17.tom & mana
トムはマナと川のほとりにいた。
あれ以来、二匹はよくこうして会って遊び、話をする。
曇り空の下、マナはトムの表情を窺いながらポツリと言った。
『……わたし、ちっとも楽しくないわ』
『…………』
『……トム。もう!』
『……え? え? 何か言った?』
『そんな感じでさあ! この頃黙ってばっかりじゃない。……いい。もう帰る』
『ちょっ、ちょっと待ってよマナ、ごめん! ごめんよ謝る、考え事してて……ごめん』
トムはマナに擦り寄って悲しい目を見せた。
マナはその頬を舐め、慰めた。
『……わかってる。わたしもわかってるわ。ビンセントさんがお店をやめて、あなたもアルフレッドさんも元気がない。寂しがってるって』
『……うん』
マナは思いきって打ち明ける。
『ねえトム。わたしたちと……一緒に来ない?』
『え?』
『わたしたち、そのうちこの町を離れる』
『何で?』
『お父さんがもうここには住めないって。裏山の家も壊されて、食べ物も少なくなって……どこか、港町にでもと』
『……そう。みんな?』
『みんなよ。……だから、わたしたちと一緒に、ね?』
見つめるマナの綺麗な瞳。でもトムは何も答えられなかった。
マナは俯き、黙ってその場を去った。
カシラは遠くからマナとトムを見つめていた。
厳しさを秘めた右目で、娘とトムを見守っていた……。