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第一話 俺の英雄譚が始まる

 新作です。頭を空っぽにして楽しめる作品を目指しました。


― 時はまさに、恒星間航行時代!!


 人々は、飢えていた。……娯楽に!血肉脇躍る戦いに!!


 俺は昔からあこがれていた。星の大海を行く恒星間宇宙船に!そして、恒星間宇宙船同士がぶつかり合う宇宙最大のエンターテイメント、馬上槍試合トーナメントに!!


 そして今、俺、高風たかかぜケイジは恒星間宇宙船『ザンナーシュバリエ』を駆る、宇宙の騎士となったのだ。


 初めての実戦、俺は船のメインAI、『フォボス』……義母かあさんを起動する。彼女のおかげで、この全長5000mの巨艦は、俺一人のコントロールで手足のように動かせるのだ。


 赤い非常灯だけだったコクピット内部の照明が、計器類をディスプレイに映し出すごとに色とりどりの世界を取り戻していく。俺は動力源たるエーテルドライブの稼働状況を確認する。すべてのインジケーターがグリーン……すなわち正常を示し、推進力、論理シールドおよびエーテルランスの稼働、そして電力供給、全てにおいて最大出力での稼働を保証していた。


義母かあさん、いよいよ初めての実戦だね」


 『フォボス』は、コクピットの全面に妖艶な大人の女性の姿を投影する。これが……『義母かあさん』だ。赤銅色の豪奢な髪の毛が、コクピットの淡い照明に映し出されて不可思議な色合いに染まる。


「全く、無茶をやる子ですね。若いころのあの人を思い出します。敵は衛星アイネのガルバリッツでしたね、あの人は何度も勝っていますが、油断はしないように」


 バークネル星系群最強トーナメント、マーカンタイト星系予選、その最初の相手だ。


 第七惑星ブッドンはガス状惑星だったが、その5つの衛星はそれぞれ、ブッドンを人工恒星化することによって居住可能になっている。そのうちの一つ衛星アイネの領主マインツ=フォン=アイネが乗る『槍の付いたバケツ』こと恒星間宇宙船ガルバリッツの姿が、起動したモニターに映し出される。


「分かってるよ。だけど、ガルバリッツぐらい瞬殺しないとこれから立ち向かう敵には太刀打ちできないだろ」


 俺が義母かあさんにそう返すと、それを聞いたか聞かずにか、HMDヘッドマウントディスプレイに移る映像の隅に髭面、しゃくれあごのオッサンが映り込んで割り込んできた。


「おいケイジ、初実戦の癖にもう少し緊張しやがれ!相手は少なくとも10年は馬上槍試合トーナメントの経験において上だぞ!」


「ちぃー、うるさいなあおやっさんは。分かってるよ」


 おやっさん……ザンナーシュバリエの整備主任であるおおとりガイは凄腕のメカニックだ。前の試合で大破したザンナーシュバリエを、メカニック達を率いて1か月の突貫工事で元通りに直した。


「てめえは頭が利かないんだから一戦一戦集中しやがれ、次の相手の事を考えるのはお嬢様とジャッキーに任せればいい!……それと、勝つにしろ負けるにしろあんまり壊すなよ」


「了解……」


 おやっさん達……バックアップの皆は地元……すなわち俺の惑星であるマーカンタイト星系第三惑星ハッカネンの地表から突き伸びた軌道エレベーターの先端に付いた宇宙港から俺達の戦いを見守ろうとしていた。


 その中には、おやっさんのほかに小柄な生意気顔の少年の姿が見える。


「ケイジ、相手は論理シールド貫通後の火力重視型だよ。僕がインストールしておいた回避プログラムを起動しておけばエーテルランスを回避できるから、とにかく、敵が隙を見せるまでは正面対決を避けるんだ」


 彼の名はジャッキー=クラーク。前の試合でAIとしてのカーネル部分を吹き飛ばされた義母かあさんを修復してくれた恩人だ。


「ジャッキー、でも正面からのぶつかり合いこそ馬上槍試合トーナメントの華だぞ」


「初実戦の癖に偉そうなこといわないの。シミュレーションの内容通りにやればいい、君なら何とかなるさ……お、カサンドラ様が来られたよ」


 ジャッキーは後ろに目をやると、そこには義母かあさんと同じ赤銅色の長い髪の毛をポニーテールにまとめた美少女が現れた。煌びやかなドレスが、彼女の身分を映し出すかのごとく光り輝いていた。


 彼女の名はカサンドラ=フォン=ハッカネン。俺の妻だ。


「ケイジ、あなたはきっと勝てる、勝てるわ……まあ苦戦はするでしょうけどね」


 みずみずしい唇が、ちょっと引っかかるような言い回しながらも俺の勝利を保証する。海のように青い瞳がただ真っすぐに俺を見つめる。


「私があなたを婿に迎えた意味、分かっているわね」


「当たり前だ」


「なら結構。健闘を祈ってる……父さんの二の舞だけには、ならないでね」


「ああそうだ。義父とうさんの仇はきっと決勝トーナメントに出てくるはず。必ず俺が仕留めるから、それまで……」


「絶対に負けないでよ」


 それは、二人の神聖な約束、身分の差を超えて夫婦の契りを結んだ理由だった。


 ザンナーシュバリエ、中世の騎士のアーメットを模した秀麗な外観を持つ船は、その左舷に装備された論理シールドを唯一貫通可能な武器、エーテルランスの切っ先を鉄バケツ、ガルバリッツに向け試合開始を今か今かと待ちかねるかの如く、俺の乗るコクピットにエーテルドライブの振動と駆動音を届けさせていた。


 そして、2隻の間に置かれた緑5つと赤1つのライトで構成された開始表示灯が、ホイッスルと共に点灯する。あと5秒で試合開始だ。


 1秒ごとに緑のライトが消え、プッという音が鳴る……波に対する統一媒体エーテルの作用によって、『宇宙の音』が周辺宙域に響いた。


 4……3……2……1……ポーン!!


 俺はスロットルレバーを倒し、エーテルドライブの出力を推進システムへ供給し、ザンナーシュバリエとガルバリッツは突撃を開始した。

 色々説明をかっ飛ばしてますが、第一試合の部分が終了後に、主人公とヒロインのなれそめの話をやるつもりです。

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