売買
マザーグレーの上流階級、つまり上層階にて。
「この赤ちゃんに遺伝子操作Aと、発育プランSを」
そう、今や赤ちゃんは売り物なのだ。貧しい家庭が食べていくには子を売るしかない。それがこの時代。
「お待たせしました【マーダス】様。こちらになります。」
「よし、この子はイヴェルと名付けよう」
どんな遺伝子操作されたって一つの命だ。感じる力はある。
イヴェル三才の時。
「お父さん。お母さんは?」
「今買い物だろ」
(なんかお父さんって冷たい・・・)
イヴェル十歳の時。
「お父さんプログラミングで一位になったよ!」
「そうか」
「褒めてくれないの?」
「お前に費やす時間などない」
この言葉にはショックを受けた。そしてイヴェルは家出をする。とはいっても、道という道は建物内にしかなく、また、建物外は空飛ぶ車が行きかう危険地帯。おまけに落ちたら絶対助からない。
「そうだ、死のう」
イヴェルは自殺しようと上層階から飛び降りた。
不思議な事に恐怖はない。おまけに車は避けていく。
ダン!
最下層へ落ちた。しかし?
「生きてる?」
なんとイヴェルは無傷だった!
「どういうこと?」
それとは別に問題が発生する。
「へっへ。おぼっちゃん。いいお召し物で!」
「ほら、このナイフで切り刻まれたくなかったら、置いていくんだよ!」見た目はひょろひょろしている男二人だがナイフがあるとまずい。
「わ、わかりました!」ぬぎぬぎ。
イヴェルが全裸になると。
「実はさぁ、俺たち腹ペコなんだよね」
「まさか・・・」
「ガキだろうが人間だろうが食えればいいここで死ね!」
ヒュン! がきっ! 男のナイフはなんとイヴェルの皮膚で止まった。
「ち! ロボットかよ!」
「まぁいいじゃないか。服はてに入ったし。ははは」
「そうか僕はロボットだったのか!」
―譲歩―
「三時間前、確かに地震があった、と、思われる地面の隆起はこちらにもある。清太どうする?」
「うーん、こりゃマザーグレーはダメかもな」
「ちょっと待った。そこ! 隠れてないで出てこい!」
ひょろひょろした二人組が現れた。
「盗み聞きとはいい趣味じゃないな。名を名乗れ」
「【ピンク】」
「【パンサー】です」
「随分と覇気がないな?まぁいい。俺はバスター、ソラリス人だ。お前らと同じく最下層に居たもの(と、言っても落ちてきただけなんだけど)」
「お腹が空いていて、俺ら・・・」バタン、倒れた。二人同時に。
(こりゃ連れていくしかないか)
「はっ!」周りを見渡すピンク。
「起きろパンサー! こりゃ夢か!?」
「ん? んー・・・。ん!?」
そこは自然豊かな世界だった。恐らく二人は名前も知らない「木」という植物や「川」といった水が無限に流れるものなどなど。
「起きた?」
木の上で木の実を採っていたバスターが二人に渡す。
「いいの?」
こくりと首で頷くバスター。二人の目からは感謝の涙があふれ、口からはヨダレがあふれた。
「ここはね、清太って侍の神通力ブラックホールの中なんだよ。最初は何もなかったけど、一から創ったんだって、詳しくはもっと仲良くなったらね!」
「ぼぼほりもほぅむ(頑張ります)」と、口の中の木の実をこぼしながら応える。