桃源郷
「だめね。ここも断層が何十メートルも現れているわ」
「そうか。引き続きタバサは断層の調査を頼む」
「わかったわ」
宙に映し出された映像でテレビ電話をするタバサ。相手は清太である。
一日前のこと、マザーグレーこと地球で、星全体が寝返りをうったような地震が起きた。特殊コーティングされた地面も隆起し、断層が向き出ている。その調査を清太達はしているのだ。
しかしだ。地震が起こる事は人類なら知っているので、予め対策をとっていたため、そんなに損害はない。被害を受けるのは最下層の人間だけである。
「あら?」
タバサが車に戻ろうとすると、輩が車に集っていた。
「それ、私の車なんだけど?」
「へぇ、姉さん、俺達が誰かご存知ないと?」
リーダーと思われる男が言った。
「知らないわね」
「俺達は! アーサー!」
「パンダート!」
「ヒル!」
「ハラヘル!」
『四人合わせて! 鉄槌の騎士団!』
息はピッタリである。
「あら、そう。じゃあね」
「ちょっとちょっと!」
颯爽とこの場を離れようとしたタバサにアーサーがツッコミをかました。
「なによ?」
「この車、もらうぜ?」
「いいわよ、じゃあね」
「ちょっとちょっと!」
颯爽とこの場を離れようとしたタバサにアーサーがツッコミをかました。
「これ! 大事じゃないの?」
「大事よ」
「なら力尽くで奪ってみな?」
「面倒だからあげるわ。じゃあね」
「ちょっとちょっと!」
颯爽とこの場を離れようとしたタバサにアーサーがツッコミをかました。
「あげるって」
「漢ならかかって来いよ!」
「私、女だから」
「性別は関係ねぇ!」
「あなたが言い出したんじゃない」
ちょっと流石にイラっときたタバサ。と、いっこうにかまってちゃんなゴロつき。
「じゃあ、こっちから行くぜ?」
「いいわよ。きなさい」
「パンダート!」
巨体なパンダートは一番強そうだ。
「ヒル!」
一方ヒルは小さく、どうやら小人族のようだ。
「ストレート・オブ・デスティニー! かましちゃって!」
アーサーがそう号令すると、ヒルを片手で持ち上げ、パンダートが思いっきり投げてきた! なんと時速二百キロ! しかし、運動音痴でも距離があるのでかわすのは容易い。
と、思ったら、タバサに当たる五メートルのとこでグン! と、曲がりタバサへ直撃!
「やりー!」
アーサーが喜ぶ。が、ビームシールドでなんとか防いだタバサ。
「むむ、じゃあ! ハラヘル! マナ・オブ・ファンタジア!」
ハラヘルはプラント星人。半人間、半植物である。蔦のような両手を伸ばしムチにして、タバサを襲う! 当然ビームシールドで防げたが、本命は足だった! 特殊コーティングされた地面を突き抜け、ハラヘルの足である根っこがタバサの足に絡みつく!
「ははは、どうだ?動けないだろ! 最後はアーサーめいぶ……つ?」
ぶちっ! ぶちっ!! タバサはハラヘルの根っこを隠していた短刀で切り裂いた。
「……。気に入った! あなた達、私達の仲間にならない?巨体のあなた。力は使えるわ! 小さいあなた、空を飛べるのね。プラント星人のあなた、ものすごい能力ね! あなた達はきっと役に立つわ」
「俺は?」
「清太! 見ていたでしょ?」
宙に向かって話し掛けるタバサ。すると、モニターが現れ清太がいた。
「あぁ、人員拡充は願ってもいない。今ゲートを開く」
すると、音もなく扉が現れ、ゆっくり開いた。眩しい光量が目に刺さる。開いたその扉の向こうには豊かな自然と人間との調和が取れていた頃の光景が広がる。まさに桃源郷である。
「歪曲空間か!」
一人遅れてアーサーが入ってきながら呟いた。
「あら、賢いのね?」
「へんっ、俺だってゲリノビッチ大学を卒業したのは伊達じゃねぇぜ?」
大学卒業して最下層にいるのはすごい稀である。
「何か犯罪したの?」
「借金の連帯保証人になったんだよ!」
恐らく逃げられたのだろう。