……プロローグ……
駄文で恐縮ですが、暇潰しにご賞味ください。
ある人殺しの話をしてあげよう。
彼が生まれてしまったのは、今から1200年ほど前―――西暦で言えば9世紀に当たる年である。
この時代、日本では時の弘法大師“空海”が真言宗を興し、その遥か彼方のイングランドでは、当時七つに分裂していた王国が、互いを統べるための戦争が起きていた。
彼が目覚めたのは、その、血と死に塗れた戦争の最中だった。
当時のイングランドの勢力図は、中部に圧倒的な勢力を誇る“マーシア王国”を筆頭に、その周囲を六つの小国が取り囲むようにして治まっていた。
簡単に言えば、実質的なイングランドの支配者は、このマーシア王国だと言ってもいい。
しかし、マーシア王国のオファ王に国外追放されたエグバートが、フランク王国(後のフランス)のカール大帝の庇護を受け、オファ王の死後に七王国の一つ“ウェセックス王国”の王位に就いたことで戦争の火種は一気に点火することとなる。
エグバートは、自らをウェセックス王セルディックの末裔と称し、マーシア王国のオファ王に允許させようとしていた。
だが、オファ王はそれを認めなかったため、エグバートは国外追放されてカール大帝の庇護を受けるまでに陥ったのである。
そのオファ王が死んだ好機を、彼が見逃すはずがなかった。
エグバートはウェセックス王国の王位に就き、825年、最大勢力を誇るマーシア王国と対立する。
―――そしてこの時。
後に、12人の魔人の一人に名を連ねる最悪の殺人鬼が、その産声を上げたのだった。
味見はいかがでしたでしょうか。
更新は不定期になると思いますが、できるだけ早くしようと思っています。
どうか長い目で、温かく見守ってやってください。