の助けになるなら、この身を捧げます。
異形の歪な頭部が横一文字に裂け、唾液が糸を引き、異臭が全身を包む。
捕食されようとも構わない。
この身に宿った力があれば、肉体は朽ちず、やがて来る日まで彼女を生き存えさせられるはずだ。
彼女に掛けられた呪いを解くことは、僅かに生き延びた同朋——あるいはその子孫達に託すしかない。
その事に歯痒さを覚えるが、今は個人の感傷など捨て置けば良い。
だから、どうか。
「生きて……使命を……」
言葉は最後まで大気を振るわせることはなく、意識は闇の奥底へと飲み込まれていった。
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TikTokで活動中の甜飴といきさんとそのリスナー『甜飴家』の方々との雑談から設定が生み出された本作——これからお付き合いいただけましたら幸いでございます。
少しでも気に入っていただけたり、続きが気になるなぁと感じていただけましたら幸いです。




