夢見る都(13)
星稜祭の幕が壮大に開かれた。
二日間の星稜祭の日程のうち、演劇部の公演は二度行われる。一日目と二日目の午前中だ。
一日目の公演は盛況のうちに無事終わった。誰もが満足するできだった。
そして、二日目の今日、昨日と同じように翔子たちは衣装に着替えて中等部演劇部の公演チラシを配っていた。
翔子はドレスを着て、撫子も魔導士の衣装を着ている。
「撫子、昨日も言ったけど二人で回ってたら効率悪いでしょ?」
「言われたっけ、そんにゃこと? いーじゃん、いーじゃん、二人でいた方がインパクト強くてみんにゃチラシ受け取ってくれるよ」
そう言いながら撫子はすれ違う人たちに片っ端からチラシを配っていく。
翔子は自分たちの配っているチラシをまじまじと見ながら呟いた。
「愁斗くんと麗慈くんはこれでいいけど、私のこと少し綺麗に描きすぎだよ」
このチラシを製作したのも撫子だった。チラシにはメインキャストの三人が描かれている。それもかなりの画力で写実的に描かれていた。
「翔子が二人に負けにゃいように二〇〇%美化で描いたんだよぉ〜」
「それって私に失礼じゃないの?」
「ウソウソォ〜、翔子を見たまんま描いただけだよ。翔子は十分ビューティホ〜だよ」
翔子はチラシを顔に近づけたり遠ざけたり難度も見ていた。その時、チラシの向こうの景色にあるものを見た。
「……あれ、須藤くん!?」
翔子は行方不明のはずの須藤拓郎を人ごみの中に見た。
「どこどここ? いにゃいじゃん」
「本当にいたんだって……たぶん?」
「そっくりさんじゃにゃいの?」
「見間違えかなぁ……?」
公演の一五分前となり、急いで翔子と撫子はホールに向かった。
二人が舞台裏に行くと、すでに他の部員たちは揃っていて、いつでも公演が開始できる状態だった。
翔子は須藤を見たことを話さなかった。公演直前にみんなの気を惑わすようなことは言わない方がいいと判断したからだ。
「公演最終日、みんな悔いを残さないようにがんばりましょう」
隼人はみんなにニッコリと微笑を投げかけた。隼人の微笑みはみんなの緊張を解きほぐしてくれる微笑だ。
この公演が隼人と麻那にとって中学最後の公演となる。
公演を華々しく成功させて、二人を見送ってあげたいと翔子は考えていた。
「部長も麻那さんもがんばってくださいね」
演劇部を代表しての気持ちを込めた翔子の言葉だった。
徐ろに愁斗が包帯を取りはじめた。それを見た部員たちは驚きの表情をする。
翔子は愁斗に近づき目を丸くした。
「愁斗くん、腕平気なの?」
「治ってないけど、やっぱり包帯したままだと目立つからね」
「でも、怪我が悪化するんじゃないの?」
「だから、最終日まで外さなかったんだよ」
愁斗は微笑んだ。
いつもどおり隼人は大きく手を叩いて合図をした。
「よし、そろそろみんな準備して」
「「はい!」」
声を揃えて大きな返事をした。観客席まで聴こえてしまったかもしれないが、そんなことはどうでもよかった。悔いを残さなければそれでいい……。
星稜大学付属・中等部の演劇部による公演――『夢見る都』が開演した。