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SPIRITUAL HOME 〜猫のトム・ジョード〜  作者: ホーリン・ホーク
17/30

17.tom & mana

 トムはマナと川のほとりにいた。

 あれ以来、二匹はよくこうして会って遊び、話をする。

 曇り空の下、マナはトムの表情を窺いながらポツリと言った。


『……わたし、ちっとも楽しくないわ』

『…………』

『……トム。もう!』

『……え? え? 何か言った?』

『そんな感じでさあ! この頃黙ってばっかりじゃない。……いい。もう帰る』

『ちょっ、ちょっと待ってよマナ、ごめん! ごめんよ謝る、考え事してて……ごめん』



 トムはマナに擦り寄って悲しい目を見せた。

 マナはその頬を舐め、慰めた。

『……わかってる。わたしもわかってるわ。ビンセントさんがお店をやめて、あなたもアルフレッドさんも元気がない。寂しがってるって』

『……うん』

 マナは思いきって打ち明ける。

『ねえトム。わたしたちと……一緒に来ない?』

『え?』

『わたしたち、そのうちこの町を離れる』

『何で?』

『お父さんがもうここには住めないって。裏山の家も壊されて、食べ物も少なくなって……どこか、港町にでもと』

『……そう。みんな?』

『みんなよ。……だから、わたしたちと一緒に、ね?』


 見つめるマナの綺麗な瞳。でもトムは何も答えられなかった。

 マナは俯き、黙ってその場を去った。



 カシラは遠くからマナとトムを見つめていた。

 厳しさを秘めた右目で、娘とトムを見守っていた……。


挿絵(By みてみん)

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