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君の瞳に俺を写していて欲しい





 池に向かい手を伸ばすリルスを強く抱き締める。


 


 何処に行ったのか考えた筈が、自分は彼女が行きそうな場所が思い浮かばないのだ。

 巡回の折に見掛ける時は、大抵食材の買い出しだろう野菜を手に取り選ぶ姿や家に居るときは刺繍や編み物をしているようでぽつりぽつりと彼女が手掛けたのだろう膝掛けや無地だったタオルには花の刺繍が施されて。



 ふと畳んである洗濯物の一番上、赤い薔薇の刺繍がされたハンカチにふと思い出す。騎士学校へ入学する前日、挨拶をしに行き彼女を森の中に以前父と見つけた小さな池のある場所へと連れ出したのだ。静かな中、池に写る景色や風に舞う野花達、隣に立つ彼女も見魅っているようだった。帰り際に、暫く会えないのかと自分の背にそっともたれ掛かる彼女から離れるのだなと改めて感じて、彼女の手を取り唇を寄せている自分がいて。しまったと思った、触れた手の温かさにくらっとしてしまっていたが、驚きのあまり腰を抜かした彼女を横抱きにして家まで戻り、彼女の父親にチクチクと牽制されたのは仕方のない事かと馬車の中で父と苦笑いしたんだ。




 気付けば、走り出していた。

 


 そこに居る確証なんて無い、無いけれど足はそこ以外向きはしない。森を駆けてあの場所へ。

 




 雲に隠れた月がまた顔を出し、辺りに光が差してきた。掻き分けた背の高い草の先、月の明かりに反射する水面へと手を伸ばす彼女が居た。駆け寄って、自分の方へ抱き寄せて、小さな声で何処にも行くななんて。

  手を伸ばす彼女が消えてしまうんではないかと思った、月の光に照らされてそのまますぅっと居なくなってしまうのではと言い様のない不安に堪らずこの腕に捕らえてしまわねばと。一度触れてしまえば片時も離せなくなるのだろうと厳重に自分を自制していたなんて笑ってしまう。



 「さようならなど、言うな。‥‥‥リルスしか、傍に置きたくない。君の隣は俺だけだ‥‥教会で誓っただろう」


 「‥‥‥‥わた、私はっイスール、様が目も合わせたく‥‥ない程、触れ合いもしたくない、ものでは‥‥ないのですか?」


 「そんな訳があるはずないだろうっ、ずっと大事に、大切にしてきた君に触れたくないなどと!‥‥‥‥瞳を見れば抱き締めたくなる、触れてしまえば片時も離したくなくなる、誰の目にもふれさせたくなくて君を家から出したくなくなる‥‥こんな気持ちは、重荷になるからっだから、今まで‥‥蓋をして必死で触れるのさえ耐えたのに、それで君が居なくなるのなら俺はっ」




 吐き出した気持ちは昔より強くなっている気がして、きつく締めた蓋を開けたとて、君が居なくなる位ならば全部さらけ出す事さえ構わない。それだけ俺には必要なのだ。 


 半ば叫ぶように吐き出した俺に、腕の中の彼女は先程よりも顔を涙に濡らしていて、小さな肩は震えていた。

 俺自身でさえ時にはもて余す程のこの想いは、彼女にとって恐ろしいものだろう。そっと腕の力を緩めて離れようとした、くるりと彼女がこちらを振り返り、未だ流れる涙もそのままに口にした。




 「私は、イスール様と‥‥‥共にっ居たい、の‥‥ですっ傍に、居たいっ」




 真っ直ぐに俺を見つめる彼女の瞳が、俺を捉えて離さない。

 この歪な想いを聞いてなお、共に居たいと傍に居たいのだと真摯に言われてしまえばもう駄目だ。堰を切ったように涙に濡れた彼女の顔中にキスをする、緩めた腕さえきつく抱き締め直す。


 もう離せはしないと最後に一つ唇に触れた。




 

ちょっとした小話としては、リルスちゃんに突っ掛かっちゃった子達は皆しっかりニコニコ笑顔のイスール様にグサグサ切れ味鋭い言葉のナイフにて成敗なのです。


 さらっと読めるスカスカ設定の拙いものですが、読んで頂き感謝です。ありがとうございました!

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