表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
分岐点の果てに  作者: のほほん
堀田瑞樹と近藤要
15/37

第15話:二つの未来の狭間で

瑞樹が新たなレールを選んだ瞬間、世界がゆっくりと変わり始めた。足元に広がる光の道はやがて姿を変え、彼女を見知らぬ場所へと導いていく。景色が徐々に明るさを増し、目の前に広がったのは未来を象徴するような高層ビル群と忙しなく動く人々だった。


しかし、瑞樹の心は晴れなかった。選ばなかった未来――要と共に歩んでいたはずの道が、頭の片隅に焼き付いて離れない。


「私、これで良かったんだよね……。」


彼女の独り言は誰にも届かない。立ち尽くしていると、背後からふと聞き覚えのある声が響いた。


「瑞樹、大丈夫か?」


振り返ると、そこには要が立っていた。しかし、彼の目はどこか冷たく、瑞樹が知っている要とは少し違っていた。


「要……?」


「何言ってるんだよ、仕事に集中しろっていつも言ってただろ?」


その言葉に、瑞樹の中で違和感が膨れ上がった。要の表情は真剣だが、彼女が知る彼の優しさは感じられない。この要は、別の未来の彼なのだろうか――。



---


瑞樹はオフィスに戻り、新しいプロジェクトに取り組み始めた。チームリーダーとして多くの責任を背負い、忙しさに追われる日々が続く。充実感は確かにあったが、それはどこか空虚な感覚に覆われていた。


ある日、ふとスマートフォンを確認すると、SNSのタイムラインに要の名前が流れてきた。そこには彼が笑顔で映る写真と共に、「家族と過ごす幸せな時間」という言葉が添えられていた。


瑞樹は画面を凝視しながら、選ばなかった未来の光景が胸に突き刺さるのを感じた。


「どうして……こんなに苦しいの?」


選択は正しかったはずなのに、瑞樹の心にはぽっかりと穴が空いていた。



---


その夜、瑞樹は再び夢を見た。夢の中で案内人が現れると、彼女は怒りをぶつけた。


「ねえ、どうしてこんなにも選択が苦しいの?私はキャリアを選んだのに、まだ何かを求められるの?」


案内人は静かに瑞樹を見つめ、いつもの冷静な声で答えた。


「それは、あなたの心がまだ何かを探しているからです。選択は終わりではなく、新たな始まり。あなた自身が納得するまで、選び続けなければならない。」


「でも、どれが正解かなんて、誰にも分からないじゃない!」


瑞樹の叫びにも、案内人は動じなかった。


「正解はありません。ただ、あなたが進んだ道こそが、あなたにとっての真実になる。」



---


翌日、瑞樹はオフィスで新たな提案を上司にプレゼンしていた。プロジェクトの成功に向けた計画は完璧だったが、その途中で彼女はふと手を止めた。


「堀田さん、どうしました?」


上司の中村が不思議そうに尋ねるが、瑞樹は答えられなかった。頭の中に、またしても選ばなかった未来の断片が浮かび上がってきたのだ。


要と過ごす日々、二人で未来を語り合った夜、そしてその後の喪失感。それらが彼女の心を支配し始めた。


「……すみません、少し席を外します。」


瑞樹は会議室を出て、屋上へと向かった。冷たい風が頬を打つ中、彼女は涙を堪えきれなかった。


「どうして、こんなに苦しいんだろう……。」


その瞬間、またしても案内人の声が聞こえた。


「堀田瑞樹、あなたが今の道に疑問を抱くなら、新たな選択肢が現れるかもしれない。」


「新たな選択肢……?」


「選び直すことはできない。しかし、新しい道を切り開くことは可能です。それには覚悟が必要です。」


案内人の言葉に瑞樹は目を閉じ、深呼吸をした。


「覚悟……私にそれがあるのかな?」



---


その夜、瑞樹は再び光のレールに導かれた。今回は二本ではなく、無数のレールが交差している。どの道を進むべきか、どれを選べば後悔しないのか――その答えを探すために、瑞樹は自分の心と向き合う決意をした。


「私は、ただ幸せになりたいだけなのに……。」


瑞樹の言葉は闇の中に消えたが、その目には確かな決意の光が宿っていた。



---

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ