第七話
書いてて楽しい♪
鬱蒼と茂る森の中、動物たち以外に進む2つの影があった。一人は道を切り開きながら周りを警戒し、一人はその後ろを挙動不審についていっている。殿を務めていると言えば聞こえは良いが……そういう訳ではなさそうだ。
「ねぇ、なんかこの森すごくうるさいよ……。さっきから何かの声が聞こえるし……」
「そうか? 俺には全く聞こえないが……たぶん、その耳のせいかもな」
獣人になり、猫と同等の聴力と視力、そして直観力を手に入れた紅は陽太よりも周りの些細な変化を拾ってしまうため、まだ自分の中で情報の整理が追いついておらず、尻尾も先ほどから足の間に隠し、本能的におびえている様子がうかがえる。当の本人はそれを無意識でしているのがその証拠である。
「うぅ……ほんとになんなのこれぇ……」
陽太の袖を親指と人差し指で後ろから引っ張るように掴んで、俯く紅。しかし、その純白の毛並みを備えた猫耳はピンと立てており、常に周りの音を拾っている。
そのとき猫耳がピコンと向いた方向で、ガサっと草木が揺れる音がする。さすがにこの音は陽太にも聞こえていて、木を背後に紅を庇う様にして先ほどの音源に対して正面を向ける。このような状況の対応もすぐにできるあたり、陽太が並の高校生ではなかったのが功を成しているといえよう。
「……(もしも魔物だった場合は俺が囮になって紅を逃がすか。……幸いなことにあと少しで森は抜けられるが)」
と思考したところで不幸なことに陽太の読みは当たってしまう。茂みの中から一体の赤黒いウサギのようなものが飛び出してきた――――――――――魔物だ。
「ちっ、いきなりついてないな。異世界最初の生き物が魔物か……ついてないな」
突然の魔物の襲来に落ち着きのある陽太とは反対にしどろもどろしている。
しかし、陽太は気付いていた。自分達はこの魔物から逃げきれない、と。彼はこの時点でさっきまでの紅の怯えの原因を察した。
ウサギ型でも魔物は魔物。弱肉強食のこの世界では弱いものが強いものに淘汰される。その中で、強者を倒そうとして魔力にあてられた弱者が、結果的に強者を屠るということはよく知られたことだ。実際は少し違うのだが、ここではあまり関係ないので割愛する。
魔力にあてられただけで強者をも屠る力を手に入れたウサギ型の魔物は自分よりも弱いものを狩る、強者へ変わった。
ウサギ型の魔物は彼らが自らよりも弱いと踏み、狩りを行ったのである。実際、強いのは魔物の方だった。
狩られる立場にいる二人に襲い掛かるウサギの魔物。勢いよく突進するが、間一髪のところで陽太が紅を抱きながら避ける。ちょうど避ける前の背後にあった木にはこぶし大ほどの陥没ができており、今の突進を避けていなかったと思うと背筋の凍る思いを2人は感じていた。
避けたことで地面に倒れてしまっている紅を庇う様にしている陽太。なぜならば紅はあまりの恐怖に腰を抜かして動けないからだ。
チャンスとばかりに動かない獲物へと攻撃を繰り出す魔物。2人は痛みに歯を食いしばった。
読んでくださってありがとうございます!
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いつも、このくらいの文は45分で書き上げるんですが、如何せん推敲癖が出てしまい結局少ないままなんですよねw
お仕事が終わった方はお疲れ様です。これからの方はお体に気を付けてください。
こんな小説でも読んでくださっている方が200人もいるんです。私も頑張りますよ!