この世界に来たものは/プロローグから1話まで
「お前、銃を持ってないのか?」
ポニーテールの女が俺に聞いた。
それも当然だ。何せここは「戦場」なのだから。
「まぁな。だが俺には銃なんかよりも強い武器がある。」
さあ、行きますか。
この世界では俺しか持たない武器、いや、俺にしかない武器。そう、
――――――――――――――――――――――――拳で。
~始まり~
俺の名前は鈴木和也
昨日までは普通の高校生だった。
いや、普通の高校生というのは間違いか。俺は今まで、嫌なことから逃げてきた。
運動もせず勉強もせず、ただ逃げ続けていた。
だがそんな俺も今、普通じゃなくなった。
いつも通りのベットで寝ていたはずの俺は今日、
――――――――――――荒野で目を覚ました。
周りにあるのは赤い砂と岩。それが見える範囲にずっとだ。
「え?」
どういう状況かわからず、起き上がったまま立ち尽くしていると。
急に、ありえないくらいの大きい音がした。
それは普通に生きていたら聞くはずもない音。
いや、普通に生きていたら「現代」では聞くはずもない音。
「銃声」だ。
~1章~
気が付くと俺は、中から見てもわかるくらい真っ赤なテントの中にいた。
「どこだここ。」
とりあえず俺はテントについている扉を開け、外に出ようとした。だがその時、
「動くな!」
後ろから赤い髪の小さい男の子(?)が銃を俺に向けていた。
「出身は。」
俺に銃を向けたまま、赤髪が聞いてくる。
というかこいつ、声変わり前か?声が高すぎる。
いや、そんなことを考えてる場合ではない。とりあえず答えよう。死にたくないし
「と、東京です。」
「トーキョー?この国にそんな名前の地名はないぞ!まさか敵国のスパイか!なら射殺する!」
は?
「ちょっと待ってくださいって!ここ日本でしょ!?東京なら真ん中にありますよね!??」
「何を言っている?ここはレッドとグリーンの間だぞ!二ホンなんて国はない!やはり怪しいな!」
どういうことだ?日本を知らない?そんな馬鹿な。ってかこいつ日本語しゃべっとるやん。
「いやいやいやいや!じゃああなたは今何語をしゃべってると思ってんだよ!」
「ナニゴとは何だ!ますます怪しいな!何かの隠語か?!」
と、銃を向けられたまま、取り調べ的なことをされていると、
「まあまあ、その辺にしときなさい。」
茶髪ロングの女がテントの中に入ってきた。
「なんで止めるんだ!モモカ!」
「もお、アカギはいつも疑いから入るのやめなさい。」
そうやって茶髪が赤髪をなだめると、赤髪は銃をおろした。
だが俺への疑いはかかったままらしく、赤髪が
「でもこいつは二ホンから来たなんて言うのよ!明らかに怪しいじゃないか!」
と言った
「誰だって急に銃を向けられたら混乱して変なこと言っちゃうわよ。
相手の話を聞きたいなら自分のことを言ってからにしなさい!」
「…はい。」
「はぁ、ごめんね。怪しい人。こっちも自己紹介するから何者か教えてくれない?」
「あ、分かりました。はい。」
「私はモモカ。レッドの軍の兵士。で、さっきから銃を向けてた
この子はレッドの代表の娘、アカギよ。」
ここで俺はさっき国の話になったときにレッドを国名として扱っていたことを思い出した。
そして俺はこのタイミングで気づいた。
現代ではおかしい銃声、荒野で目が覚めたこと。そして自分たちの国をレッドという人。
これは俺がアニメやネットで見てきたあれだ。そう
異世界転生
そうと分かれば簡単だ、異世界転生の妄想をしたときのように記憶喪失のふりをすればいいのだから。
「俺は鈴木和也です。出身地は日本の東京だと思うのですが…実は記憶がなくて…」
「あら、そうなの。戦場ではショックが多すぎるから記憶喪失する人もいるわよね。」
…薄々思ってたけど、この世界やばそうじゃね?
「記憶喪失が嘘の可能性もあるよモモカ!気をつけなきゃ!」
「まあまあ、私は信用するわ。嘘をついてるように見えないし。」
嘘ついてるんだよなあ…
「えー!…私は信用しないからね!」
「で、カズヤさん?記憶喪失らしいし、今のレッドとグリーンの状況を教えてあげるわね。」
っと、モモカという名前らしい茶髪が、状況をざっとだが説明してくれた。
この世界にはレッドとグリーンという2つの国しかなく、30年前から戦争をしているらしい。
今のところはほぼ互角であり、ここはレッドとグリーンの国の中間地点、戦争が起きている場所だ。
そこで俺はグリーンに銃で撃たれていて、レッド側のモモカが保護したらしい。
そして今に至ると。
「どう、大体わかったかしら?」
「ああ、ありがとう。」
「さてと、じゃああなたの記憶が少しでも戻ってほしいんだけど…何かないかしら。」
と、モモカが考えていると、テントの外から警報のような音が聞こえた。
そして同時に、遠くから銃声がする。
テントの外が騒がしい。明らかにヤバイ状況っぽい
「グリーンが仕掛けてきたみたいだ!行くぞ!」
と、アカギが言い、
「私達も行きますよ。カズヤさん!あなたもこの銃を使ってください!」
そういって急にハンドガンの持ち手を俺のほうに向けてきた。
いや、俺戦えないよ?
「いやいや、銃使えないよ!ちょっと待って!」
「いいからもってください!行きますよ!」
そういって無理やり俺に銃を渡して来たので、仕方なく銃を握ったその瞬間、
―――――――――――――銃は粉々に砕け散った
「人材育成VRゲームの調子はどうだ?」
「順調ですよ。特に被験体番号28番目の鈴木和也が、1試験をクリアしたようです。」
「そうか、このプロジェクトには我々人類の未来がかかっているからな。」
TO BE CONTINUED