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SPIRITUAL HOME 〜猫のトム・ジョード〜  作者: ホーリン・ホーク
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4.KASHIRA

 昼飯時だというのに、トムはまだ帰って来なかった。

 ――どこへ行ったんじゃ……好物のチキンじゃぞうと、アルフレッドが窓から外を眺める。

 ビンセントがアルフレッドの頭を撫でながら言いきかせる。

「必ず帰ってくるさ。……待たんでも、先に食べておけ」

「……クゥン……」



 ****



 トムはその頃裏山にいた。

 裏山の、〝カシラ〟の所に。

 その子分のサブがトムを呼びつけた。


『おい。カシラがお呼びだ』

『え?』トムはキョトンと答える。

『お前に用があるってよ。来い。案内する』

 それが誰でどういう了見だろうと、トムはサブの後にてくてくついて行った。

『ねえ、それって……どこの誰?』



 着いた先は古く廃れた牛舎。

 恐る恐る、トムは中へ入っていった。

 そこには大勢の、様々な臭いの猫がいた。

『カシラ。連れてきましたぜ』


 中央には積み上げられた藁の山があり、そのてっぺんから彼は現れた。

 音もなく、カシラはそこへ舞い降りた。

 ビクンと、トムは固まり動けなくなった。


『カシラ』と呼ばれるその猫は、黒い毛の大きな(おとこ)だった。

 手足は虎のように太く、耳は蝙蝠の翼のように尖り、長い尾は蛇のように体の周りでくねっている。

 さらに威圧するその顔、その目。

 右の目は、無い。

 閉じられた目蓋の縁は白く縦にも傷があり十字を切っている。

 そして黄金色の鋭い一つの目、左目だけが絶えず激しく相手を捉え(おびや)かす。

 初めて会うものは皆、トムのように動けなくなる。

 仲間の誰もが彼に敬意を払い、『カシラ』と呼ぶ。

 だからそれが彼の名前だった。



挿絵(By みてみん)

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