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3.tom〝cat〟joad
あれから三年、トムは大きくなった。
ビンセントに大切にされて健やかに育っていた。
店の表の籐の椅子に座って通りを眺めているトムを、街の住人たちはよく知っている。
「ごきげんよう、トム」
「トム、調子はどうだい?」
「わあ! 今日は何捕まえたのー?」
「そう、明日は雨なのね」
「ほーら、トムのためにいっぱい魚釣ってきたぞー!」
「ニャーン」とよく返事をして皆を喜ばせた。
お客様には特別に自分から《いらっしゃいませ》と迎えるように。
白く清潔な柔らかい毛の胸元に黒毛の蝶ネクタイ模様。どこか気品のある出で立ち。
見つめると首を傾げ、じっと見つめ返す目が愛らしかった。
老犬のアルフレッドとは親子のように仲がいい。
二匹がビンセントと並んで通りを散歩するとその後を子供たちがついて行く。それは心和ませる光景だった。