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13.wrecking ball
巨大な鉄球が振り下ろされた。
コンクリートの壁や天井が砕け散った。
その年の五月、フリーホイール八の二番街の廃墟ビルが壊された。
築四十年のトゥワイス・アパートも、肉屋も果物屋の建物も。
オルソン・グループ建設会社の黒い重機によって。
ちぎった豆腐のように瓦礫が散乱する。
剥き出しになる鉄筋。水道管。配電盤。
転がる便器。浴槽。流し台。
汚れたタイルを踏み、黄ばんだガラスを割ってパワーショベルが動き回る。
ダンプカーが怒ったように轟音と粉塵を上げ、行ったり来たりする。
解体現場の囲いの外では老人が一日中見つめている。
子供たちは機械の動きに見とれて黙っている。
何かが破裂する音に通行人は驚き怯えている。
広大な敷地に吹き荒ぶ変化の風が人々を煽ってゆく……。
街は変わってゆく。
人の動きは流れを作り、変化をもたらす。
その手は都合よく容赦なく、挿げ替える。
廃屋も繁栄の影も新たなものに。
思い出は風に吹かれ幻想の欠片となる。
時代は変わってゆく……。