2.meg & mitch
メグとミッチの幼い姉弟は、今日もつま先立ちで通りから窓ガラス越しに店内を眺めている。
十二月。フリーホイール八番街の小さなパン屋〝ジョードの焼きたてパン〟は今日も早い開店だ。
――おやおや、来ておるな。どれ……と、その二人に気づいたビンセント・ジョードは紙袋にクリームパンを二つ入れ、手招きしてメグたちを中へ呼び入れた。
「おはようさん」
にっこり迎えるビンセント。
「おはようございます、ビンセントさん」
メグは上目づかいで礼儀正しく挨拶する。
「はい。持っていきな」
ビンセントが袋を差し出すと、ミッチが照れ臭そうに受け取った。
メグが言った。
「ビンセントさん、これ。ママが」
ポケットから硬貨を。
「いいよ、このパンはサービスさ。いつも遊んでもらってるだろ?」
メグとミッチは顔を見合わせ、ニカッと笑った。
鼻水を拭ってミッチがきいた。
「ねえ、トムは?」
「アルフレッドと公園にいると思うが……。行ってみい」
ビンセントが答えると、二人はわぁっと外へ駆け出して行った。
「車には気をつけてなー!」
「はぁーーい!」
メグとミッチのお目当ては、パンと、トムなのだ。
ビンセントは嬉しかった。
トムのおかげで街の子供たちがずっと身近になったのだから。