ローズアロマイヴ
「ギフト企画」に参加させてもらった作品です。
右、左、前、斜め、後ろ。
鏡の中の私は動き回ってポーズをキメ、笑ってキメ、俯いて上目遣いでキメ。
「よっしゃ。完璧じゃん?」
私は自己満足の笑みを浮かべて上着を羽織った。白い中綿が入ったジャンパー。最近買ったやつ。ふと見た窓の外にネコがいた。じっとまん丸な目で私のことを見つめていた。なんだよ、いいじゃん別に。自慢は自己満足の略なんだよ。
窓を開け、庭の岩に乗っかっているネコがニァウと舌なめずりをしているのを見て閃いた。
今日はクリスマスだから、なにかご馳走してあげよう。ドライフードじゃなくて一缶120円くらいの缶詰を買ってあげよう。
今日はホワイトクリスマスになった。庭の松の木や盆栽のボケにも冷たい綿菓子が積もっている。窓から乗り出した顔に冷たい風が吹き付けて鼻先が痛んだ。唇に落ちてくる雪を舐めとると冷たさが舌に染みた。うん、味はただの水。
今日はクリスマスイヴ。神が生まれた日の一日前。
今日私には約束があった。こんな日にするような約束ではないにしろ、少しは楽しみだったりした。特別何をするってわけでもないけど。
「いってきまーす!」
みゃん、とネコだけが欠伸まじりに鳴いた。
外の風景は昨日の面影を消し去っていた。消しゴムで消すように空虚な白に塗りつぶされている。ここら辺は田舎道でただ緑の並木でもない素のままの木が塗りつぶされてるだけだった。クリスマスっぽさは粒ほどもなくて、私はつまらないとも思うけど、最後には仕方ないかと納得した。
落ちてくる雪に寄り添うように風がふわふわ吹いている。雪には優しいのに私には冷たかった。
せせこましい住宅街に入り、近道のために塀の間を通った。溝と背中合わせになり、ブーツは狭い通り道を強く踏みしめた。
ドタドタドタドタ・・・頭のつむじの辺りに騒がしさがぶつかってきた。
「おかあちゃーん! 靴下もうつけるからー!」
「ケーキ食べたいー!」
子どもの声が二重に重なる。お兄ちゃんと妹が狭い家の中を走り回って飾り付けをしている。笑い声を聞きながら、私は目の前の道路と距離をつめる。
「っどら!」
細い通り道を張り詰めていた空気が吐き出されるように、私は飛び出した。目の前を車が通りすぎて心臓が固まる。
息をついて、歩きながら頭についた雪を払いのけた。押さえつけられた髪の毛は湿って崩れた。
「うわうわ・・・。最悪・・・」
前髪が眉間のシワの上に垂れる。
はぁ〜っと息を吐くと鼻の頭が冷たいことがよくわかった。きっと真っ赤だと思う。
私が色々と気にしながら行き着いたのは、住宅街と少し一線を画してしまった木造の古い家。玄関は風情のある引き戸。私は躊躇わずに引き戸を開けて上がりこんだ。おじゃましまーす、と一応言っておいたけど返事は返ってこない。これは当たり前。
この家はおかしい、と初めて入ったときから思っていた。廊下のど真ん中に山形の謎の意味なし階段がある。和室しかないし、買い取ったときの値段も安かったらしいし。
それを教えてくれたやつが言うには昔ここは芸者屋だったらしく、だから風情があり独特の造りをしているらしかった。
私はここがなかなか好きだった。木の匂いとか、廊下の奥にある和室とか。謎階段も慣れるっと結構いいかもしれない。その向こうにある部屋に用があるし、絶対に使わなければなんないし。
広い玄関でブーツを踏みつけて脱ぐ。こけなかったのがスゴい。誰かに見てて欲しかった。
謎階段を上ってギシギシと音を出してみた。木目が黒く汚れて、水滴を落としたようなシミもあった。こういうところも好きだったりする。
「え」
「あ?」
すると私は足を滑らせていた。最初に声をあげた目の前の男が細い目を見開いて口を半開きにしている。何もできずに私の背中はどんどん床と平行になっていく。落ちる、そのことも想像できないままに私は目を閉じた。
右手首が千切れた。確認しないままでそう思い込んで私は目を開けられないまま。
「お、おい。なぁ、ちょ」
男が肩を揺さぶってきた。やっと目を開けた私の前には男の顔があって、それは引きつって目が血走って、
「こわい・・・」
「かった、やろ?」
私は男に助けられていた。右腕を引かれて、ドラマのように抱きとめられていた。私は俯いて床の模様を見ていて、階段の頂上で鉢合わせした男に気づかなかった。そして、
「・・・・・・」
声も無いままに膝から崩れた。
男もしゃがんで私の顔を覗いてきた。男の顔はいつもと変わらずつまらなくて、どことなく尖った印象があった。
「大丈夫? いつの間に来てたん。ビックリするやろ」
「ごめん、ごめん、ビビッたー! ほんま、死ぬかとおもったべ!」
私のまなじりが悲鳴を上げそうなほど、さほど大きくもない目を見開く。目の前の知ってる顔はいたって冷静に、
「よかったよかった。とりあえず俺の部屋で待ってて」
そういって私の後ろを通り過ぎていく。
私はへ? とその心ない言葉にまた目を開いてその後脱力する。
「琴也ーーーーー!」
「はいはいあとで」
頭の後ろで手を振って琴也はメンドくさ気。その姿もすぐに消えた。
私の腰から下は幽霊にでもなったかのように感覚がない。腰を抜かすっていうのはこういう感覚なんだ。それでも私は壁づたいに向かいの階段を降りた。
降りた先には部屋は左右に二つしかない。右の引き戸を開けるとそこは琴也の部屋だ。
畳の上にガラスのローテーブルを置きそれを中央にして部屋は展開していた。小綺麗に整ってシンプルな空間は、私を迷うことなく寝そべらせた。
畳に敷かれたファーの肌触りを堪能して、私は上着を脱ぐのも忘れていた。仰向けに寝ころんだ顔に冷たい毛束が張り付いた。鼻筋を伝う水気を察知してその辺に手を伸ばし、掴んだ布を鼻にすばやく押し当てた。掴んだ布は琴也のシャツだ。薄い灰色の柔らかい手触りのシャツの胸の辺りに黒っぽいシミがにじんでいる。
「奈留実、」
「ん!?」
シャツを放り捨てて、寝そべったままで顔を向ける。琴也は戸口に立って真っ赤な何かを握りしめていた。
「もう行く? 雪降ってるけど」
「うん行く行く! はよ行こ、雪なんか傘差せば大丈夫やって」
私は飛び起きて琴也と入れ違うように部屋を出た。琴也は投げ出されたシャツを羽織った。
「え、なにこれ」
シミを見て困惑顔をして、ティッシュで拭いたが全くなおってない。最悪やこれ絶対後で変なシミになるし、とぼやいていたけど、ジャケットを羽織って隠すことにしたらしい。
私は廊下でヤベ、と顔を歪める。ごめん琴也。でも気づかれなくてラッキーだった。
私と琴也はよくある家が近いだけの幼なじみで仲がいい。大人で気だるい系、バラードの方が好きな琴也と、ガキらしくてロックが好きな私は波長があった。長い時間を掛けてのことだったけどそれはとても深まった。
「なんなんそれ? SM・・・?」
「アロマ! アロマのやつ。すきやねんこれ」
女の子らしい趣味のろうそくをバッグにしまう琴也と横並びで歩く。ふぅ〜ん・・・・・・と間抜けに間延びした私の返事はアホらしくて、思わずハナクソほじってしまいそう。そういう乙女チックなもんって私には縁がない。
今日は前に約束してた通り、琴也と買い物に行く。私らの足が向かっているのはデパートだった。
「サティじゃなくて、ジャスコだぜー!」
四角い建物が見えてきたとき私は調子に乗って走った。車道を越えて、一気に入り口までいこうとした。
大人な琴也は私のベルトを両手で掴んで引き留めようとする。私は反抗して杭につながれた哀しい犬のようにビンビンと引っ張る。
「離せやっ、こらっ!」
「危ないやろうが! 車っ」
―――っブぎゅううぅぅぅん・・・・・・・・・ 髪の毛の先をかすめたガンメタの軽自動車がクラクションを遅れて鳴らす。固まった心臓はデジャブに慣れたのかあまり動悸を起こさないでくれた。
「っくりしたぁ〜」
「だからゆったやろ。気をつけろよ」
コンと頭を小突かれて二人で一緒に車道を越える。明るい入り口に入るとほんのりと暖かくて私の頬の刺すような痛みもなくなっていく。
結局傘を差さずに来た愚か者、1,2はホッと息をついた。
緑と赤が目に暖かい装飾が至る所にされた店内は賑やかだった。中央のロビーにはクリスマスツリーが、雪に似せた綿とか、蛍光色の飾り付けがされてそびえ立っていた。いつもは見ないものに私は頭の後ろから釘で打たれたみたいに、本当に釘付けだった。空気中にふわふわ舞っているものが何か私は解った。つんつんと肩を叩いてくる手がいきなり勢いよく私を振り向かせて目を覚まさせる。
「なる、いつまでみてんの。はよ行こうや」
「わかんねぇの琴也? この空気中の窒素の割合よりも多くなってる、これ! 幸せが充満してますよ! この、KYめ!」
「なるって時々不思議ちゃん。行くで」
琴也はめんどくさそうに言葉をおいて歩き出した。置いてかれた私は走って追いつき琴也のジャケットの裾を手で跳ね上げて遊ぶように不機嫌を示した。後ろが思いっきり跳ねて馬鹿みたいなことになってるのに、琴也は恥ずかしくないのか平然と歩いている。こっちが恥ずかしくなってくるのでやめた。
「奈留実は何買うの?」
「えー・・・、あたしは、お父さんのプレゼントと、ネコのエサ」
事故に遭い三年前から植物状態のお父さんのことを、琴也も知っている。一瞬私を振り返って目があったことが計算外だったのかすぐに前を向いてしまった。
「なぁに? もう大丈夫だよ。よくなってきてるし、もう慣れた」
「そうか。今度俺もお見舞い行くわ」
意味がないことをするよなー、とか琴也は間違っても言ったりしないし思ったりもしない。気を遣いすぎないし、私がそういうのが苦手だってわかってくれてるからイイ。そこは昔から全く変わってない。
私と琴也は少し離れて自分の買いたいものを選ぶことにした。私はまずお父さんのプレゼントを、どんなのがいいか探すことにした。
お父さんが好きなのは松田聖子とラッキーストライク。こんな情報でクリスマスプレゼントを選ぼうとする私がバカなのか、ピンとくるいいものは見つからなかった。琴也もいつの間にか近くに居なくなってて、私は近くのベンチに足を組んで座った。
目の前にはケーキ屋さん。甘い匂いはさほどしない。メリークリスマスとチョコでデコレートされたケーキを楽しそうに眺めているのは、家族連れよりカップルのほうが多い。
お父さんが娘の手を引く微笑ましい家族より、カレシと腕を組んで、見てみてぇこれカワイー! とはしゃいでるカップルのほうに目がいってしまう。単純にたのしそうだった。聖夜に大好きな人と二人きりで過ごすっていうのは二十歳とかの憧れじゃないだろうか。ホントに幸せな、思い出に残る日になるんだと思う。
私は若いしまだそんな経験はないけど、時々妄想する。高校生になってカレシがいたら、こんなふうに楽しく過ごすこと。でも本当に起こる気がしないのはなんでだ。
息をいくら吸い込んでも甘い香りはしない。匂ってくるのは女の人の香水の残り香。そして喫煙室から流れてくる微量の悪質なモク。
私は立ち上がって、ケーキ屋さんの隣の古着屋さんに入った。適当に、安い物を二、三枚買って出口へ向かう、その途中、
「あ、聖子ちゃん・・・・・・」
ガラスケースの向こうに微笑んでいる、永遠のアイドルのグルグル巻き髪を発見した。
一旦外に出て戻ってきた私は琴也と出会うことができた。琴也はカフェのテーブルに座って待っていた。その足下には紙袋が置かれていた。
「何買ったの?」
座りざま、紙袋を指さして私は尋ねた。
「母さんに、髪留めと扇子。それと肉とか食材」
「扇子とか高くない? ・・・お父さんにはないんや」
「安もんやでこんなん。金ないし・・・。・・・なるもお母さんの分買ってへんやん」
前に買っといてん、と言って私は欠伸をした。テーブルに置いた私の小さな袋を琴也は見て、
「お父さんの? これ」
「うん。これ買った」
袋を開けて琴也に中身を見せた。琴也は見て、片方の頬をポコッとすこし膨らませた。私が見つめていると、
「それ買ったんだったら、これ使えば?」
そう言ってポケットからクリスマスカラーのメッセージカードを取り出して、私にくれた。
「どうしたんこれ?」
「そこで無料で配っとった。お父さんへのメッセージ、なんか書きなよ」
琴也も自分の分を書き始めた。
青のペンを握って、私は一瞬迷ったあと書き始める。結構こういうのを書くのは好きだった。
「できた。・・・・・・『メリークリスマス いつもありがとう』か。ふっつうやな〜〜〜」
「読むなよっ。お前―――――」
―――――チャラララーンタンタンタンチャラ・・・・・・
12時の合図にロビーの時計塔からメロディが流れ始めた。大きい音の中に琴也の声が混じって聞こえてきた。もう帰ろっか、と。私もうん、と頷いて、テーブルから立ち上がった。
「そういえばさぁ、どこ行ってたん、出て行きよったけど」
「見とったん? ・・・これ買いに行っててん」
昼は暖かく、雪も溶けて歩道は水浸しだった。その中をビシャビシャと歩きながら、私はポケットからラッキーストライクを取り出した。
琴也はえ、と声を漏らして私の手のひらの上のをまじまじと見つめた。
「タバコなんか、お前、プレゼントォ? 何考えとんねん」
「いいじゃん別。お父さんこれ好きなんやねんもん」
家では吸っていなかった。意外と気遣いができるお父さんは仕事の帰りに吸っていた。小さい頃、玄関先で出迎えた私を抱きかかえるお父さんからはいつもタバコの苦い香りがした。お父さんの匂いだからか、タバコの匂いはキライじゃなかった。
「忘れかけてるなぁ。タバコの匂い。お兄ちゃんもお祖父ちゃんも吸わないしさぁ」
お父さんの匂いも。
しばらくクリーンだった私の中に、久しぶりに黒いものを呼び入れたい気分だった。お父さんに渡したら吸ってくれるだろうか。
私の手の上のラッキーストライクはこのあとどうなるだろう。ポケットに仕舞おうとしたときだった。琴也がタバコを掴み取った。
「おっ! 何?」
「いっぽん、ちょうだい」
琴也は言って一人で早足に歩いていく。水たまりを器用によけて、民家の裏手にまわった。タバコの封を切り、一本口にくわえる。
「なにやっとんねん! 琴也っ!」
「ライターもっとんねやろ?」
追いついてきた私のポケットに勝手に手を突っ込んでライターを取り出して、タバコの先に火を付けた。
なかなか慣れた様子に私はビックリしていた。琴也がタバコ吸うようなヤツだなんて、思いもしなかった。琴也は特に何も感じさせない無表情で、700度の熱に浮かされたタバコを燻らせている。
細い煙が空気に吸われていく。
「琴也ってタバコ吸うん?」
私は近づいて琴也の足下も石の上に座る。見上げながら聞いた。
「時々、兄貴が吸うし。別に美味くはないんやけどつい吸いたくなんねん」
「悪いヤツやな。ほんま」
指先で摘んで唇から離す。白い煙は私のところまで舞い降りて、あの匂いが香る。
苦い、鼻の奥が空気清浄機の苦悩を語りだすような凝った匂い。懐かしかった。
「たくも吸うんちゃうん?」
「いいやぁ。将来ホストになるとか言ってるヘボやけど、健康第一やしな。コンビニ飯もためらってる」
「ははっ。ナルとホストかぁ〜、合うわぁ〜」
「うっさいなぁー」
そういえば、拓史は今日どうするって言ってたんだっけ。メールはきたような気がしたけど、覚えてない。見るのも面倒くさい。まだちょっとこうしてたかった。
「今日はたくとデートせんの? イヴやで?」
短くなっていくタバコは燃え尽きる分灰を落としていく。
「今日はぁ〜・・・ないと思うわ。たぶん」
「誘ってみれば?」
「うん、まぁそうしょっかな。ちょっとくらい会いたいよな。さっきプレゼントも買ったし」
「うんうん、そうしぃ。イヴやもん」
もう吸えなくなったタバコを捨てて、琴也はラッキーストライクを返してくれた。ライターを私のポケットに突っ込んでから、几帳面にコートを手で払ってシワを伸ばしていた。
琴也は全身お父さん臭くて、いつもと違うことに私は不思議な気分だった。
私たちは歩いて、ある分岐点で止まる。
「じゃあな。あ、メールちゃんとせぇよ!」
「うん。バイバイ」
手を振り合って、私は止まったまま。
琴也の背中を見つめて、ケータイの無機質な冷たさを握りしめた。
お父さんの病室にはいつも花が飾られている。お母さんが仕事帰りに寄って変えているからだった。
痩せたお父さんの顔はかっこよかったけど、3年前とは別人のようだ。ピコンピコンと小さく、私の耳にも聞こえてくるお父さんの心臓の音の代替。静かすぎるほど静かで、時間を忘れる。
枕元の机にプレゼントを置いてみた。
それは聖子ちゃんが笑うブロマイドが入った写真立てで、脇に控えめに私が書いたメッセージカードが入っている。
メリークリスマス きっとあなたが目覚めるのはこの季節
あしたかえって来てください なるみ
思わず気取った文章にしてしまったこのカード、お母さんとかに見られたらどうなるだろう。想像して、でもつかなかった。結局そのままにして、聖子ちゃんの微笑みをお父さんに向ける。
私のジャンパーもお父さんの匂いがした。この匂いは私のものだった。
ポケットで燻っているラッキーストライクを取りだしてみた。
一本だけラッキーストライク。唇にくわえて鼻の奥の残り香を味わう。指をかけた腕は温かくて、私の息は震える。
「メリークリスマス、」
ガラッと開けた家の中もがら〜んとした雰囲気だった。冷たい空気がむき出しの太ももを冷やした。
私はズカズカ上がり込んで謎階段に座り込む。後ろからギシギシ悲鳴じみた音が聞こえる。
「なにしとんのお前っ!? たくはっ?」
「えーねんもうっ。メーリークリースマース!! はいっ」
困惑する琴也の胸に、古着屋さんで買ったプレゼントを押しつけた。その中身はシャツ。汚してしまったお詫びのつもりだった。
琴也の顔を眺め、お父さんを想う。違うのに、同類だから被ってしまう。そして。
この前ニュース番組でやってたこと思い出した。思い出す前にも、思っていた。
「このごろクリスマスは家族で祝う人の方が多くなってるんやって。元々は外国もそうで、恋人でー、とかは日本だけねんて。だから、今日と明日はここで祝う。どうせどっちも親おらんねんし」
「そうやけど、ケーキとか買ってへんしさぁ・・・・・・」
「あー・・・、ええやん! まあ、パン・・・とかでなんとかしよっ」
「地味リマスやなぁ・・・」
立ち上がった私の足下で重たい音がした。見下げるとネコの缶詰がひとつ転がっている。
「あー! ハルイチにエサやってへん!」
「はぁ!? かわいそうに・・・。こんな日にエサなしかよ・・・」
「・・・やりに行く」
「俺も行くわ・・・」
玄関に向かう足は疲れを知らない。家に帰るとなんか特別なことがあるような気がして胸がいっぱいだった。
期待するのは悪いことじゃない。昔からサンタはお父さんだと決まっているから。
一歩外に出ると冷たい空気が鼻の奥を突いた。
琴也の隣に並ぶと花みたいに濃厚ないい匂いがした。自分の部屋で一人、アロマキャンドルをモワモワと焚いてたんだろうか。
甘い、タバコとは天と地の差で甘い香り。
腕に絡ませた指は温まって、私の息は弾んだ。
家族を描いてみました。よくわからないですが、なろうと思えば誰でもなれる、とか・・・そんな感じです(>、∩)
思うことはみんなそれぞれですので、あまり書かないことにします
全然なってない文ですが、読んでくださってありがとうございました。