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プロローグⅠ『永き旅路の始まり』

 それは遥か未来へと繋ぐ希望。

 それは貴女を縛る呪いの言の葉。

『この身を貴女に捧げます』

 ――何故、彼女がこんな目に遭わなければならないのか……


 生きとし生けるものの命が刈り取られた荒廃の大地で、その者は眼前に佇む異形を見上げながら、数日前まで繰り広げられていた大きな戦いの記憶を反芻していた。


 世界に加護をもたらし、この地に生きる者達を繁栄させてきた世界樹はそのほとんどが破壊されてしまった。今なおその機能や加護が失われていないのは、ひとえにその存在のあまりの巨大さから来る生命力が為せるものだろう。


 この世界を侵略する悪しき存在との戦い――否、意思疎通を図ることも叶わず、ただ本能のままに襲い掛かってきた相手との生存競争を勝ち抜いた喜びも束の間、奴らが残した呪いによって、守ると誓った最愛の存在は化け物と呼ぶに相応しい悍ましい姿へと変えられてしまった。


 僅かに残されていた人格も今まさに消え失せようとしている。


 ――ああ……どうか……


 癒えきらぬ傷の痛みに顔をしかめながらも、彼女だったものに手を差し伸ばす。

 あらゆる生物の特徴を掛け合わせたような異形の存在もまた、それに応じるよう巨大に膨れ上がった体躯に見合った頭部を近付けてくる。


「どうか……この身を糧に……生き延びて」


 それは残酷な願いだ。

 元の彼女であれば、そのような自己犠牲は聞き届けられないと叱責してきたであろう。

 しかし、彼女には果たさなければならない責務があり、自分の中にある彼女を支えたいという願望が、この選択を採らせている。


 ――彼女の助けになるなら、この身を捧げます……


 異形の歪な頭部が横一文字に裂けていき、口内では唾液が糸を引き、異臭が全身包み込んでいく。

 こちらの意図を汲んでくれたのか、あるいは異形としての本能に従って、こちらを捕食しようとしてくる。

 だが、それで良い。

 この身に宿った力があれば肉体は朽ちることなく、やがて来る日まで彼女を生き存えさせることも出来るはずだ。

 彼女に掛けられた呪いを解くことは、僅かに生き延びた同朋――あるいはその子孫達に託すしかなく、その事に歯痒さを覚えるが、今は個人の感傷など捨て置けば良い。


 だから、どうか。


「生きて……使命を……」


 言葉は最後まで大気を振るわせることはなく、意識は闇の奥底へと飲み込まれていった。

 お読みくださりありがとうございます!


 TikTokで活動中の甜飴といきさんとそのリスナー『甜飴家』の方々との雑談から設定が生み出された本作ーーこれからお付き合いいただけましたら幸いでございます。


 少しでも気に入っていただけたり、続きが気になるなぁと感じていただけましたら、ブックマークやリアクション、下のポイント★1からでも良いので、反応をいただけると作者のやる気に繋がりますので、どうぞよろしくお願いいたします!

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