3話:とある存在からのメッセージ
後書きに現時点の主人公のステータスと、この作品内でのステータスの設定やスキルの詳細などが記載されています。
コンコンコンッ
意識が戻ったのは誰かが扉をノックする音でだった
(あ、勿体ないことした!折角一人きりでゆっくり考えるチャンスだったのに)
「お嬢様、お夜食をお持ち致しました」
扉の向こうから微かに震えた声が聞こえる。多分あの猫耳メイドの声だと思う
差し迫った死の気配が遠のいたことにより落ち着きを取り戻したのだろう。噛んだり詰まったりといった様子は無かった
(それでも微妙に怖がられてるみたいだけど)
「ぃ・・・」
良いよ。そんな気楽な返事をしようとしたところで思いとどまった。あのメイド達は吸血鬼への恐怖心により従っている。そんな吸血鬼の娘が大して怖くも無い存在だと思われた場合どうなるかなど想像に難くない
舐められるし、まず間違いなく報復として色々される
気楽に話したい。怖くないことをアピールしたい。仲良くなって色々聞きだしたい
そんな欲求はひとまず置いておき、しばらくは舐められない程度の態度でいようと決めた
「入ってきなさい」
ガチャリと扉を開けて猫耳メイドが入って来た
「失礼致します。こ・・・こちら、エルフの鮮血にございます」
(あ、やっぱりエルフなんだ)
物騒な言葉はあえて無視する
「そう」
金の装飾が施された白磁器のティーカップ。あまり派手さを感じないデザインは気品があり、無駄に飾るばかりでいっそ下品にも思える装飾過多に比べて非常に私好みのデザインだった
真っ白のティーカップに注がれた赤い飲み物、アクセントを努める金の僅かばかりの装飾が良い味を出している。あとはこれが血でなければ完璧だったのに
やっぱり気が変わったからいらないと下げて貰っても良いが、こうしてエルフの血が出されているのは望んでいない結果だったとは私の責任だ。血なんて鉄臭くて不味かった記憶しかないが、私は今は吸血鬼、もしかしたらおいしく飲めるかもしれない
(どうしても不味かったら一口だけでも飲んで最低限の礼は払ったということにして下げてもらおう)
何も考えずに落ち着き払った心で自然体でティーカップを口元へ運ぶ
いくぞいくぞなんて覚悟を決めると逆に意識してしまって飲める気がしない
ゴクッ
以外にもおいしかった
「美味しい・・・」
鉄分の風味がすることに変わりはない。しかしながら何故かそれがおいしく感じられる。これが吸血鬼になった影響という奴だろうか。だが今は細かいことは置いておきティーカップに注がれた血を飲み干すことにする
(喉越しが良くて思わずため息を付いてしまいそうな風味、一口飲むたびフワッとした気持ちで幸せな感じがする)
わかりやすく言うのなら良いお酒飲んだみたいな感じだ
意外なおいしさにそれが何で、何から採れたものであることも忘れゴクゴクと気分良く飲み干す。すると当然ティーカップの中身はあっという間に無くなり、私は何とも言えない寂しさに似た残念感を覚えた
もっと飲みたかったな。そんなことを考えていると私は無意識に猫耳メイドの事を見つめていた
私よりも先に自分が見られていることを知った猫耳メイドはただその場で震えて怯えているばかりで逃げる様子も抗う様子も見せなかった
(いやいやいやいや。流石にちょっとアレでしょ。それにほら、今この場で飲み干すよりも、適度に吸って間をおいてまた適度に吸ってを繰り返した方が長期的に見れば得。だから今は落ち着け私)
どうかと思う我慢の仕方ではあるが、今この場を凌げればいいだけなのでそれっぽい事を言って自信を納得させた。それでもちょっとだけ残った名残惜しさはあるが・・・これは少ししたらまたどうしても飲みたくなってしまいそうな気がする
まだわからないことや警戒すべきことが大量にある状況で本能任せに行動するのはまずい
「もう用は無いわ。下がって休んでいなさい」
近くに居るとどうしても意識してしまうのなら遠くやってしまえば良い。普通だがナイスアイディアだ
「・・・へ?」
だが何故か猫耳メイドは意味が分からないとばかりに動かなかった
さっさと化け物から距離を置きたいだろうになぜ早急に去らないのだろうか?
「聞こえなかった?下がりなさい」
「ぁ、はっ。畏まりました。それでは御用がありましたら呼び鈴をお使いください」
再度呼びかけると今度は了承し部屋から退出していった
(・・・呼び鈴ってどこにあるの?)
(あ、てか洋服欲しいんだった。いやその前に部屋の掃除してもらえばよかった。退出してもらったばかりで悪いけどもう一回来てもらって。あ、呼び鈴の場所わからないんだった)
どうやら落ち着いたと思った脳内は未だに軽いパニックに陥っているようで、冷静に効率よく物事を考えるということができないらしい
私は仕方なく部屋の中を散策することにした
今居る窓沿いから部屋の中を壁伝いに左回りで散策していく
そうして最初に辿り着いたのは棺桶だった。普通こういうのってベッドとかじゃないの?と困惑したが吸血鬼ならばむしろ納得の寝具だとスルーした。流石に他人が使っていた寝具をそのまま使うのは気分が悪いので後で呼び鈴が見つかったらこれだけでも変えて貰おう。駄目だったら我慢して使うが
後なんか棺桶の近くにあったサイドテーブルの上に呼び鈴を見つけた
(ひとまず、あの猫耳メイドを呼び戻す手段は発見)
続いて見つかったのは壁一面のクローゼット。一瞬壁の総則かと思う程度にはたかがクローゼットの扉に豪華な装飾が施されている。扉を開けて中をのぞくと、前の化け物の趣味であろうヒラヒラとしたフリルが施された可愛い系のドレスが大量に収納されていた
なんか微妙に私の趣味ではないのでこれも後で持って行ってもらおう。そのせいでしばらく全裸生活とか言われた場合は・・・仕方が無いので何着かだけ残してもらって、新しいのが来るまではそれを着回すとしよう
続いて見つけたのは鏡だけが無いドレッサーだった。正直最初はなんだこれと意味不明だったが引き出しを開けた時に出てきた化粧道具でたぶんそうなのだろうと察した。鏡だけが無い理由は、たぶん鏡に映らない系の吸血鬼だらなのだろう。姿見の癖に姿を映さない鏡などただただ邪魔なだけだ。
あとはなんか人形が並べられた棚があったくらいで特筆してこれというようなものは無かった
今後私が生活することになるであろう部屋のある程度の散策は済んだ。次は・・・私自身についてだろうか?
普通最初にする事な気がするが、そんなものを気にしている時間が無かったのだから仕方ない
鏡が無いのでわからないが見下ろして自身の胴体を見た限りは10~12歳の年頃の子供と同じ身長だと思って良いはずだ。明確に何センチとか計っていないから詳細はわからないが
そしてこうして見下ろしてみてわかったが小さいながらも少しだけ膨らんだ胸や股に何もぶら下がっていないことから人間の少女に該当する肉体造形だと認識すればいいのだろうか
(まあこれは特筆することもなく私だ・・・な・・・・・?あ、れ?)
不意に記憶というべきか感覚というべきかそれに齟齬が発生していることに気が付いた
(私?あれ?なんで?違和感は、ない。記憶が違う?いや合ってる?そもそもわからない?どういうこと?私はそもそも私だった?)
(私は人間だった・・・はず。異世界に転生した・・・はず。新しい肉体を得て・・・ここら辺は何も間違いは無いはずで)
(あれ?なんか・・・記憶に空白がある気がするのに、問題なく記憶を遡れるし、繋げられる)
私は、確かに取り合えず受け入れてから後で考えるかという性格だった。だがそれでも今まで起きた出来事をまあ後でいっかと無視できるほどではなかったはずだが
「まあ・・・無いものは無いんだし。しょうがないか」
(どうしようもないことは諦めて、異世界あるある試せるところから試してこう)
「ステータス・・・ステータスオープン・・・メニュー・・・あ~そう、ない系ね」
「じゃあえっとじゃあ、メッセージ?」
そう言った瞬間音もなく半透明のパネルのような何かが出現した
〈利用者からのアクセス申請を確認。起動します〉
「あ、こっちはあるんだ。普通逆じゃない?」
私がこうして転生した直接の原因と思われる何かからのメッセージがあることを期待して続きが現れることを待つ
〈起動完了。1件のメッセージがある事を通知いたします〉
「・・・どうやって確認すればいいの?」
触ろうとして見るが半透明のパネルモドキに触れる事は出来ず、手が向こう側に通り抜けてしまった
「じゃあ、メッセージを確認?」
〈利用者からのメッセージ確認要請を確認。メッセージを表示します〉
一瞬パネルモドキは消失し、メッセージが表示された
〈吸血鬼のご令嬢へ
やあ、調子はどう?いい感じ?あ、返事はしなくて良いよ。そんな機能実装してないから
まあ色々気になる事はあるだろうけど面倒だから適当に説明するよ。
君は元の世界で生きることに飽きていた。そして私はやることとかあったけど暇だから遊びたかった。その利害が一致した結果が今の君だよ。
その世界にはステータス表示だとかそんな便利なモノは無いけど、君がイメージする通りの道具はその内存在する予定だから安心して良いよ。なんせレベルアップもスキルも存在するからね。あ、モンスター特権で一定のレベルで進化だってできるし、特定条件達成による特殊進化だってあるから死にたくないなら頑張ってね!
追伸
君は吸血鬼の始祖のご令嬢だからちゃんと言葉遣いには気を付けてお嬢様らしくするんだよ♪ちゃんとその世界でも生きやすいようちょっとだけ改造してあげたんだから後は君次第だ!
元の世界に戻る方法とかないし、あったとしても私が片っ端からぶっ潰すから諦めて楽しんでね~バイビ
By、君を転生させたモノより〉
「・・・」
「どうしてだろう。ありがたいはずなのに言葉遣い一つでここまでウザくなるのは」
「確かにコイツの言う通り言葉遣いは大事だね。アハハハ、返信機能実装しとけやクソが。バイビじゃねえよボケ。音符なんざ使うなやカス。キモイんじゃタコ」
===ステータス===
名前:ラヴィナイト・ムーン・ティバール
性別:女性
年齢:1時間48分
種族:上位吸血鬼
職業:原初の吸血鬼の娘
Lv1
HP:10,000/10,000
MP:10,000/10,000
ATK:10,000
DEF:10,000
INT:10,000
DEX:10,000
AGI:10,000
―――スキル―――
アクティブスキル
吸血Lv1、飛行Lv1、吸血鬼の翼Lv1、血のご令嬢Lv1、魔の魔眼LvEX、力の魔眼LvEX
パッシブスキル
成長補正Lv1、再生Lv1、陽の下を歩む者LvEX、記憶補正LvEX、全魔法適正LvEX、異形の精神LvEX、精神変容LvEX、とある存在からの加護Lv■■■
==========
HP:あとどれくらいで死ぬかが記載されている。0になった瞬間即死し専用のスキルでもない限りは死を遠ざける事は出来ない。逆に言えばHPが0にさえならなければ首を切断されようが心臓を握りつぶされようが死なない
MP:あとどれくらい魔法またはスキルを使用できるか記載されている。0になると酷い倦怠感と頭痛に襲われる。ただしこちらは0になってもHPを代替え消費することにより魔法やスキルを発動することができる
ATK:筋力も含めた攻撃力が記載されている。物理魔法問わずこの数値を参照してダメージが計算される。参考までに主人公の数値は細心の注意を払うことを忘れて前世の感覚でメイド達に触れようものなら腕の1、2本は簡単に捥ぎ取ってしまうほど
DEF:物理魔法問わず防御力が記載されている。受けたダメージをどれだけ軽減するかこの数値を参照して計算される。ただし生物として弱点部位に該当される部分を攻撃されるとダメージがあまり軽減されない
INT:思考速度や記憶力に魔法攻撃力や精神攻撃耐性がこの数値を参照して上がる。参考までに主人公の数値なら、50年前に見た映画の大して興味も無いワンシーンであっても思い出そうと思えば楽に思い出せる程度
DEX:器用さがこの数値を参照して上がる。スキルの会得難易度や成長度も上がる。参考までに主人公の数値なら、何かをしながらでも10段以上のトランプタワーを1分以内に立てられる
AGI:どれだけ素早く動けるかがこの数値を参照して上がる。参考までに主人公の数値なら、某風の狼王と駆けっこができる。
吸血:文字通り血を吸う行為全般に対する補正がされる。レベルが上がると10Lのタンクに満タンまで入った血液を1秒で飲み干せたりする。今の主人公では当然無理
飛行:己の肉体を使って飛行するという行為全般に対する補正がされる。レベルが上がれば平衡感覚を0,1秒枚にランダムで出鱈目にされても真っ直ぐ飛ぶことができる。今の主人公では片翼を捥がれた飛行機のように奇怪な動きをして墜落する
吸血鬼の翼:背中から吸血鬼の羽を展開するスキル。レベルが上がれば翼以外の形に変形させて展開することもできる。今の主人公では無理
血のご令嬢:血液を操ることに関係したスキル。ファイアーボールとかアイシクルランスとかそこら辺の血液版のようなイメージ。別に攻撃以外にも転用できる
魔の魔眼:発動すると魔法関係に補正がかかる。相手に直接何か作用するということは無く発動すると右目に魔法陣が浮かび光るだけのもの。発動条件は魔眼保有者の本人のやる気次第
力の魔眼:発動すると物理関係に補正がかかる。相手に直接何か作用するということは無く発動すると左目に魔法陣が浮かび光るだけのもの。発動条件は魔眼保有者の本人のやる気次第
成長補正:ある程度楽に成長できた方が当人も見てる側も楽しいでしょと言うことでとある存在与えた。このスキルが無いよりは楽に成長することができるようになる
再生:受けたダメージが道具や魔法を使わなくても自然に回復するようになる。レベルが上がるとより早く回復するようになる。首を飛ばされた場合は首から胴体が生えるので安心しよう
陽の下を歩む者:文字通り吸血鬼の癖に太陽の下を歩くことができるようになるスキル。これで人間の振りができるよやったねととある存在は笑顔で語った
記憶補正:永劫を生きるには記憶容量が足りない。そこで覚えたいことは際限無しに覚えられるようにとある存在が付与した。健忘症対策はバッチリだとのこと
全魔法適正:全ての魔法に対する適正を付与するスキル。本当に何でも使えるので吸血鬼なのに吸血鬼特攻の魔法だって使用できる。Gが自分で自分にゴ〇ジェットを噴射するようなものだねと笑っていた
異形の精神:人間と同じ精神構造でありながら悠久の時を生きてなお壊れずに正気で居られるようにととある存在が付与したスキル。何前年生きてもあっという間に時が過ぎるなんて事態にならない。逆に言えば忘却できないってことだけどねえ怖いねえと他人事だった
精神変容:ちょっと変わり者なだけの平和な現代日本に生きていた人間が、ヒャッハーなだけなら善人に分類される世界に飛ばされても正気で居られるようにとある存在が付与したスキル。ついでに都合の悪い記憶とかそこら辺を切り捨てる
とある存在からの加護:とある存在が主人公に与えた加護。色々ととある存在が助けてくれる・・・かもしれない。加護と名が付いているがどう考えても呪災の方が相応しいものだ。因みに神に分類される存在は他にしっかりと存在し、とある存在は神ではない。だがもしも神に分類するのであれば邪心の類であることは異論を挟む余地すらないであろう




