15.welcome to NOEA
それから一年が過ぎた。
ブロウィン空港が開港し、フリーホイールの街は活気付いた。
メインストリートの新しいアスファルトの道路を車が行き来した。
改装したホテルも賑わった。
タクシー、レンタカー、働き手も増えた。
情緒ある一番街二番街も客を呼んだが、何より八の二番街の新築デパートNOEAに人が押し寄せた。
ニックはNOEAのテナントを見て回る。
有名飲食店、ファーストフード店、SUSHIBAR。
ホームリビングコーナー、ブランドの服飾・雑貨店。
店員にのせられてカジュアルな服やブーツを買うニック。
行き交う客の波に紛れ二階三階とうろつき、また一階へ。
旅行案内所の派手な宣伝、ペットショップも目新しい。
――犬の服だと? こんな水玉着せられて、犬は喜ぶのか? ……と顎をさすりながらベーカリーの前を過ぎるニック。
焼きたてパンか……。
そして外へ出て、車の多さにあらためて仰け反った。
珍しさで州外から来る買い物客もかなりいると見た。
オルソン・エンタープライズの会長ディック・オルソンは、息子のニックとNOEAの状況を電話で話す。
《どうだ? ニック。黒字経営の方は》
――ギリギリのとこを、何を皮肉るクソ親父。
「ふっ。まずまずさ。だが物流コストがかかる。やっぱり不便なド田舎だ。もっと道路を整備してもらわなきゃ。あとは駐車場も」
《向かいの場所はまだ手こずってるらしいな?》
「……ああ。一人」
《パン屋の男だろう? そいつは今、病院に厄介になってるそうじゃないか》
「そう。だからそのうち手に入る」
《早くしろ。そこはお前に任せると言ったが、これ以上は予算オーバーだ。もう待てんぞ》
■長靴に入った猫 ハイルとデル