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6話:冒険への旅立ち

翌朝


棺桶の中で自分の片腕からする嗅ぎ覚えのある血液の匂いに数刻前の自分のやらかしを思い出す。一度眠って現実逃避をしたからこそアレはどう考えても悪手だったとわかる。少し間をおいて冷静になれば魔法の解除方法が分かったかもしれないし、解除方法がわからなかったとしても即死させる方法にももう少し色々と配慮したやり方が出来ていたと思う


あのエルフに魔法をかける切っ掛けとなった突如脳内に現れた謎の使命感のような何か


アレにはもう絶対に従わないと決意しながら身を起こす


「あ~・・・・・」


何かちょっと眩しいなんて思いながら部屋を見渡すと、頭を砕いたエルフの死体や血痕などは無くなっていた。一瞬もしかしたら全部夢だったのではなんて思ってみたりもした。しかし


{ita・・・i、kor、itaiiiiiiiiたa}


部屋の中央から動かずに形の崩れた言葉で苦痛を訴える生きる屍に、昨日私わたしがやらかしたことは誤魔化しようも無い現実なのだと思い知る


「はぁ・・・めんどくさい」


棺桶の縁に手をついて立ち上がる


(というか折角服持ってきてもらったのにさっさと寝たせいで結局まだ全裸じゃん)


(まあクローゼット開ければもう新しい服はあるだろうし良いか)


これからやろうとしていることの割にわたしの脳内はそんなことはどうでも良いとばかりに違うことを考えていた。今のわたしにとってはいい加減服を着て活動したいという欲求の方が遥かに大切になっていた


「今日はもっときれいにできるかなっと・・・」


ユラユラと揺れるだけで逃げも隠れもしない生きる屍にアイアンクローをする


どうせ一度やったのなら二度も三度も変わらない


紙を丸めて握り潰すように生きる屍の頭蓋を砕き潰した。慎重に潰したおかげで昨日と違って必要以上に血が飛び足らなかったし楽に処理できた


(あ、てかコレ。なんか命令でも与えて手足にすれば良かったかな・・・まあ、もう潰した後だしどうでも良いか)


頭部を失って即死したことにより魔法の効果も消失した生きる屍はバタリと倒れ伏す。潰した所から微かに垂れる血液にカーペットの染み抜きをするメイド達には悪い事をしたかな?なんて思いながら呼び鈴を鳴らした


チリンチリン


相変わらず永遠になっていたら良いのに思うほどに静かで落ち着いた音だ。もう鳴り止んでしまったことが少し物寂しい


後はしばらく待てば昨日の猫耳メイドが来るだろう


世話役が来るまでの間は暇なので、何をして欲しいのかをどんな喋り方で伝えようかと窓際の椅子に座った


どうしてカーテンが閉め切られているのか、折角の大きな窓なのに景色が見えないのは勿体ないと思い開けて外の景色を眺め、今日の光は昨日と比べて随分と明るいなどと呑気な事を考えながら()()空に流れる雲を見送り続けて数分


コッコンコンッ


わたしが居る部屋に入らなければならないことに動揺でもしているのか、昨日よりも不規則なリズムでノックされたことに若干の苦笑いをしながら返事をした


「入りなさい」


「失礼します」


扉を開けて入ってくる猫耳メイド。だがその顔が下を向いて身を縮込めるせいで表情一つ窺うことができなかった


「お、お嬢様、何か不快な出来事がございましたでしょう・・・ヒッ!?」


わたしの顔色を窺おうと視線を上げたせいで部屋の中央に倒れ伏している死んだ屍を見てしまったらしい。それが元吸血鬼の死体であるとは言え昨日の今日ではあのエルフの事がフラッシュバックしてしまうのだろう


(不快って・・・まだ起きたばかりなのに何も無いよ)


「何も無いわよ。ただ、そこのソレを片付けて欲しいのと手が汚れたからそれを拭うタオルを持って来てちょうだい」


(はぁ・・・もっと気楽な口調で話したい)


心の中で思っていることをそのまま口にできたのならどれほど楽だろう。だがそんなことをするには色々と警戒しなければならないことが多すぎた。一つ一つ確実に対処していかなくては


今後の自分の立ち回りに関する方針を考えながら猫耳メイドに指示を出した


「畏まりました。直ちに実行しま・・・お嬢様!?」


「なに?」


眼を大きく見開きながら突然声を荒げる猫耳メイドだが、少なくともわたしには身に覚えが無かった。何となく皿から溢れてもなお餌を注がれてドン引きした猫の動画が脳内をよぎるような表情だ


「どうしてカーテンを開けているのですか!?」


(どうしてって・・・え?駄目なの?なんか不味いの?え?)


「何を言っているの?開けないと外の景色が見れないじゃない」


(あ、もしかしてどうして自分で開けてるのかってこと?え、なにそんなことも世話役にやらせなきゃいけないの?めんどくさ)


猫耳メイドの驚愕に満ちた質問に困惑したが、そういえば貴族とかは基本的に自分では何もせず使用人とかに全部やらせる的な事を異世界モノに書かれていたことを思い出した。自分の仕事を奪われるということはお前は用済みだと言われるようなもの、そしてこの城において用済みとなった世話役がどうなるかなど想像に難くない


(あ~・・・これは迂闊だった。・・・なんて言い訳しよう。取り合えず別に用済みってわけじゃないことから伝えて後は・・・)


「しかしながら、日光を浴びるなど・・・」


「は?」


「さ、差し出がましいことを言って、申し訳ございません!」


「あ、いや・・・まあ良いわ。許してあげる」


「お恵み深いお慈悲、あ、厚くお礼申し上げますっ・・・!」


喋り方一つ間違えただけで床にめり込ませる勢いで頭を垂れる猫耳メイドに、今後どうすれば普通に話せるようになるんだろうと頭を悩ませながらも、今後はより一層気を付けるべきだと何度か自分に言い聞かせた


「もう良いわ。さっさとタオルを持って来てちょうだい。終わったらそこに落ちてるのの掃除よ」


「か、畏まりました」


「それでは、失礼いたします」


色々と面倒臭くなり一旦猫耳メイドを部屋から退出させて一人で考える時間を作った


「はぁ・・・面倒臭い面倒臭いメンドクサイメンドクサイメンドクサイ!」


「もういい加減普通に喋りたい。格式張った感じのお嬢様口調とかぜんっぜんわっかんないよ。無駄に神経使うし、いやもうこの際お嬢様口調は良いや頑張って使う、頑張って使うから誰か正しい喋り方を教えてくれる教師が欲しい。普通こういうのって家庭教師を呼んでその人からこの世界の常識だとか色々学ぶ展開でしょなんでチュートリアル的な事教えてくれる人が誰も居ないの難易度高すぎるでしょクソゲーだよホント」


ようやく現実と向き合いながらも落ち着いて考えられる時間が得られたことにより、誰に言う訳でも無いが不満が溢れる。言ったところで何か起こるということは無いが少しでもストレスを軽減しようとダラダラと文句を垂れずにはいられなかったのだ


「てかホント、っ・・・!?チッ、何?鬱陶しい」


不満を口にしていたところに急に横から差す光に目が眩み、それにすらキレ気味に反応する。


「誰下敷きで太陽反射したあほ・・・は・・・・たいよう?」


当たり前のように浴びていた光の正体に今更気が付く。起きた時からなんだか眩しいなと思ったのも、今日の光は強いなと感じたのも、空が青くて白い雲が流れているのも、すべては今が朝だからだ


なんの問題がある?むしろ問題しかない。今のわたしは吸血鬼だ。それがなぜ太陽光を浴びて平然としていられる。この世界の吸血鬼は日中でも行動できるのが普通なのか?そんなわけはない。それが普通だと言うのならあの猫耳メイドがあそこまで驚いていた理由が無いつまりは日光を浴びても平気な吸血鬼は異常な存在だ


「日中でも活動できる吸血鬼とか、これが異世界チートってやつ?今の状況だとなんかむしろマイナスになってる気がするんだけど」


長期的に見ればプラスの能力だとしても現時点ではわたしの化け物具合に拍車がかかるだけだ。吸血鬼は圧倒的な化け物だと言うのに何故人々は滅びないか、何故吸血鬼はすべてを支配できないのか、何故吸血鬼を滅ぼす英雄譚が作られるのか。それらはすべて日光という一日の約半分の時間を占める世界を照らし続ける光が吸血鬼の弱点だからだ


他に吸血鬼の弱点としてあがるのは、銀、ニンニク、十字架、流水、細かく探せばもっとあるかもしれないが、日光を除くほぼすべての弱点が人間が自らの手によって吸血鬼に向ける必要がある武器だ。圧倒的身体能力を持つ吸血鬼に生身で立ち向かうとか無理ゲーも良いところだ


(不味いな・・・このままじゃますます仲良くなるなんてできない)


(というかそもそもこの城に居るメイド達と仲良くすること自体至難の業なんじゃないか?こうなると外から拉致されたばかりの子と一早く接触するとかの方が現実的だ)


自分が吸血鬼である限り、常日頃から吸血鬼の恐怖を骨身に感じているメイド達と仲良くなるのは無理だ。ならば外から来たばかりで、吸血鬼を恐れてはいるが具体的にどう怖いのかを理解していなくて、そしてわたしは吸血鬼でありながら人間とか亜人とかと仲良くなりたいのだとアピールできる相手


(・・・無理じゃね?)


コンコンコンッ


頭を抱えていると扉をノックする音がした。猫耳メイドが戻って来たのだろうか


「入りなさい」


「失礼致します」


その両手には綺麗に畳まれたタオルが乗っていた


「拭いて」


先程の反省を生かして猫耳メイドに仕事を指示する


血で汚れていると言っても前腕までが濡れているという程度なのでこのくらいであれば自分一人でも楽に拭けるが、こんな些細な事でも世話係の仕事を奪ってはならないとは・・・ほとほと面倒だ


「お手を拭かせていただきます」


わたしが指示したことなのにわざわざ再度許可を得るの?めんどくさー・・・)


恐る恐ると言った様子でわたしの腕を拭く猫耳メイド。わたしわたしで、迂闊に動かして猫耳メイドを吹き飛ばさないように細心の注意を払う


(この世界に来て一番平和な他人とのコミュニケーションがこれかぁ・・・)


「はぁ・・・」


「っ!申し訳ございませ「別に怒ってないわよ」


「は、はい」


(やっぱりこの猫耳メイドと仲良くなるのは難しいかもしれない)


どうしたものかと窓から空を見上げた


(でっかい鳥・・・10mくらいありそう・・・・・それって本当に鳥なのかな)


青空を数羽の鳥っぽい何かが飛んでいる様を眺めていてある事を閃いた


「ねえ」


空を眺めたまま猫耳メイドに声をかける


「は、はい!」


(もっと気楽に返事して良いのに)


「この城の外って・・・人間、獣人、エルフ、何でも良いわ。吸血鬼以外が生きている場所ってあるの?」


「吸血鬼の方々が支配下に置かれている町がいくつかあったと記憶しておりますが・・・」


「それ以外」


「え?・・・で、では、その、未だに吸血鬼の方々からの支配に抗い続ける人間の国が、ちょうど太陽の方向にあったと記憶しております」


「ふぅん・・・」


「お気分を害してしまい申し訳ございません!」


「ぇ?別に・・・」


(まあとりあえずあっちの方にあるのはわかった。前世の日本と同じ常識で語っていいのか知らないけど太陽がある方だから東か)


ひとまずどちらの方向へ行けばいいのかはわかった。ならばあとは服を着て出発するだけだ


「ねえ、わたし遊びに行きたいから服を用意してちょうだい」


「は、はい、どのようなお召し物にいたしましょう」


適当に決めて貰っても良いが、それで魔法少女チックなファンシー衣装を渡されても困る。何の意味も無いのにそんな服を着て堂々と歩く度胸は無い


わたしが決めるから、あなたが着せて」


「畏まりました」


そうしてクローゼットの中を覗き始めたのだが・・・ゴスロリ、ゴスロリ、ゴスロリ、ゴスロリ、ゴスロリと黒を基調としたゴスロリばかり。誰だこの服を用意したのは?猫耳メイドの趣味か?それとも日頃の仕返しか?


「・・・この洋服達って、誰が選んでるの?」


「ご主人様ですが」


「ご主人?・・・・・あ、お父様ね」


(ということは?あの化け物って、面食いゴスロリ好きロリコンサディスティックおじさんってこと!?)


「・・・・・度し難いわね」


「はい?」


「なんでもないわ」


わたしは、あの化け物が人類の敵であるかどうか抜きにしても滅ぼした方が良いタイプのやつなのではと思いながらゴスロリの中でも比較的マシで動きやすいものを探し始めた。一口にゴスロリと言っても色々な種類があった所為でゴスロリに関する変な知識が無駄に増えていっている気がする。脳のメモリーがおっさんの変態趣味で汚染される


その果てに選んだのはミリタリー系ゴスロリだった


所詮はゴスロリという見た目に寄ったファッションであるため実用性を問いたくなるような部分もあるがそれでもミリタリー系だ。他のゴスロリよりは比較的動きやすいと判断した


靴も平地から森の中まで歩くことを考慮して足の保護が一番できそうなものにした。猫耳メイドに聞いたらオーバーニーブーツ?という種類のブーツらしい。踵が無駄に高いものが多かったが流石変態おじさんの趣味だ。靴底が低いタイプもあった


後は森の中を歩いた際に触れると被れるような葉っぱやクモの巣などから頭部を保護する目的でフード付きケープを被って長めの手袋でも付ければひとまずこの城で揃う限りの始まりの旅人装備は完成だろう


似合っているとかいないとかの話は今はどうでも良い。こんな変態おじさんの城で実用性を求めながら見た目にまで気を使った装備なんて見つかる訳が無い


「あの、お嬢様。差し出がましいようですが・・・」


「なに?見た目に関するクレームは受け付けないわよ」


「いえ、あの、お洋服の下につける下着やインナーなどは選ばないのでしょうか。と・・・」


「・・・」


(そう言えば普通に忘れてた)


「そっちは適当に黒いものを選んでちょうだい」


既に変態おじさんの趣味によるゴスロリコレクションを見終わった後なのだ。変態おじさんが揃えた女物の下着まで吟味なんてしたくない。そんなことをしようものなら脳が腐る


「こ、こちらでよろしかったでしょうか?」


そう言って猫耳メイドが持ってきた下着は、何故か前世の現代日本で見たことがあるデザインの下着だった


「・・・定番のドロワースとかじゃないのね」


「も、申し訳ございません!ご主人様が取り揃えたものし「ああ、それ以上言わないで」


(腐る。耳が腐る。てかホントに下着の方まで見に行かなくて良かった目まで腐るところだった)


中世なのか、現代なのかはっきりして欲しいと思った


(はぁ、さっさと着替えて出発しよう)




「それじゃあわたし、遊びという名の旅に出るから留守をお願いね」


「・・・はい?」


正面玄関から出ると何を言われるかわからないと考えたわたしは部屋の窓の縁に脚をかけ、そして


「ごきげんよう!」


「え、あ、は?お嬢様!!?」


飛び降りた

主人公の装備

頭:フード付きケープ(黒)

腕:ロンググローブ(黒)

胴:ミリタリーゴスロリ(黒&赤)

足:オーバーニーブーツ(黒)

下着:黒



次回投稿予定日:気分次第

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