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分岐点の果てに  作者: のほほん
堀田瑞樹と近藤要
16/37

第16話:決意の先にある光

瑞樹の目の前に広がる無数のレール。交差し、分かれ、どこまでも続くそれらは、彼女にこれまでの人生を問い直すかのように輝いていた。


「一体どれを選べばいいの……?」


立ち尽くす瑞樹の耳に、案内人の声が響いた。


「選択は恐れるものではありません。あなたが進む道は、すべてあなた自身の決意で輝き始めます。」


「でも、私はもう迷いたくない……。正しいかどうかもわからない選択を、何度も繰り返すのは怖いの!」


案内人は静かに頷くように見えた。


「恐怖は当然の感情。しかし、その恐怖と向き合う覚悟があるなら、どんな道でも乗り越えられるでしょう。」


瑞樹は深く息を吸い込んだ。確かに彼女はこれまで、選択の重みを受け止めながら歩いてきた。しかし、そのたびに残された未練や後悔が彼女を縛り続けていた。


「もう一度、私に選ばせるんだね……。」


彼女は静かに一歩を踏み出した。その瞬間、足元のレールが淡い光を放ち始め、瑞樹の体を包み込んでいった。



---


光が消えたとき、瑞樹は見知らぬ街の中に立っていた。そこは未来の自分が選び取る可能性のある新しい世界だった。周囲の風景は現実に見えるが、どこか夢のような非現実感が漂っている。


「ここは……?」


瑞樹の目の前には一軒のカフェがあった。中から聞き覚えのある声が聞こえてくる。彼女は恐る恐る中を覗き込んだ。そこには要が座っていた。


「要……?」


彼女が声をかける前に、要が誰かに笑顔を向けた。その先には、一人の女性が座っていた。彼女は瑞樹ではなく、見知らぬ人物だった。


「瑞樹……さん?」


驚いたように要がこちらを見る。その瞬間、瑞樹の胸に鈍い痛みが走った。


「私は……。違うの、通りかかっただけ。」


瑞樹は慌てて店を飛び出した。街の雑踏の中を駆け抜けながら、涙が止まらなかった。


「選ばなかった未来がこんなに苦しいなんて……。」



---


瑞樹が気を取り直して街を歩いていると、また別の光景が目に入った。未来の彼女自身と思われる人物が、小さな舞台に立ち、多くの観客の前でプレゼンをしている。


「これが私の夢……キャリアの先にある姿。」


その姿は自信に満ち溢れ、周囲からの称賛を浴びていた。しかし、瑞樹はその顔に浮かぶ微かな寂しさに気づいた。観客の中に要の姿はなかった。


「私が選んだ道は、孤独を伴うものだったのか……?」


瑞樹の胸にまたしても後悔の波が押し寄せる。だが、案内人の声がその思考を断ち切った。


「瑞樹、人生には完璧な道など存在しません。どんな選択にも痛みや苦しみが伴います。しかし、それを超えた先に本当の自分が待っています。」


「本当の自分……?」


案内人は瑞樹の目をじっと見つめた。


「他人の評価や過去の未練に囚われず、あなたが心から納得できる道。それがあなたの進むべき道です。」



---


その夜、瑞樹はベッドの中でじっと考えた。要との未来も、キャリアの成功も、どちらも魅力的だった。しかし、どちらか一方を選ぶことが正解ではないのかもしれない。


「私は、私自身が幸せだと思える道を探さなきゃ……。」


翌朝、瑞樹は会社で新しい提案を行った。それは、自分がやりたいと本当に思うプロジェクトを実現するための挑戦だった。


「この提案はリスクが高い。でも、やってみたいんです。」


上司の中村は少し驚いた顔をしたが、やがて微笑みながら頷いた。


「わかった。君がそこまで言うなら、やってみる価値がある。」


瑞樹は深く頭を下げ、デスクに戻ると新たな計画を練り始めた。


その時、スマートフォンが振動し、画面には要からのメッセージが表示されていた。


「久しぶりに会わないか?」


瑞樹はしばらく画面を見つめた後、ゆっくりと返信を打ち始めた。



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