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5話:すべてが悪い方向へ転がった

チリンチリン


呼び鈴を持って軽く振ってみるととても静かで澄んだ鈴の音がした


(鈴の音の良し悪しとかわからないけど・・・少なくともこれは良い音な気がする)


呼び鈴と言うのだからそういう使い方は想定外だと思うが、寝る際にこの鈴をずっと一定間隔で鳴らし続けて欲しいと思うくらいに落ち着く音だった


ただ、こんな小さな音で果たして本当にあの猫耳メイドを呼べるのだろうかという疑問はあるが


よくある異世界モノのように犬猫の獣人は聴覚や嗅覚が優れているのならば距離によっては聞こえないことも無いのかもしれない。しかし実際にどれくらい聞こえるのかは予想するしかないため、下手したら隣の部屋に居たって気が付かないとかもあるかもしれない


(まあ、しばらく待ってみて来なかったらまた鳴らしてみればいいか)


猫耳メイドが来るまで暇なので気品のある座り方とは何かでも考えながら待とうと、脚を組みなおしたりしながら椅子に座って待っていた




コンコンコンッ


「お嬢様。貴女様の世話役です」


相変わらず声色には緊張している様子が出ているが、まあ相手からすればわたしも同じ化け物に過ぎないのだから当たり前だ


わたしわたしで相応しい返事って何だろうとか考えて少し緊張している


「入りなさい」


「失礼致します」


そうして入って来た猫耳メイドは何故か胃液特有の酸っぱい臭いとアンモニア臭いが微かにした。じっくり嗅いだわけではないのであまり記憶に残っていないが、少なくともこんな特徴的な臭いはしていなかった気がする


(まあ今は良いか)


「棺桶とクローゼットの中の洋服それらをすべて処分して新しいの用意してちょうだい」


「すべて・・・でございますか?」


(?もしかして何か問題あるのかな)


「何か問題でも?」


「めっ、滅相もございません!ですがわたし一人では人手が足りず、時間がかかってしまう恐れがありますが」


(ああ・・・確かに一人で全部やれって言うには作業量多いか。特に棺桶とかかなり重そうだし)


「なら追加の人手を用意すれば良いじゃない」


「・・・畏まりました」


(え、何か駄目だった?なら言って欲しいんだけど?ちょっと?)


そんなわたしの願いは叶えられず、猫耳メイドは退出しまった


(あ、てか人員が増えるってことはもっと気を張らなきゃいけないってことじゃん!・・・ちょっと、早計だったかな・・・・・)


命令してしまったものは仕方が無い。せめてまた入ってくる時までに気を休めておこう




コンコンコンッと再び猫耳メイドがやって来た。しかも今度は別種の獣人とエルフと人間の少女が追加されていた


計4人になった人手でサクサクと持っていく。ただ人間の少女だけは他のメイドよりも非力なようで、少しだけ効率が悪いように思った


行ったり来たりで洋服を持っていくメイド達をボーっと眺める。ふとそのメイド達は部屋の隅の方で心臓を失くしているエルフの方だけは絶対に見ないようにしていることに気が付いた


(そう言えばあのエルフと部屋中央で死んでるお姉様ってどうすれば良いんだろ)


何かしらの手段を以って死者を弔うべきかもしれないと思い、その時偶然部屋に居たメイドの一人に声をかけた


「ねえ」


「ぁひゃい!」


特に意識せずに声をかけたのが悪かったのだろう。部屋に居たのは人間の少女だった


他のメイドと比べ若い事もあり肝が据わっていないのか、わたし相手に酷く怯えている様子が見て取れた


(えっと・・・化け物らしい聞き方ってなると・・・・?)


「そこと、あそこに転がってるの。どうすれば良いと思う?」


部屋の中央に転がるお姉様と部屋の隅に転がるエルフを指差して、とても元々は命が宿っていたモノ呼称するとは思えない言い方で示した。多分この方が化け物らしいと思う


「ァっ・・・・・はい゛」


少女の視線もわたしが指差した先に釣られるように動いたのだが、お姉様を見ている時はただ怯えているだけだったのに、ロストハートエルフの方を見た時は一瞬泣き出してしまいそうな顔をしていた。もしかしたら知り合いだったのかもしれない。ここは死者の正しい扱い方を聞いて、メイド達のからの評価を理解しえない化け物から、もしかしたら話ができるかもしれない化け物になるチャンスかもしれない


「その゛、お好きに・・・なされるのが、よろじいと思います・・・グスッ」


(ええ・・・・)


(死者の扱い方を聞いてその通りにしたいから聞いたのに、結局わからないじゃん)


(それともあれかな?この世界ってあまり死者に対する扱いって良くないのかな?終わってんな~)


化け物の都合で殺されて死んでも適当に処分されるだけとは、あのエルフも随分と報われないものだ


じゃあそこら辺の地面にでも埋めといてと言おうとして、そんな大地を汚すなんてとんでもないとか言われても困るしなあと頭を悩ませていると。脳内に一つのまるで答えを得たような感覚が現れた


(この通りに発現する、べき・・・)


作成(クリエイト)生きる屍(リビングデッド)


音のようで音ではない、理解できるようで理解できない摩訶不思議な言葉がわたしの口から出た


すると


ビクビクッ!


部屋の中央と墨の方で二つの死体が動き出した。その様はまるで糸に吊るされた人形の如く外部からの力によって無理矢理立ち上がり関節を動かされているような歪な稼働の仕方だった


(うえ゛・・・)


わたしは自分が今何をしたのかを理解した


魔法を使ったのだ。しかも元の世界から考えれば倫理観をドブ川に蹴り入れるような類の魔法を行使したのだ


この世での活動を終えた死者の肉体を魔法という力によって無理矢理稼働させる


両方の死体とも背中と胸という違いはあっても大きな穴が開いている。外部の力により動かされた肉体は、その穴から肉体に残った僅かな血液さえも垂れ流しだした


{くる。Siいk、koro・・・koろしtえぇ゛・・・・・・}


{いa、やめte・・・}


更に更に駄目押しとばかりに最底辺を更新した


死した肉体から切り離されたはずの魂を強引に肉体へ引き戻して再び現世へ縛り付ける。おまけにかなり痛そうな雰囲気だ。肉体が受けた傷の痛みが継続するのか、無理に縛り付けられた魂が削られるのか二つの動く死体からは絶えず苦痛にもだえる声が漏れ出続ける


(絶対違う絶対違う絶対違う。絶対今使うべきじゃなかったってこれ!誰だよこんなの使えって言った奴!?あ、わたしか?いやあれ絶対私わたし以外の何かだって!)


死んだはずの肉体が再び動き出したこと、そしてその死体の中には親しい仲の相手がいたこと、更にその死体達は生前に受けたどんな苦痛よりも何倍も苦しそうに呻いていること


その事実に人間の少女はエルフの方を見ながら僅かばかりの涙を浮かべ最早何をする気も起きないとばかり絶望してその場に座り込んでしまった


「っ!そ、そんな・・・」


おまけにタイミング悪く帰って来た他のメイド達が動く死体のエルフを見て口元を抑えながら絶句してしまった


(ああもう何から何まで最悪だよ。これどうすれば良いの?解除方法とかないの?)


解決方法を模索していると視界が揺れ、足に何かが触れる感触があった。視線を足元に移し感触の正体を視界に入れるとそこに居るのは生きている方のエルフのメイドだった


「ど、どうか。どうかお願いします。彼女に、慈悲をっ!」


わたし(わたし)は如何様にも嬲り殺されても構いません。ですのでどうか、彼女にお慈悲を!」


「彼女から、死さえも取り上げないでくださいませっ!」


きっととても仲が良かったのだろう。自分の身一つ犠牲にするだけで死者としての安息を与えて欲しいと必死に懇願する様は、とても昨日今日あったばかりの間柄がするようなことではなかった


「ふぅん・・・」


別に懇願されなくてもどうにかするつもりだったし、あのロストハートエルフに二度目の死を与えるにあたって生きている方のエルフを嬲る気も無い。何なら今すぐやったっていいくらいなのだが・・・これどうやって解除すれば良いんだろう?


さっきから魔法止まれとか解除とか色々やろうとしているが魔法の効果は一向に止まる気配が無い。足元のエルフもますます「どうかどうか」と五月蠅くなるし、何か犬耳?っぽい獣人の子まで一緒になって懇願し始めたし、人間の少女は相変わらず動かないし・・・ホントどうしよう


(・・・仕方ない!本当はやりたくないけど。生きる屍に二度目の死を与える定番の方法で無理矢理解決しよう。本当はやりたくないけど!これ以外の方法があるなら真っ先にそっち使うけど!多少面倒くさくてもそっち使うけど!)


「良いわよ」


わたしの言葉に地獄の中で仏を見たとばかりに希望の瞳で足元のメイド二人が見上げてきた。そんな期待に満ちた目で見つめてきているところ悪いが、今からやろうとしている方法ははっきり言ってわたしも結構アレだと思っている。それでもこれしか解決方法が思いつかなかったんだから仕方ない


(これは救済、これは救済、これは救済。結果的にわたしが与えた地獄だけどこれは救済!)


これからする予定の自分の行いを正当化しながらロストハートエルフに近付く


パッと見の肉体年齢的には14歳くらいの人間の少女と等しいので、わたしの身長でも余裕で届く


手を広げロストハートエルフの頭部を掴むと地面に叩きつけるべく引き寄せた


たぶん死んでいるけど追加で攻撃したら魂か何かに痛みが行く。故に痛みを感じる間も無く即死させる必要がある。そして生きる屍を一撃必殺する定番の方法と言えば頭蓋を砕き脳髄をぶちまけさせること


エルフのモノもそうかはしらないが人間の頭蓋骨は案外固い。壁に叩きつけて潰そうとしたら壁の方が壊れるかもしれないし、殴り砕くにしても何発も必要かもしれない


ならば壁よりは頑丈に作られているであろう床に、そして壁と違って床に叩きつけるなら床に着くまでに十分な加速距離がある。だから手加減とか人型を潰す忌避感とか全部抜きにして全力で叩きつける


「スッ、フッ!」


ただ誤算があったとすればわたしは今馬鹿力があるであろう吸血鬼だということを失念していたことだろうか


全力で叩きつけるべく指に力を入れて引き寄せたのが不味かった。まるで水風船を全力投球しようとして途中で手の中で破裂してしまったかの如くロストハートエルフの頭部もブシャッと破裂してしまう


手の中にあったはずの頭部が無くなり手は空を切る。そして勢いそのまま血液やら脳髄やら脳味噌の肉片やら諸々が付着した手は勢い良く後ろへ振り払われ、絶望して座り込んでいた人間の少女の顔面にモロに飛び散った


白と黒のメイド服を着ていた少女は顔から洋服までほとんどが赤く染まってしまった


(おぅ・・・ああ・・・・・これは、わたしが悪い・・・・・・)


突然顔にかけられたドロッとした冷たい液体に少女は意識を取り戻してしまった。頬をそって撫で指に付着した朱い液体、メイド服の白いエプロンの中には朱い液体の中に混じるピンク色の肉片


最悪の想像をしてしまった人間の少女は事実を否定するべく視線を上げてしまう。そこには頭蓋の半分から上が強い力によって強引に破壊され中身を撒き散らされた元ロストハートエルフが床に転がっていた


「ぃ・・・ぃゃ・・・・ぃゃァ・・・・」


フルフルと首を横に振って一生懸命現実を否定しようとするが人間の少女の眼前に広がる確固とした事実に嫌でも理解してしまう


「いやーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!」


(どうしてすべてがわるいほうこうにいくの?)


人間の少女の絶叫。救済だと思っていたのは紛い物だったと知った瞳。そして明日は自分がああなるかもしれないと察した諦めの表情


わたしは考えることを止めて新しくなった棺の中に閉じこもるのだった

次回以降の投稿は、気が向くか、読む人が一人でも良そうなら考えます。


更新予定:未定

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