気功と波動
和風建築物のいわゆる寺に、子供達が集まっている。大人と見られるのは恐らく和尚。和尚は言った。
「歴史を学べばあらゆることの対処法が見つかる。歴史こそ学問で一番深いのだ。清太、教科書ニ十八ページを読みなさい」
「はい。アメルカ帝国の富豪【オンダス・マーダス】は、画期的な発明をしました。その名も、粒子変換再構築装置、通称【オンダス】です。オンダスは物質を原子にまで細かくし、且つ、再構築し、物体を作り上げることができます」
なるほど、シスターズの超高層建物はオンダスで作り上げられたのだろう。なにせ、物質が圧倒的に足らなすぎる。
ここは清太がまだ少年だった頃の【どこか】。
「……にして、惑星ソラリスはシスターズの仲間になりましたが、ソラリス人の絶滅を意味していました」
「うむ、よく読めたな【姫路】。それでは……」
ゴーン! 鐘の音が寺中に響く。
「勉強はここまでか。よし、では皆、表へ出なさいこれから体育の時間だ」
体育と言って、五十メートルも走れないような狭さだ。しかし、木々が生い茂る豊かな自然があった。
「はい、それでは皆、【気功と波動】の練習を各々はじめ!」
『はーい!』子供達が声を揃えて返事をしたあと、蜘蛛の子を散らしたように各々定位置につく。
「たー!」ある子供は拳を太い木に向け、何やら力んでいる。すると、バッ! と、何かが出た。それは木を凹ました!
ある子供は二人で組んでバチバチと火花を散らしている!
そして、清太は……。そんな皆を見て、ボーッとしていた。
「きよた!」
「ひめじ!」
清太に言い寄ったのは姫路であった。二人は男女ながら幼馴染で、仲が良かった。
「きよたさー、気功も波動もできないんだよねぇ?練習しないの?」
「だって……。俺にはソラリス人の血が流れているから……」
なんと、清太はハーフかクォーター?何れにせよ、ソラリス人を親類に持っていた!
「ただいまー」
清太が家に帰った。もうとっくに授業は終わった。授業のあと、清太は独り、川沿いに佇
み、鮎釣りをしている人を見ていた。鮎は結構やんちゃな生き物だ。と、いうより、人間の方が珍しいのかも知れない。鮎はオスがナワバリを作り、そこに入った敵、同じ鮎のオスを追い払うために戦う。鮎釣りはそんな習性を利用したものだ。
地球人と馴染めないのは、ソラリスの血があるからなのか?そう清太は考える。
「あら、お帰り」
出迎えたのは、母の【清子】はニコニコと微笑む。
「今日は出来た?気功!」
「お母さん、ソラリス人の血が混ざっているボクには……」
「あら?言ってなかったかしら?気功と波動は元々ソラリスの文化よ!」
「えぇ!!」
清太はそれはもう歯が抜ける程驚いた。
「ほら、これを飲みなさい」
出されたのはただの飴玉。
「これは?」
「それは、【聖・ろ丸】っていう気を高めるものよ」
「ふーん」
清太はとりあえず口に含んだ。
「じゃあ、夕飯まで、洗濯物取り込んでくれる?」
「はーい」
清太は庭に向かった。
「……。これで、これでいいのね?姫路ちゃん、いえ、【マーダス・ヒメジ】!」
「おばさん、あまり大きな声出さないでくださいね。清太に聞かれたくないから」
なんと! 姫路は何者なのか?これでいいとは?
翌日、例によって気功と波動の時間。
「ね、きよたやってみよ?」
「え?無理だよ」
「ほら、あそこ、あそこへめがけて力をしゅうちゅうしてみて」
なんか、今日はぐいぐいくるなぁ、と、思いながらも、唯一の友である姫路の言うことを聞き、そうしてみる。
「んー!」
すると、巨大なブラックホールが現れた!周りのモノというモノを吸収している!
「清太!」
和尚がただ事ではないとなんとか止めようとする。そこで思いついたのが。
『せんせい!』
子供達が叫ぶ! 和尚はブラックホールの中心へ飛び込み、自らの気功と波動で結界を作った! 清太はわけがわからず腑抜けている。
「おーい!」
?和尚の声だ。
「スゴイぞ! 皆も来なさい」
その掛け声に最初はキョトンとしていた子供達だったが、ブラックホールは安定して大きさが定まり、和尚が結界を解いてももうモノを吸うことはなく、子供達の警戒心が薄れ、その中の一人が、和尚の元へとダイブ! すると続けと次々と子供達が入る。
そこには、何もなかった。ただ広い【場】があるだけ、吸いこんだ木が倒れていたりするが、それ以外が無である。
「わっ!!!」バッ!
突然、姫路が清太を驚かせた。すると、ブラックホールは閉じていく。
「しまったぁ!!」
和尚は叫び出した。そこで、子供が聞く。
「先生どうしたの?」
「お前達にはまだ話してなかったが、気功と波動には【第三の道がある】!」
『神通力!』
「文字通り神の力、安易だよねー。大人達って、ほんとバカ」
「ひめじどうした?」
いきなし神通力なんて言い出す姫路、いや、ヒメジに戸惑う。
「清太は亜空間を作り出す超能力みたいね。やっぱりね」
「ひめじ、どうした??なんなん??」
ヒメジは何もかもわかっていたような素振りだった。なぜ?