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28.pray to God
トムの澄んだ目がフリーホイールの街を見つめる。
そこは高台の墓地。
住んでいた場所もよく見える。
アルフレッドが並び、メアリーが寄り添い、ビンセントを偲んでいる……。
一月の半ば、トムはアルフレッドに言った。
『ぼく、マナに会いに行く』
あれからまた、マナたちは去った。
彼女たちの幻影は今も漂う。
アルフレッドはわかっていた。
トムは窓から外を見つめてる。
『どうしても気になるんだ』
『行けばよい。だが無理はするなよ』
トムの瞳は輝いていた。
『命に従うのじゃ。その鼓動を感じながらな』
『うん! わかった!』
そしてトムは旅立った。
雪降る晩、アルフレッドは丘の上に立ち、トムを見送った。
トムの行く末を案じ、天高く、祈りの咆哮を轟かせた……。




