第17話:交わる想いと揺れる未来
瑞樹が送信ボタンを押すと、要からの返信はすぐに返ってきた。約束の場所は、二人がかつてよく訪れたカフェだった。瑞樹は胸の奥で緊張を覚えながらも、どこか懐かしさに心が揺れた。
「要に会って、何を話せばいいんだろう……。」
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その日の夕方、カフェの扉を開けると、要が窓際の席で待っていた。彼は以前と変わらない落ち着いた雰囲気を纏いながらも、どこか大人びた表情をしていた。
「瑞樹、久しぶりだな。」
要が微笑むと、瑞樹は少し緊張しながら席に着いた。
「本当に久しぶりだね。」
ぎこちない沈黙がしばらく続いた。二人はかつての思い出を胸に抱えながら、どの言葉から始めるべきかを探していた。
「最近どうしてる?」
要が切り出すと、瑞樹は仕事の話を簡単に伝えた。新しいプロジェクトに挑戦していること、責任が増えたことで忙しい日々を過ごしていること。しかし、その声にはどこか力が入っていなかった。
「瑞樹、無理してないか?」
要の言葉に、瑞樹ははっとした。彼の優しい視線に触れた瞬間、心の奥に隠していた不安や孤独感が押し寄せてきた。
「正直、分からないの。私は、自分の選択が正しかったのかどうか……。」
彼女の声はかすかに震えていた。要は真剣な表情で彼女を見つめ、静かに言葉を紡いだ。
「選択が正しいかどうかなんて、誰にも分からない。俺も同じだよ。でも、大切なのはその選択をどう受け止めるかだと思う。」
瑞樹はその言葉に目を見開いた。要もまた、自分なりに選択の重さを抱えてきたのだと気づかされた。
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カフェを出ると、二人は自然と夜の街を歩き始めた。冬の冷たい風が吹き抜ける中、要がふと話を切り出した。
「実は俺、結婚を考えているんだ。」
その言葉に瑞樹は足を止めた。心のどこかで薄々分かっていたことではあったが、改めて聞くと胸が締め付けられるような感覚に襲われた。
「そう……なんだ。」
彼女はなんとか笑顔を作ろうとしたが、上手くいかなかった。要は少し申し訳なさそうな顔をして言葉を続けた。
「俺にとって、お前との時間は本当に大切だった。だけど、あのとき俺たちは別々の道を選んだ。それはお互いのためだったんだと思う。」
瑞樹は俯きながら頷いた。
「うん、分かってる。でも、やっぱりどこかで後悔してる自分がいるんだ。要と過ごしていたら、違う未来があったんじゃないかって。」
二人は立ち止まり、夜空を見上げた。星が静かに輝いている。その中で要が口を開いた。
「瑞樹、俺はお前がこれからどう生きていくのかが気になる。自分を大事にして、幸せになってほしい。それが俺の願いだよ。」
その言葉に、瑞樹は涙を堪えきれなくなった。
「ありがとう、要。本当にありがとう。」
二人は再び歩き出し、駅で別れた。
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その夜、瑞樹は再び案内人と対峙していた。
「彼と再会して、何かが変わると思った。でも、私の心はまだ迷ってる。」
案内人は静かに彼女を見つめ、こう言った。
「迷うことは悪いことではありません。それは、あなたが自分自身を見つめ直している証です。」
「でも、私はどうすればいいの?次に進むべき道がまだ見えない……。」
案内人は微笑みながら答えた。
「新しい選択肢は、いつも突然現れます。そして、その選択肢を掴むのはあなた自身の意志です。心を開き、目を凝らせば、必ず道は見えてきます。」
瑞樹はその言葉を胸に、目を閉じて深く息を吸い込んだ。そして、心の奥から湧き上がる新たな決意を感じ取った。
「私は……もう迷わない。自分の足で、新しい未来を探す。」
目を開けると、彼女の目の前にはまた新たなレールが輝き始めていた。その光景を前に、瑞樹は力強く一歩を踏み出した。
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