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例外学級  作者: ユキ雪
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第二話 例外的な同盟相手

「私、神楽高校一年一組、空野ユカは今日のことを忘れない。最後に君の名前を教えてくれないかな」


「俺も忘れはしない。俺の名前は苗代涼。神楽高校一年ゼロ組だ」


「お前たち、さっさと校舎に入れ」


 今の時刻は午前九時。始業のチャイムから二十五分遅れて神楽高校の正門前に到着。

 そこで名もなき同盟に浸っていると、恐らく俺達の握手も見ていたであろう教師にありがたいお言葉を頂いてしまった。


「私、忘れないから!」


「俺も約束する」


 最後にそう言葉を交わし、俺と空野は別の道を歩みだした。


「はあ、遠いぞゼロ組」


 この学校の構造をシンプルに説明すると、新校舎には一般生徒の、旧校舎には例外に属する生徒の教室がある。

 そして俺が目指している旧校舎は、正門から下駄箱までが遠いのだ。


「もう足腰が限界だ……」


 ようやく靴を履き替えそんな情けないことを言っていると、一難去ってまた一難。四階に位置する一年ゼロ組に行くまでの手段は階段なのだが、下駄箱から階段までこれまた距離がある。


 俺はこの学校に山登りのプロになるつもりで入った訳じゃないのだ。


 こうして五分ほど心で叫び続けた後、いよいよ一年ゼロ組の教室が視界に入った。

 遂に我が本拠地を見つけたのは良かったものの、一つの不安が浮かんだ。


 一年ゼロ組以外の四階の教室が空き教室であることが原因なのか、いやにひとけがないのだ。

 ゼロ組の教室には電気が付いているし確かにいるのだろうが、何せ声が聞こえない。


 いや、ここで尻込みしてはいけない。

 考えてみれば、今こうしている間にも遅刻時間の記録が伸びている可能性もあるのだ。


 よ、よし! 入るぞ。後ろのドアから申し訳無さそうに入っちゃうからな。



「失礼しま〜す。遅刻した苗代で〜す」


  うん?

 おかしい、これはおかしいぞ。


 俺は確かに遅刻をした。加えてそのことを声に出しながら教室に入った。

 だというのに何故、教室の前で立っている教師は何も言わないんだ!


「あ〜、先生? あの、私、遅刻してきた人なんですけど初日から。何もなく座っちゃって大丈夫ですか? もっとこう、初日から遅刻とは何事だ! みたいなの貰っとかなくて問題ないですか?」


「いいから席に着け」


「はい」


 この先生表情は変わらずで怖そうだけど、海のように大きな心の持ち主なのか?


 それと、何故か笑ったクラスメート。正直に手を挙げなさい、怒るから。


 まあ、何はともあれひとまず落ち着いたということで、大人しく席に座ってますかね。


 いや、ちょっと待つんだ。


「あ〜、あの、先生? ちょっといいですか」


「何だ」


「空いてる席ってのが、教卓前の席しか無いんですけど。もしかして、これが先生なりのお説教だったりします?」


「私がしたものではない。この教室での席割りは自由。それ故、空いてる席に対する私の干渉はない」


「そうですか......」


 少しだけ、そうほんの少しだけ割り切れないところがあったので、クラスメートのほうを見やるとニヤニヤしていやがる。


 学校初日から信号不信に加えて人間不信になりそう。


「今来たものもいるからもう一度言っておく。入学式では、一年ゼロ組の生徒は後ろに並ぶこととなっている。くれぐれも他クラスと混ざらないように」


 分かりやすく区別される扱いだな。まあ、そんなことに文句を言うほど俺は世間知らずではない。 

 それに、他の生徒からも特に不満は聞こえてこない。それは、ゼロ組という意味を全員よく理解していることの表れだろう。


「どうやら、一組から七組の生徒は皆移動し終えたようだ。廊下に並んで静かに体育館まで向かえ」


 ようやく座れたのにもう立たなければならないのか。

 しょうがない、頑張って歩くとしますか。


「と、遠い......」


 すっかり忘れていた。体育館は新校舎一階にあり、旧校舎から新校舎に移動するには、ニ階にしかない渡り廊下を使うしかないのだ。

 つまり、しんどいってこと。


「おいおい、高校初日からそんな辛そうな顔をするなよ」


「ん? 誰だ?」


「俺だよ、俺」


「詐欺なら間に合ってるんだ。お引き取り願おう」


「詐欺じゃないっつうの。俺はお前の一個後ろの席に座っていた形式昇だよ」


「けいしきのぼるさん?」


「違うわ! かたしきだ。何で耳で聞いていたのに、字を見た時の間違いをするんだよ」


「そうだな」


「反応薄っ!」


「そこの二人、静かに歩け」


 あの先生、気のせいか時間が経つにつれて俺への視線が悪い意味で強くなっている。

 もし女性教師に睨まれる趣味でもあれば問題無いんだが、これ以上問題を起こせば高校生活の初日が高校生活最終日になる気がする。


「もしも~し。もう既に俺のことを忘れていないか」


 いよいよ体育館に着くかというときに、再び今度は小声で形式が話しかけてきた。

 もちろん忘れているはずがない。


「いつの間にか列の先頭になっているし、小声でもあまり話しかけるな。一般生徒に変な目で見られたくない」


「建前と本音が逆になってるぞ!」


「おい、そこ」


 ビクッ!


 いっそ今から教室に戻って、一人で反省文を書かせてくれ。その方がこの人に監視されているよりよっぽどいい。

 ただ一つ感謝することがあるとすれば、この迫力のおかげで形式がすっかり黙ったことだな。


 今日このタイミングで話しかけてこなければ歓迎していただろうが、あいにく今は心身ともに疲れ荒んでいる。故にボケようとすると、ついつい言葉の切れ味が増してしまうのだ。


「今の並んでいる状態で構わない。この緑の線を先頭の基準にして座っていろ」


 体育館はなかなかに広く、前半分には一組から七組の計二百八十人が座っているらしいが、縦も横も十分にスペースが余っている。


 それとは別に気になったことが一つ。

 一般生の皆さんからとても視線を感じるのですが、これはどういうことでしょうか。


 そんなことを考えていると、入学式の開式の言葉が入りその後校長や生徒会長、その他数人の話を聞いてやがて新入生代表がお話しする時間となった。


「新入生代表、空野ユカ」


 俺の気のせいでなければ、司会は俺が知っている名前を呼んだ。

 そしてこれまた俺の気のせいでなければ、壇上に上がったその生徒に見覚えがある。


 詰まる所こうだ。

 あの同盟の唯一の相手は超優等生だったってことだ。


 マジかよ。


 


 


後書きまで読んでくださりありがとうございます。

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