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13話:

人に見られていると意識すると途端に書きたくなくなる現象

無事に保護してもらえることが確約されて私は初めて冒険者ギルド内を見回した


今までそうしなかったのは、変な事をすれば保護は無かったことにすると言われていた。何処からが変な事になるのかわからなかったので聞かれたことや許可されたこと以外は何もしなかったという訳だ


古そうな見た目の木材で作られた建物


受付は全部で5つあり、それぞれの場所には絵と変なのが書かれた看板がかけられている


1つは剣が一本だけ描かれており、その横に何か変なのが書いてある


他の4つには3本の剣が交差した絵が描かれており、同じく絵の横には変なのが書かれている


1つだけ絵が違うが他と何が違うのだろうか


それと憶測でしかないが絵の横の変なのはこの世界の文字だと思う


異世界モノの定番らしく自動で文字が読めたりということは無さそうで、この先新しい言語を学習する必要があると思うと気分が下がる


それでも覚えなければどんな不利益が襲い掛かって来るかわからないので頑張るしかないだろう


文字っぽいのはもういいとばかりに他へ視線を移す


その先にはこれまた古めかしい見た目の木製のテーブルと同じく背もたれの無い椅子


身長がでかい人や体格が良い人を見ると椅子が壊れるのではと気になるが、壊れないところを見るに思っているよりも頑丈なのかもしれない


そしてそこに座るなんか全体的に小汚いおっさん達


女の人も混じったりしているがおっさん達と同じように小汚い


どうやらこの世界の冒険者は汚いキツイ危険の3Kタイプのようだ


稀に鎧を着ていない他と比べて綺麗な格好をしている人間もいるが、総じて杖や弓を近くに置いている


後衛職は前衛職に比べて地面を転がりまわることが少ないのかもしれない


あくまでも前衛職に比べればだが


またどのテーブルを見ても飲み物や食べ物は置かれていないので酒場と兼業しているタイプではないのだろうと予測する


そして人間の気配の位置的に冒険者ギルドは2階建ての建物だと思っていたが、上を見ればやはり2階があった


ただし吹き抜けのような形になっており、2階からは1階の様子を良く観測できそうだ。あとなんか無精髭の生えたおっさんがこっちを見てる


そして色々な所にいる冒険者達は総じてこちらを、厳密に言うなら私を見ていた


何故目の前の二人と私がパーティを組むのか、私の実力はどれほどか、などなど値踏みをするような視線ばかりなので、万が一にもバレないようフードの端を掴んで深く被る


次に視線を移した先にあったのは、まばらに紙が貼り付けられた大きい木の板だった


相変わらず文字っぽいのは読めないが狼とか鳥とかの生き物らしき絵が描かれている


たぶん依頼掲示板とかそんな感じのアレだ


もっとここを利用するようになれば他にも気になるところができるかもしれないが、現状で見える範囲ではこのくらいだった


「それで、ヨーナシちゃんは何したいのお?」


私が冒険者ギルド内を見回すの終わるタイミングを計ったかのようにエラから話しかけられたので改めて二人に向き直る


「何したいって、どういう意味かしら?」


「いやあ、パーティ組むなら役割は大事ってはわかるよねえ?だからヨーナシちゃんは何をしたいのかなあってえ」


「因みに現状のウチは、アタシが後衛火力担当兼魔物が接近した際に一時的に受け持ってえ。シェードが後衛火力担当兼魔物が近寄れないように牽制する役割でやってるかなあ」


シェードは杖1本しか武器らしきものを持っていないし、エラは杖らしきものは見当たらないが剣を持っているので大体予想がついていた


しかしながらパーティバランスがあまりにも悪すぎるように感じる


「私は冒険者に詳しい訳じゃないのだけれど、流石に後衛二人バランスが悪いと思うわよ?」


そんなパーティでどうやってA級とやらまで上がったのだろうか


「心配する必要なんて無いわ、全部凍らせるか全部焼き殺すもの」


シェードが今までの戦い方を簡単に教えてくれたが、本当に魔法職?なのかと疑いたくなるほどに火力で全部ぶち殺すぜスタイルに困惑する


だがA級とやらに上がれるくらいにはそれで全部何とか出来るのだろう


ちょっと意味わからないけど


「そう・・・一応私も遠距離攻撃は可能だけれど、この身体の頑丈さを利用して近接でもやろうかしら」


流石にこの後衛脳筋パーティにもう一人後衛脳筋はバランスが悪すぎると思い前衛職を買って出ようとする。しかし


「好きにすれば」


「アタシの魔法は熱いから避けたと思っても余波でダメージ受けるよお」


エラの様子的にたぶん冗談ではない。そしてシェードは私が射線上に居ようといなかろうと魔法を撃ちそうだ


この二人との連携の取り方を学んでからでないと凍死か焼死するかもしれない


「それなら私も後衛・・・ね・・・・・」


言っている途中で謎の使命感めいた助言のようなものが頭の中を過った


(ん?は?なんで?・・・え、あ、そっか)


死霊魔法の方は良いが、血液を扱う方を見せると吸血鬼として殺されるらしい


血を限定的に扱う魔法自体はあるが、血液を対外で自在と言えるレベルで扱えるのは吸血鬼だけで少しでも違和感を持たれる可能性は排除した方が良いとのことだ


吸血鬼を目指して作られた実験体という設定を使えば誤魔化せそうな気もするが・・・


まあ、言われてみれば無駄にリスクを冒す必要も無さそうだし言うことを聞いても損はないだろう


だがそうなるとかなり不味い


新しく遠距離攻撃手段を身につけなければ凍死か焼死の危険の中で近接戦闘をすることになる


狼相手には余裕を持って圧勝できたが他もそうとは限らない


「ヨーナシちゃんには何兼業させよっかあ」


「肉壁で良いと思うわよ」


「いやあ、アタシが前線張った方が長持ちするしいらないかなあ」


「なら鉄砲玉ね」


「同じくアタシが初手で魔法撃った方が蹴散らせそうだしいらないかなあ」


私のことを何だと思っているのかと問いたくなるようなことを相談している二人に、このままでは本当に不味い事になると危機感を覚えた私は意を決して手を上げた


控えめにだけど


「ねえ・・・この街って、図書館とか無いのかしら?」


私の取った手段はシンプルで魔法の参考書的なのを読み新しく覚えるというもの。この規模の街だし小規模な図書館くらいあって欲しい


文字は読めないがそこは気合で何とかする。流石の私も死ぬか文字の学習かだったら頑張って文字を勉強するだろう


まだこの世界で死にたくない


もしもなかった場合は・・・うん、気合で近接戦闘することになるだろう


とある存在に教えて貰おうと期待はしない方が良いと思う、もしも教える気が合ったなら既に教えて来てる


「無いわよ」


「残念ながらねえ」


どうやら当たれば大怪我では済まないであろう魔法が飛び交う戦場のど真ん中で近接戦闘が確定してしまったようだ


「・・・そう、やっぱり私は前衛を努めることにするわ」


マジでどうしよう


「そっかあ」


そんな穴が開いた泥船に乗ったかのような不安の中で、意外な相手から一つの助け舟が出された


「いえ、そう言えばウチにはヒーラーがいなかったわよね」


「ああ~、まあ回復が必要な相手って早々いないからねえ」


「ならコレに覚えさせましょうよ。無事に覚えればもっと効率的に吸血鬼を殺せるわ」


「なるほど・・・良いわねそれえ!」


まるで自分たち自身ですら吸血鬼を殺せるならば鉄砲玉のように突貫しても構わないと言わんばかりの物言いだが、私にとっては渡りに船の話だ。このまま魔法と化け物入り乱れる戦場で戦うくらいなら回復魔法だって頑張って憶える


「それに話を正誤確かめる必要もなくなるし、一石二鳥よ」


(ん?え、なんだって?あ、ちょっと)


最後の言葉の意味はよくわからなかった



◆◆◆◆◆



そんなこんなで冒険者ギルドを出た私は二人に挟まれるようにして道を歩いているが、相変わらず許可なく喋る離れる顔を上げるの三つは駄目らしい


ちょっとでもそんな素振りを見せると左肩が物理的に冷たくなる


早く顔くらいは上げさせてもらえるようになりたいと思いながら街中の道を曲がって進んで曲がって進んでを何回か繰り返した頃二人の足が止まる。私もそれに倣い一歩遅れて足を止めた


そう言えば図書館は無いらしいが何処で回復魔法を覚えさせるのだろうか?異世界モノなら協会がよくあるのだが


「着いたわ、ここにしばらく通って貴女には回復魔法を覚えてもうつもりよ」


「まあ敬虔な信徒として働けば半年くらいで基礎的な事を教えて貰えるんじゃないかなあ」


どうやら回復魔法を教えて貰うにしても相手の機嫌を最低でも半年くらいは真面目に働いてご機嫌伺をして教えて貰う必要があるらしい。なんとも面倒臭い話だが、半年という時間を支払うだけで死ぬ危険がある最前線から身を引けるなら頑張って働くとしよう


(それにしても信徒か・・・ということはやっぱり回復魔法は宗教関係の専売特許ってことか。吸血鬼のシスター・・・案外悪くないかもしれない)


内なる中二病的な心が今から私がなる職業に対して少なくないワクワクを沸き上がらせている


スタスタと歩く二人に続く私の足取りはこの世界に来て初めて軽かった


「ああ、そうそう言い忘れていたわね。協会は神の加護と言う名のただ対モンスター用結界が張ってあるわ。歴史書にある通りならその結界に触れたモンスターは皆絶大なダメージを例え吸血鬼であったとしてもかなり上位の奴らじゃない限り動けなる位の激痛を与えるらしいから頑張ってちょうだい」


もう言われて止まっても遅い、そんなタイミングでシェードがとんでもないことを言い放つ


まるでシャボン玉に触れたかのような感触を与えてくる見えない膜に既に触れていた私は思わずシェードを見上げたのだった


「・・・へ?」


シェードの顔は私がどうなろうと興味無さげだ、つまり本当は吸血鬼でこの結界によって動けなくなろうとどうでも良いということだろう。なんせ彼女達からすればもしも吸血鬼だったならこの場で殺せば良いだけの話なのだから


(不味ったか、殺して逃げるか?逃げられるのか?今すぐ身を引けば結界から攻撃は最小限に抑えられるか?ならば身を、いやけど折角街に入ったのになあ)


この間僅か0.1秒


もはや脳内で音声化できない程の速度でその結論に至った私はこの場で殺すことに思考をシフトチェンジしようとして


(は?大丈夫?なんで?・・・あ、そう。もっと早く教えてよ)


寸でのところで例の奴に止められた


どうやらちょっと世界のあれこれに干渉して平気にしてきたらしい


だがこの結界以外は普通に作用するから気を付けろとも言われた。干渉する力があるなら全て何とかしてくれても良いと思うだが、何でももう少し踊ってくれないとつまらないから今回だけの救済処置らしい。やっぱりこいつ邪神とかだろ


まあ大丈夫なら大丈夫で良い


「・・・大丈夫そうね。良かったじゃない」


「人造兵器を弾かないだなんてこの結界不良品じゃないかしら?」


「ちょっとお、協会の目の前そういう話はやめてえ?ほらあそこの信者さんとかめっちゃ睨んで来てるじゃん」


そういうエラの視線の先には、まるで神敵でも見るかのような凄い視線で睨んでくる一般通過男性が居た。この街に入って初めての一般人だ。なんか剣持ってるけど


相手からの印象はさぞ最悪な事だろうが、何もしてこないし言ってこないなら無視だ。ああいう睨んでくるだけの奴は一々相手しても面倒臭い


「フッ、知らないわよ。肝心な時に役に立たない神なんて湿ったマッチ以下よ」


「もお~・・・湿ったマッチは頑張れば使えるんだから、言うなら殺したら灰になるだけの吸血鬼以下でしょお」


「それもそうね」


神に対する不敬を注意すると思ったらまさかの助長をしてきた、しかもかなり酷い。この二人は一体神を何だと思っているのか


そして先程からこちらを睨んでいる一般通過男性の視線が更に鋭くなる。これ以上余計な事を言ったら神敵滅殺とか叫びながら切りかかって来るのではないだろうかと言うほどだ。まあ切りかかってきたら普通に避けるが


「おい、クソ女ども、協会の前で随分な口上垂れんじゃねえか。ぶっ殺すぞ」


すると随分と物騒な事を言いながら協会の扉を開けて筋骨隆々の50代半ばくらいのおっさんが出てくる。


獣の牙をも通さなそうなほど分厚い灰色ロングコートを羽織り、腰元の紐で結んで絞めている。手には革のグローブを嵌めており、足元を攻撃されることを警戒してかブーツを履いている。そして胸元には、何かの形を模したであろうタリスマンを提げている


だがそれよりも何よりも目立つのは右目の部分にできた顔の横から鼻の真ん中を過ぎたところまで幅がある切り傷の跡だ。ちょっと怖い


パッと見は攻撃を受けながらカウンターを仕掛ける戦闘スタイルに見えるが、それならば金属鎧でも着込んだ方が受けやすいはずだ。それなのにただのコートと革のグローブとブーツということはある程度のダメージは受けられる防御力を得ながら、大体の攻撃を避けて返すタイプなのだろう


吸血鬼や森の化け物相手に馬鹿正直に戦っていたら人間が勝てる気がしないのでたぶんこのおっさんは結構戦いなれていると思う


だが取り敢えず言いたい、誰だこのおっさん


「やってみなさいよひよっこクソガキ神父」


売り言葉に買い言葉。シェードがおっさんに向かってクソガキと言い放ち煽る。あのおっさんどこからどう見ても50代なのだがアレをクソガキ扱いとかシェードは一体何歳なのだろうか


そしてどう見てもヤクザと言われた方が納得できる見た目だ。絶対神父じゃない


「まあまあ坊ちゃん、アタシらが神共に対して不敬なのは何時ものことでしょお」


「チッ・・・んで? 神様嫌いのてめえらが何しに来た。喧嘩しに来たってんなら俺が殺すぞ」


口が悪い上に二言目には殺すときた。やっぱ絶対神父じゃなくてヤバい人間だ


「いや~この子さ、シェードが森で拾ったんだけどねえ。使えるようにしたいから神の奇跡とやらでも仕込んでもらおうかなあってえ」


そう言ってエラが私の背中を押して一歩前に出させる。まだ距離があるとはいえあの神父モドキヤクザには近寄りたくないのだが


しかしあまり近寄りたくないとばかりに足に軽く力を込めて踏ん張っても黙って進めとばかりにより強く背中を押されてしまったので諦める。耐えようと思えば余裕で耐えられると思うが意味が無い


「あ?その恰好・・・おい厄ネタは勘弁しろ」


「違うわよ。ただ死体から剥いだだけの子よ」


「どっちにしろじゃねえか」


「だから正義を名乗らせるために力が要るのよ」


「・・・チッ、あ~、どうした?このクソ女どもに騙されてるのかな?もしそうだったらおじさんに言うんだぞ?話をつけてやるからな」


先程までの、出会ったら取り敢えず話すよりもぶん殴る方が先の相手と街中で出会ったかのような表情から一転。ヤクザみたいな顔で微笑んで語り掛けてくるが言葉の節々は相変わらず物騒過ぎる


「さっさと黙って神の奇跡仕込みなさいよクソガキ。あんたの仕事でしょ?」


「黙れクソ。いい加減協会の方で指名手配すんぞ」


「やってみなさい。吸血鬼さえ殺せれば正義のこの街でわたし以上の正義が名乗れるならね」


「・・・860だったか?」


「残念、つい最近900匹目を殺したばかりよ」


「チッ」


物騒な物言いではあるものの、話している内容から所々この街に着いて世界について少しずつわかってくる。随分と吸血鬼は恨みを買ったものだ。そしてその割には随分とこの街にいる人々は明るく過ごしている


「それじゃ、さっさとコレを使えるようにしてちょうだいね」


「まあ良い。受けてやる」


「ああそうそう。ついうっかりでも殺さないでちょうだい?わたし達が使うんだから」


「誰が殺すか!てめえらと一緒にすんな!!!」


「そう」


「じゃあねえ神のわんわんおー、アタシらはちょっとギルマスに用があるから」


絶対仲が悪いのに普通に話していたが、とうとう別れるらしいそして私はこのヤクザ系神父の下で置いていかれてしまった


「おう・・・・・て、住み込みで置けってか!?」


おっさんは最後に大声で叫ぶが、あの二人は一切振り返る事すらなく、精々エラだけが手を上げてヒラヒラと手を振って答えた程度であった


「チッ・・・クソ共が、何時かぜってえ磔にしてやる」


「ねえ」


「・・・はぁ、仕方ねえ。どうせ行く当てがねえんだろお嬢ちゃん、多少働いては貰うがしばらく休む屋根にしてきゃ良い」


私が何か言うよりも早くおっさんは振り向いて協会の中へと戻って行ってしまった。色々と大丈夫なのだろうか


投稿予定:気分次第

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