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11話:人間の街へ侵入成功

「それで、街はどちらに?」


「そのまま真っ直ぐ、余計なことは気にせずさっさと歩きなさい」


現在私は霜の女王(フロストクイーン)ことシェードに杖の先を突き付けられた状態で森の中を進んでいた。保護するとは言ったが信用するとは言っていなかったので何もおかしくないのだが、こうもわかりやすく変な気を一瞬でも起こせば即殺すという雰囲気を出されると気まずい。私の理想ではもう少しワイワイしながら人間の街まで案内して欲しかったのに


「ウッ・・・!」


右肩の大部分が炭化していた炭化系女子が呻き声を漏らした


「おい、大丈夫か?」


「っ」


新人系男子が心配そうに声をかけるが炭化系女子はほんのわずかに首を動かして頷くのが限界らしい。このままだとそう遠くない内に死ぬのではと思わせる


「安物のポーションじゃ流石にキツイか」


「なあに、あとほんの少し歩けば街が見えてくる。それまでの僅かな辛抱だ」


「・・・な、なあシェードさん」


新人系男子が意を決したようにシェードに話しかける


「なにかしら?」


「ポーションを、持っていないか?」


「おいやめろ!」


「頼む!」


後ろで行われていることが気になって少し振り返ろうとしたが背中に先端の尖った冷たい穂先を押し付けられ速く歩けと急かされる。どうやら私には本当に何もさせたくないらしい


(ポーションか。確かおっさん達の話が本当ならシェードさんはA級冒険者?だっけ、それなら初心者では手が届かないような高額高性能のポーションを持っていてもおかしくない)


「いくら?」


「え?」


「いくら払えるのか。と聞いているのよ」


「今この場で、いくら払えるのかさっさと答えて貰えるかしら?」


だがシェードの返答ははいでもいいえでもなくいくら払えるのかという問いかけだった


「ピンチを助けて貰ったからってわたしが進んで人助けをするような冒険者だって勘違いしているのかしら?」


「だったらそれは大間違いよ。今回はたまたまわたし個人宛の依頼があってそれが終わった帰りに偶然通りかかったときに()()()を見かけたから介入したのよ」


「本来なら冒険者は何をするにも自己責任、自身の命も味方の命も、失ったのだというのならそれらは全て自身の力量を履き違えたあなた自身の責任に他ならないの」


「けど・・・」


「けどなに?習わなかったのかしら、冒険者は普通の住民に比べて破格の自由が約束されている代わりに全ての行いは自己責任。それは同じ冒険者間であったも同じこと、それを曲げてわたしに助けを乞うのだから最低限対価を払ってちょうだい」


「・・・」


「吸血鬼討伐戦線の最前線であるこの街で冒険者になるというのなら戦力の増強に繋がるもの大歓迎だわ。けど自己責任すら果たせないならむしろ邪魔、冒険者を夢見るのは結構だけれど、冒険者に夢は見ないで」


「あ、あのシェードさん、今回はそのくらいで・・・」


「そのくらい?あなたが言うの?本来なら指導役を買って出たあなたがこの新人に教えなければならない現実を教えなかったあなたたちの怠慢の代わりを先輩冒険者として買って出てあげてるのよ?ふざけないで」


言い方自体は厳しいがおっさん達が反論しないあたり言っていること自体は正しいのだろう。思ったよりも厳しい世界のようだ


「ところで先程のお話通りなら、嫌われ役を買って出たのはシェードさんの自己責任だと思うわよ?」


「そうね。でもあなたは黙ってなさい」


「あら怖い」


「そ、その・・・いつか・・・かならず」


「いつかって・・・いつ?」


「そ、れは・・・」


苦し紛れに出た新人系男子の言葉すらも一刀両断するシェード後ろを振り向こうとすると氷の槍で突かれるせいで見られないのが本当に残念で仕方がない


「わかったらさっさと歩くわよ。その子を助けたいなら速く歩く以外に方法なんて無いと理解しなさい」


「っ・・・ああ」


新人系男子が完全に意気消沈してしまった。たぶん今頃はシェードのことを冷酷非道な女だとでも睨んでいるのではないだろうか?霜の女王(フロストクイーン)だけに


「新人、悪いがこればっかりはシェードさんが正しい。少しで可能性を上げるために急ぐぞ」


「・・・はい」


「疲れたろう?俺が街まで背負うか?」


「いえ、オレが背負います。オレの・・・責任ですんで」


「そうか」


「もっと速く移動すれば良いのかしら?」


「ええ、わかったらさっさと黙って歩きなさい」


「わかったわよ」


その後足を早めて森の中を歩いた。私は勿論シェードも余裕そうだったが、おっさん達と炭化系女子を背負っている新人系男子はかなり辛そうだった。人間一人程度片手で運べるので変わっても良かったのだが、そんなことを申し出ればまた余計な事はするなと背中を突かれるので黙って歩いた


30分ほどだろうか?早歩きをしたおかげで化け物どもの進行を防ぎ人間の街に平穏をもたらす巨大な防壁が見えてきた


「立派な防壁が見えたわよ?」


高さはたぶん15m横幅はここからでは端も見えないほど先の先まで続いている。というか吸血鬼討伐戦線の最前線とか言っていたし、たぶん化け物を一切通さないために万里の長城のように端から端まで続いていることだろう。回り込まれて後ろの街が攻撃されましたとか笑えないし


「それじゃああなたはその服についているフードを被っていなさい」


「?・・・ああ、ええ良いわよ。私も街に入りたいもの」


「それと黙って俯いていないさい」


「ええ」


森から街の門までの僅かな距離を相変わらず終わっている空気感で歩く。だが、街に入るのに私に魔法の矛先を向けている訳にもいかないと判断したのか背中に突き付けられていた感触は無くなった


背中の冷たい感触が無くなっただけでかなり楽だった。この終わっている空気感も、どうせ異世界よろしく新人の生存率なんて1月後も生きている顔を見られたら幸運くらいのものだろう、勝手にいなくなるだろうし生き残ったとしてもその頃には納得できているだろうし私が気にする必要はない


街に入るための審査をしている列に私達も並ぶ


「ん?おお!あんたは、あの霜の女王(フロストクイーン)シェードじゃねえか!」


すると前に並んでいた大剣を背負った大柄なハゲがシェードに話しかけた


「え?シェード!?ちょ、マジかよリーダー!」


「俺!俺にも見してくれ!」


大剣ハゲの言葉に釣られてパーティメンバーらしきハゲたちもシェードの方へ視線を向けた


「マジじゃねえか!俺こんな近くで見たの初めてだ!」


「やべーオレ今シェードさんの間近の空気吸ってる!ああやべえ良い匂い過ぎてやべえ!!!!!」


「あ、ああ、あの、あのシェードさんっすよね!?」


「・・・ええ」


「あ、あ、あ、あ、あ、あ、あ、あ、あ、あ、ありがとうございます!!!!やべシェードさんに返事してもらっちまったよ!おれぁもう体に爆弾巻き付けてクソ吸血鬼に特攻したって悔いはねえ」


「落ち着けバカども。すまん、ウチのハゲどもが迷惑を」


「気にしてないわ」


「そうか?てか、あんたがパーティ外のヒトを連れてるなんて意外だな」


「クエストの帰りに拾ったのよ」


「なるほどな。お前ら幸運だったな!C級の癖に新人育成なんて意気込むからだぞw」


「うっせえぞスキンヘッド、ちとしくっただけだ」


「その結果が重症の新人たあ随分腕が落ちたじゃねえか」


「ふざけんな腕は落ちてねえ。誰かがライトニングウルフの群れに喧嘩売ったくせに途中で逃がしやがったせいだ!」


「おいおい・・・・その群れはどうした?」


どうやらあの帯電する狼達は一度戦闘が始まったら逃がしてはいけないタイプの奴らしい。今まで馬鹿みたいに笑いながら話していた大剣ハゲが真面目な声になった


「シェードさんが全部やってくれたよ」


「そうか、なら一安心か、たくっどこのバカ野郎だくそったれ」


どうにも身に覚えがあった私はシェードからの命令とは別に絶対に頭を上げないようにしようと決めたのだった


(いやそんなこと知らなかったし、あの時は狼相手に無双できる力が私にあるなんて知らなかったし・・・)


「お、そういやシェード、そのフード被ってるのはどうしたんだ?見たところ同業者にも見えねえが」


「この子?」


シェードが私の頭に手を置いた。今までの態度からは予想できないくらい優しい置き方だった


「森の中で保護した一般人よ。大方、生贄を求められた集落が差し出した子でしょうけど」


「そうなのか?」


こちらに来るとは思っておらず何て言おうか迷っていると少しだけ頭が冷たくなってきた。どうやら私の頭に手を置いたのは余計な事を言わないようにするためだったようだ


「」コクコク


「そうか。知らねえと思うがこの人はこの街で上位の冒険者だ、幸運だったな」


「」コク


変な事を言って氷漬けにされても困るので黙って頷くだけにする。すると頭にあった冷たい感触が段々無くなっていったのでどうやら正解だったようだ


「・・・やっぱ早いとこ吸血鬼共は皆殺しにすべきだな」


「リーダーいつまでもシェードさんと話してると殺しますぞ」


「オレたちの番だぞ速く来い殺すぞ」


「おれぁ今日初めて心の底から人をやっても良いかなって思ってる」


「へいへい、たく物騒なんだよハゲどもが。拾った命大事にすんだぞ」


そう言って大剣ハゲは別れ物騒オタクハゲたちに合流した


「入る前に再度、確認しておくわ」


シェードが腰を軽く曲げ私の耳元で囁いてきた


「?」


「わたしの許可なく喋らない離れない顔を上げない、最低限これらを守れなかった場合あなたの保護は無かったことにするから、わかったかしら?」


「・・・」コク


声を出して良いのか出してはいけないのか非常に迷ったがどちらの意味でもセーフなように黙って頷く


「よし」


私がしっかりと理解している判断したのかシェードの顔が離れていく


私はひっそりと自動車学校の筆記試験のことを思い出していた


「次」


「行くわよ」


「」コク


門兵の前まで行き入国検査的なのを受けるのだが、頭を下げていてあまり見えないが視界に端でシェードもおっさん達も新人系男子も何やらカードのような物を門兵に見せていた


(私は持ってないけど、どうする気なんだろう?)


「確認しました。それとシェード様そちらの「ねえ」


門兵の言葉をシェードが遮りながら何やら手を繋いでいる


「ここ最近は森から出てくるモンスターの数も少ないし平和な日々が続くわよね。こんな日にはちょっとだけ退屈になるとは思わないかしら」


「・・・」チラッ


「ふわぁ~、確かにそうですね。ただでさえ暖かくなってきた最近、こうも平和だと少々眠気が襲ってきます」


「そう、ならこの後からはしっかり気を引き締めなさい」


「はっ、ありがとうございます。それからシェード様もお気をつけて」


「わかっているわ」


なんかよくわからない茶番が繰り広げられたかと思うと門兵から質問も顔さえ確認されず楽々通ることができてしまった。しっかりと見ていないので確証はないが、間違いなく賄賂だろう


(私の価値観が違うだけ、この世界ではこれが普通、私の価値観が違うだけ)


私の価値観が前世の価値観を基に形成されているから今の行為を腐っているように思えるだけ、この世界ではごく普通のありふれた出来事なのだと納得しようとしていると、私と同じように違和感を覚えて者が居るようだった


「なあ、今の良いのか?」


「・・・なにが、かしら」


「いやだって検閲なのに素通りできて・・・しかもさっきのわイッ!?」


新人系男子が決定的な言葉を発そうとした瞬間まるで蛇に睨まれた蛙の如く固まり口をつぐんでしまった。私からでは見えないがよほど怖い顔でシェードに睨まれたのだろう


「そんなことよりも、あなたには大切なことがあるんじゃないかしら」


「あ、そうだ!リアを医者に見せかねえと!」


「それなら冒険者ギルドだ。冒険者は町医者にかかるよりも冒険者ギルドで治療を受けた方が安く済む」


「あ、ああ!」


「てことで悪いねシェードさん、俺達は先に行く」


「嫌われ役を買って出てくれたこと感謝する」


別れの挨拶もそこそこにシェードと私を残して全員が冒険者ギルドとやらへ向かって走り去ってしまった。正直この人と二人きりにされたくない


「それじゃあ行くわよ、指示するからわたしの前を歩きなさい」


「」コク


指示された通りに歩き始める。いったい何時になったら私一人で自由行動ができるようになるのだろうか


投稿予定:気分次第

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