第五話
うーん、自分で読んでみたけど文量そんなにかわらな―――――ケフンケフン、なんでもありません。
少し時間が空いて思考ができるようになると、僕はその単語に対する興奮を感じていた。
ファンタジー! 男の子ならだれもが一度はあこがれる世界だ。僕も時間が空いた時は父さんが持ってたドラ〇エをさせてもらってたしなぁ。剣と魔法を使って魔王の城を目指して旅をするという王道だけど、すごい楽しかった。
「思い出に浸ってるところ悪いんだが話をつづけるぞ」
あ、はい。
「……で、さっき話したラテーナについてだが、この世界には魔力……つまり、魔法が存在する。ラテーナでは魔力というのは命あるものに引き寄せられる特徴がある。動物、植物、そしてもちろん人も……だ。人はその魔力を使って様々なことをしているが、正確には魔力によって生かされている、と言った方が正しいが」
「えっと、その魔力ってまさか魔法の元だったりする」
「そうだな、それを今から説明する。まぁ、魔法は紅が想像してるようなやつでたぶん間違いないと思うぞ? 体内にある魔力を利用して発動させる。俺らの世界でもそういうゲームあったな」
なるほど~。もしかしてこの世界って……僕の理想の世界じゃない!? だとしたら絶対魔法使ってみたい!
「おおう、テンション高いな。魔法だけでそんなにテンション上がるか」
「うん!って”だけ”?」
「やっぱり気付いたか。そう、魔法が存在するこの世界には『魔物』がいる」
―――――――魔物。懐かしい響きだけど、いいイメージは沸かないな。人を襲ったり、殺したりするイメージがあるから……ちょっと怖い。
「魔物は生物が魔力によって生み出されている。その中にはまれに人間もいるがほとんどは動物だったり植物だったりする。そんな魔力にあてられた物たちのことを総じて『魔物』という」
魔物がいるって聞いて少しテンション下がったけど、何となく予想はしてたしね。……けど、なんで陽太はこんな事知ってるんだろう? 僕と一緒にこの世界に来たのなら、知らない方が普通っていうか自然なんだけど。まぁ、その時は陽太の方から話してくれるだろうし、聞く必要もないかな~。
このとき、陽太はかなり紅にこのことを問い詰められると踏んでいたが、聞いてくる様子がないことに心底安堵していたのは知る由もない。
「兎に角、この世界がそういう世界だってことを分かってもらえたならこれくらいで十分だ。あとは明日に向けて寝るのみ」
「明日は何をするの?」
紅はシャツだけで寝そべる陽太に話しかける。陽太は本当は上着を着ていたのだが、紅が汚れないように上着を紅に貸している。今の紅は華奢な体躯の猫耳少女なので陽太の上着がダボついていて萌え袖っぽくなっていることに本人は気付いていない。が、それが紅のかわいさをより引き立てており、陽太が心の中でガッツポーズをしているのは誰にも言えない秘密である。
また、上着を貸すときに「わざわざ貸してくれなくて大丈夫」と紅なりの配慮でひと悶着あったのだが、それはまた別の話。
「明日はそこの崖を下りて、遠くに見えた建物に行くつもりだ。夜明けと同時に出るつもりだからしっかり寝とけ。じゃあおやすみ、紅」
「あ、うん。わかった。おやすみ、ようた」
紅も少なからず眠たかったようで、トロンとした声で返事を返す。猫のように「くゎぁ……」と口を開けるのもそっくりだ。
その日の夜、洞穴の中では静かな寝息が響いていた。
「って俺も寝るわけにはいかねえな。コウが安心して寝れるように、ちょっくら見張りと行きますかね」
読んでくださってありがとうございます!
私だったら紅の寝顔をじっくりと観察しますが(ゲス顔)
え? 襲う? やだなぁ、そんなことはしません。……ほんとですよ?