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9話:

サクッサクッサクッサクッサクッサクッサクッサクッ


あれから歩き始めて3日、明らかに天然の物ではない人工物らしき物が落ちていたことから人類の生存権に入ったと判断し念のために普通に歩いて移動している。正直もう少し近いと思っていたのに未だに森の中なのでもう少し走って移動しても良かったかなんて軽く後悔している


ならば今からでも走れば良いのではとなるかもしれないが、何かしらの技術を収めた知的生命体による創作物をたまに見かけることがあるので万が一だ


因みにお腹は特に空いていない。少し喉が渇いたかもしれない程度だ


体の一部を吹き飛ばして殺したとはいえ流石に9匹分も飲めば長持ちするらしい。それでも3日で少し喉が渇いてきているので、もしも次があった時は背骨とかをへし折って行動不能にしつつ出欠を最低限にし、贅沢を言うなら群れ事殲滅したい。すべての群れで20匹以上いるのかは知らないがそれだけ飲めれば人間の街に到着してからも餌の補給先を吟味するまでの時間は稼げるだろう


(あ~あ~・・・これでな~、あいつらの血が美味しかったらな~・・・)


(まあ臭みがあるだけで不味い訳ではないのから良いけど)


ガサガサッ


「おっと、噂をすれば影が差すってやつ・・・ですわね!」


(気抜いてるときに咄嗟にお嬢様口調辛い)


腰を落として重心を下げていつでも無力化できるように構える


これで2度目の殺戮になるが緊張はしていなかった。何かしら戦闘技術を学んだことのない私でもゲームや漫画で見たいような動きを再現できる身体能力にいざという時は本気で腕を振るえば相手の臓物を容易く撒き散らすことができる肉体だという事実に、私は早くも命を奪うことに対して何も思わなくさせていた


別に前世では無意味に虫を磨り潰したりとか、屠殺場で働いていて殺すことが普通の生活をしていた訳でもない。何の意味も無く殺すとか良くないよねって思うような普通の人間だ


にもかかわらずこうして残虐な殺し方をしようと死体から血を啜ろうと何も思わないのはきっと、今からやろうとしていることが食事の一環としか思っていないからだろう


皿出された食材を見ても食べても、その生き物を殺したなんて思いは沸いてこない。これで前世でベジタリアンとかだったなら罪悪感を覚えたのかもしれないが私はそうではない。ちょっとご飯が飛んで跳ねて飛び掛かってくるだけ普通の食事だ。ご飯を食べるだけで緊張する奴などいるだろうか


(背骨、内臓は吐血するか?いや、最低限は仕方ないか)


ガサッガサッガサガサッ


(それにしても来るのが遅い。警戒している?襲い掛かってくるような生き物じゃなかった?それとも別の何・・・っ!違う!)


バサッ


背後の茂みから何かが飛び出す音が聞こえた。その瞬間には既に体を回し始めており、少しタイミングが合っていなかったが後ろから飛び掛かる生き物目掛けて踵蹴りが命中する。咄嗟に放った蹴りによりその生き物は私の視界から消え少し離れた木の幹に叩きつけられる


《Gyaun!》


姿勢を戻しながら木に蹴り飛ばした生き物を見る。そこでようやく今回襲い掛かって来た生き物の正体がはっきりした


(赤い。口から火の粉が舞ってる?森の中だというのになんて不可思議な狼だ)


口元から微かに火の粉を漏れ出させている赤い毛色の狼。大きさは帯電していた奴同じでライオンくらい。首付近に当たった時の感触からして殺せない程固いという感じはしなかった。それに帯電していた奴よりは遅い


《Grururururu》


木に叩きつけられた狼は身を起こすと怒りに満ちた低い声で唸りながらこちらを睨んでいる。口元から漏れ出る火の粉も量が増していた


(咄嗟だからって手加減しすぎた・・・)


一撃で行動不能にしてしまいたかったのに。咄嗟の判断があまり上手くいかなかったことに微かに悔しい想いをする


しかしながら一撃で殺さなかったおかげで、私をその程度だと判断した狼達の群れがゾロゾロと姿を現しだす


(1、2、3、4・・・何匹?20?以上?以下?まあどっちでも良いけど10以上!)


(あ、そっか。あいつは先行兼生贄的(ファーストペンギン)な奴か。想定以上に危険ならトカゲの尻尾切りで見捨てて容易だと判断すれば本格的に狩猟を開始する)


(逃がさずに全員殺るんだから目の前の奴を殺すだけじゃなくて対局を見据えたやり方をしないと)


どうするか。そんなことを考えていると、また碌でもない使命感めいた何かがよぎる


「・・・あ、そう」


何故この場面で教えて来たのか。何が目的なのか。何もわからないが少なくとも私の目的には合っている助言だった


丁度飛びかかって来た火の粉狼が3匹居るので真ん中に居た奴に向かって全力で突撃しながら殴り抜ける。必然的に狼は地面に叩きつけられた水風船の如く破裂する。身体が大きいおかげで破裂して撒き散らされる血液の量も多い


これだけあれば多分足りるだろう


【血のご令嬢】


「縛れ」


スキルを発動し何となく命令する


それなりの量があると言っても所詮は一匹分の血液しかない。鎖なんて洒落た見た目にせず紐状にして全ての狼の右前脚を捉えるイメージをする


スキル発動をさせた影響で血液が私のイメージ通り動く


爆散し重力に従って落下しつつあった血液はまるで意思を持ったかのように空中に一瞬留まると全ての狼に向かって勢い良く伸びていく。意表を突けたのと血液が動く速度がそこそこ速かったおかげで群れの大半は捕縛することに成功する


しかしながら群れの中で4匹だけ血液の捕縛を逃れ逃亡を開始した


私を包囲するときも他より一歩下がった位置に居たのでアレがボスとたぶん群れを大きくするための繁殖用の雌だろう。見捨てられた残りは自分達さえ生き残ればどれだけ犠牲になろうとまた数を増やせるが故の価値の低さからだと思う


(ほぼ確保。残り、4、逃亡。追撃、手段、遠距離!)


この時は頭になかったが逃せば報復に来る可能性があるし、捕まえられそうなら餌が増えるので捕まえておきたい。だが今は、折角パーフェクトゲーム間際だったのに逃げられるのなんかムカつくし殺すぐらいの考えしかなかった


近くに居た狼2匹に向けて下から上に腕を動かして胴体を盛大に爆散させて速攻で遠距離攻撃用の血液を確保する


【血のご令嬢】


集まった血液を私の目前に球体にして浮かせる


その頃には逃げた狼達は10mほど離れている。全力で近付いて殴り次に接近して殺すを繰り返せば4匹程度速攻でやれるかもしれないが無駄に爆散させて血液を無駄にするのは良くない。スキルで爆散させた血液を集めながら後でまとめて吸うという選択肢もあるが、スキル発動中はそちらの方にも意識を割く必要が出てくる


狼達を縛りながら体を動かしながら血液を集めておくなんて意識分割をやったことも無いのにいきなり実践するのはリスキーすぎる


(集中・・・)


傍目から見ても綺麗に仕留められれば文句無しだが・・・それは今後の課題として、今回はひとまず可能な限り少ない出血で殺して捉えられれば良い


「貫け」


4匹が多少散会しながら逃げていることも考慮して穿ち殺すための線を扇状に横に何十本も縦にも何本か分離させ木の幹ごと貫通させて逃亡した狼達目掛け鋭く伸ばし貫く


移動速度的にこの短時間でそこまで移動することは無いと思うが念のために射程50mまで線を伸ばして貫いた


50m先まで貫通したはずの血液の線を戻し、予定通り上手くいっていれば殺せているはずの狼達を回収してくるまでの間、より確実にとらえて置くためにまだ生きている狼達には左前脚と首を繋げておく。あとはそれぞれを何処かしらで繋げておけば意識するのはあくまでも一つで済む


まるで針山にでも刺されたかのように穴が開いている木々たちの間を抜け進む。17mほど進むと1匹発見する。残りは逃げられたのかと危惧したが横を見れば残りの3匹も見つかった。どうやら予想通り散開しながら逃げていたらしい。扇形にしてよかった


ただ、穴だらけにしてしまったせいで全身から血が流れてしまっている。勿体ないが既に地面に流れている分は諦め、残りはスキルで確保して戻ろう


【血のご令嬢】


「えっと、集え」


すると体内からすべての血液を抜かれた萎びた狼の死体がたちまちに4つできる


血液を横に浮かせながらまだ生きている狼達の元へ戻った


(良かった。ちゃんとスキルは稼働したままだった)


一応、何となくスキルが稼働しているなーという感覚はあったのだが実際に見るまでは信用できなかった。そのせいで絶対にスキルが途切れないようにとかなり気を張った


折角捕まえたのに逃げられた勿体ない


キャンキャン鳴きながら暴れている内の一体に近付きこのままで吸いづらいので頸椎付近を掴んで骨をへし折る。なんか涎を垂らしてダランとなったのを確認してから噛み付いた


(生死に関わらず味に変化無し、相変わらず不味くは無いけど進んで飲みたくはない味。あと臭い)


特別美味しくも無いので人間の街に着くまでの栄養補給と割り切ってさっさと吸い尽くそう


1分ほどしてようやくすべての血液を吸い出した


変な所で怪我していなければ一回も出血させていないので、このサイズの血液タンク丸々一本満タンで入っていることになる。これは地味に時間がかかりそうだ




その調子で血を吸い続けること15分、次々と死んでいく仲間にもうどうしようもないと悟ったのか途中までキャンキャン鳴いたり低く唸ったりしていたのに今ではすっかり意気消沈し、自分が殺される番をただ大人しく待つだけの血液タンクが2本残っていた


「はぁ・・・うっプ・・・・・・・・・はぁ~」


不味くは無いという飲める程度の味だったとしても連続で飲み続ければ飽きる。血液自体はまだまだ飲めるのだが、この味の血液はしばらく飲みたくない


にもかかわらず、まだ2匹分と狼を縛っていた鎖分、更に未だ横で浮き続ける4匹分の血液の球体


「・・・はぁ~~~~・・・・・・・・・」


それらを見て飲むことを想像するとため息しか出ない


それでも今我慢して飲み切ればかなりの長期間に渡って血液問題を気にせず活動できる。我慢我慢これは美味しいこれは美味しいと自身に言い聞かせていると


(この感覚は一体・・・何か、ある?・・・・・・いや、何か・・・・・来る!!)


そう判断するが早いか、瞬時に生き残っていた2匹を引き千切り割いて血液を放出させて横の血液に纏め縛るのに使っていた血液も一緒に纏めて臨戦態勢を取った


今まで感じたことのない感覚、錯覚というにはあまりに確信めいている絶対に何かが居てその何かはこちらに来るという感覚。それはまるで火の粉狼の背後からの奇襲に気付いた時のような何となく来るという気配


(気配・・・ああ、なるほどスキルゲットって?もっと親切に教えて欲しいな!)


数はおそらく複数、狼よりも大きな気配、可能性としてあるのは血液の匂いに釣られてやって来たの肉食生物


(時間をかけ過ぎた。今から逃亡しても、いや無理か。なんか無理っぽい気配感じる)


何処からいつ来るのかわからない気配に辺りを警戒し続けた


視覚に聴覚に嗅覚に勘に


今まで感じてきたことが無い感覚であるがゆえに何かわからない。相手の居所を掴めそうな感覚を総動員して待ち続ける


ふと視線を上げた先、木の枝に一匹の鳥が止まっていることに気が付いた。鳥と言っても大きさは前世の大鷲サイズだが、周りをよく見渡すと何匹か同じような鳥が枝に止まり私のことを見ていた


(鳥?・・・・・・あ!もしかして気配の正体って・・・・・)


今までしていた気配という感覚によく集中すると何となくあの鳥たちであることが分かった


こちらに襲い掛かって来る訳でもなく何かを待つようにそこに居続ける鳥たち


今の所であった生物はすべて襲ってくるような生き物しかいなかったので意味が分からなかった


だが、不意に横の少し離れた位置から何かを啄み貪るような音がしていることに気付く、鳥を警戒しながらもそちらの方に視線を向けると幸運にも木々の隙間から死肉を貪る同種の鳥の姿を見ることができた


(もしかしてこれはアレかな?いわゆる森の掃除屋的な)


(近付いて来ないけど少しだけ離れた枝に止まっているのは、私の近くに転がっている狼の死体を食べたいけど私がいる所為で近寄れないってこと?)


そう理解した瞬間肩の力が一気に抜けた


「はぁ馬鹿らしい・・・」


いくら姿が見えていなかったとは言え襲い掛かって気もしないあの程度の鳥に本気で警戒して戦闘態勢を取っていたことが酷く滑稽に思えてきた


「掃除ご苦労様」


返事が来る訳ないだろうが何となく鳥達に声をかけてから私は人間の街があると聞いている方向に向けて再び進み始めた


「気配とか・・・いくら慣れない感覚だからってあんな鳥に・・・いやそもそも気配に対する説明が無いのが悪い、私は悪くない、何の修行も積んでないのにいきなり気配を感じるようになったら誰だってあんな感じになるって絶対」


まるで道端の小動物相手にイキっていたような羞恥心に苛まれながら私は横に浮かぶ血を飲んだ


「はぁ、まっずぅ~・・・・・・」


気配の判別も今後の課題にした


===ステータス===


名前:ラヴィナイト・ムーン・ティバール

性別:女性

年齢:11日

種族:上位吸血鬼

職業:原初の吸血鬼の娘


Lv41


HP:2.678.635/2.678.635

MP:2.678.635/2.678.635


ATK:55.978

DEF:22.080

INT:26.851

DEX:26.851

AGI:55.978


―――スキル―――


アクティブスキル

吸血Lv2、飛行Lv1、吸血鬼の翼Lv1、血のご令嬢Lv1、魔の魔眼LvEX、力の魔眼LvEX、死霊魔法(new)Lv1、体術(new)Lv1、観察眼(new)Lv1


パッシブスキル

気配察知(new)Lv1、成長補正Lv1、再生Lv1、陽の下を歩む者LvEX、記憶補正LvEX、全魔法適正LvEX、異形の精神LvEX、精神変容LvEX、とある存在からの加護Lv■■■


==========


死霊魔法:死者や魂、生命以外の存在へ干渉する魔法に対する補正とレベルに応じた知識の付与。現在の主人公では死体の種類に問わず脆く弱いゾンビくらいしか作れない、あと主人公よりも圧倒的な強者は死霊化できない


体術:肉体を動かす行為全般に対する補正がかかる。現在の主人公ではイメージ通りに体を動かしやすい気がする程度


観察眼:対象または辺りを観察する行為に対する補正がかかる。現在の主人公では道端に落とした落とし物を見逃さない程度


気配察知:生き物が発する波動、それを察知する能力に常時補正がかかる。現在の主人公では気配の正体はわからずただ何かが居る気がする程度

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