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ep.2-1 一晩明けて

太陽がまだ出て来てないぐらいの頃。

大将は布団の上でふと目が覚めた。

目をこすりつつ、まだ眠たいのか大きな欠伸をする。

よく見ると、少し目の下にクマが出来ている。

そして、ふと横を見た。



すずねが無造作にすやすやと同じ布団の中で寝ていた。



「まさか、寂しいからって私の布団に入ろうとするとは。

 昨日の夜は色々大変だった……

 明日からはちゃんと自分の部屋で寝るように言わないと」



そう呟くと、すずねを起こさないように布団からでた。

ご飯とお味噌汁を器に盛り、魚を焼く。

いつもの日課なのか、テキパキと作っている。

そして、すべての準備ができてから、すずねを起こしに行った。



「すずねちゃん。朝だよ」

「……むにゃむにゃ」



すずねはまだ眠たいのか、目をこすりながら起きる。

そして大将を見て満面の笑顔になってから一言。



「たいしょう。おはよう」

「あぁ、おはよう」



大将もすずねの笑顔を見て笑顔で答えた。

二人は用意していたご飯の前に座る。



「いただきます」

「いただき……ます」



大将が手を合わせて言っているのを見て、すずねも真似をする。

二人はご飯を食べ始めた。

大将はすずねが食べやすいよう、魚の身をほぐしつつゆっくり食べる。

すずねは、大将が用意したであろうスプーンを握ってご飯を必死に食べている。



「あちっ!.......うぅ」



すずねはお味噌汁を飲もうとして勢いよく飲んだためか、

小さな悲鳴を上げる。

その様子を苦笑いしながら大将は氷の入った水を渡す。



「はい、水。ご飯は逃げないんだから、ゆっくりたべな」

「うん」



すずねは水を受け取り飲んで舌を冷やしているようだ。

そのまま二人はわいわいしながらご飯を食べきり、手を合わせる。



「「ごちそうさまでした」」



今度は大将とすずねの声がそろう。

大将は少し驚きつつもすずねを見ると、

すずねは『すごいでしょ!』と言わんばかりの笑顔で大将を見返していた。

大将も笑顔ですずねに返す。

そして大将は食器を片づけ、すずねに話す。



「すずねちゃん。いつもの日課をしに行くけど、来る?」

「にっか?」



すずねは首をかしげる。



「俺は、いつもこの店の横にある祠に手を合わせにいっているんだ。

 祠は壊れちゃったけど、少しでも片づけたくて」

「うん。いく」

「そうか。じゃあいこう」



そう言うと、二人で店を出た。



大将とすずねは店を出てすぐ近くの祠の前につく。

昨日から手付かずなのか、いたるところに木の破片が飛び散ってる上、

祠自体も完全にぺしゃんこになっていた。



「やっぱり酷いありさまだな……」



大将は呟く。

すずねもよく見ると、寂しそうな顔をしてつぶやく。



「どうしてこわれてるの?」

「わからないんだ。でも、頑張ってなおすから」



大将はすずねにそう言うと祠の周りに飛び散った、

祠の一部であっただろう木などを集める。

それを見たすずねも自然と同じように片づけをしていた。

祠はボロボロではあるものの、祠の前だけだが少し綺麗になった。

大将は綺麗にした場所にしゃがむ。

すずねも慌てて近くでしゃがんだ。

そして大将は目を閉じて手を合わせる。



「いつもありがとうございます。

今日も良い一日でありますように」



すずねは意味が分かっていない様子だが、

大将と同じく目を閉じて手を合わせた。



暖かな風が大将とすずねの頬をなでる。



大将は目を開き、立ち上がる。

それに気づいたすずねも同じく立ち上がる。



「さて、行きますか」

「うん!」



大将とすずねはすぐ横の店に帰る。

ちょうどお昼前になっていた。

二人は夜の開店に備えて準備を始める。

大将は色々な仕込みを始め、すずねは大将の指示に従って、床の掃除を始めた。


すると、開き戸がガラガラと音がした。

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