人物 <挿絵>
黒蛇
年齢不詳、長身痩躯の優男。
この国では一般的な黒髪。スタイルの良さと甘いマスクを武器にする事もあるが、普段は他人の視線にあまり関心が無く同じような衣服ばかり着ている。物怖じしない剛胆な性格だが、隔月で行われる祚教の集会には欠かさず出席する几帳面で信心深い一面もある。
命脈の法は「隠匿」。
情報を隠す能力であり、その本質は命脈の力を以ってあらゆる命脈を遮断する事である。いつ、どこで習得したのかは一切不明だが、命脈の法としての完成度は非常に高い。
この力を用いて、祚教をはじめ眠り知らずの街に根城を置く非合法組織からも内通者として密命を受ける事があり、それを生業に生活している。その交友関係は広く、上流階級の紅民や権力者の老人とも繋がりがあることを匂わせる。一方で、仕事以外では好んで孤独に過ごす事が多い。
飲食について凄まじいこだわりがあり、それが彼の逆鱗でもある。中汪市の大衆料理屋「幸幸軒」の常連客で、特に辛いものが好き。その理由は「生を実感できるから」。罵倒されると喜ぶハードMな一面もある。
天紅姫
祚教代表である天家の孫娘。
絶世の美貌の持ち主で、祚教入信者からも人気は高い。黒髪の長髪は艶があり、幼少期から叩き込まれた気品ある所作と相まって祚教の珠と称される。こうあるべき、という理想を与えられ続け成長してきたため自己肯定感が低く、自分に自信が無い。そのため人を攻撃して自分を高く見せようとする臆病さもある。
命脈の法に頼って生きていたため、私生活において人との距離感を掴む事が不得手。
命脈の法は「理解」。
命脈の力を以ってあらゆる対象への相互理解を促す。しかし周囲からの期待や、祚教の跡継ぎという重圧に耐えきれずハーブを吸い始め、今ではすっかりハーブ狂いになった。周囲に失望される事を恐れ、この事は秘密にしていたが、ある事件と遭遇し一部の人間に明かされてしまう。生粋の賭博好きだが儀式の期間中は莉珠に止められ、悶々とした夜を過ごしている。
ハーブや怠惰が原因となって命脈の法の力が失われてしまったが、調子の良い時は命脈の法を使えることもある。黒蛇の「隠匿」によって生まれて初めて「理解」を拒まれた事がきっかけで、黒蛇という人物に興味を持ち始めた。
莉珠
異国の娘。天紅姫の近衛であり親友。
小柄でありながら、その膂力と護衛としての才能を買われ現職に就いた。
命脈の法は「刺突」。
しかし異国の生まれであるため命脈の法を上手く扱えず、専ら武術剣術拳銃といった武力を用いる。職務中は一切の私情を挟まないが、非番の間は天紅姫と出掛ける事もしばしばある。
未だに将国語が苦手で内心それを恥ずかしく思っている。上手く言葉が出ない時など、焦ってとんでもない事を口走る癖がある。今回の巡礼にあたって、教師役として宰相にも同行してくれるようお願いした。
天紅姫のハーブ狂いには気が付いているが、命脈の法によってそこに至る感情も相互理解が成されているため、あまり強く注意する事が出来ないでいる。言葉が苦手なため「理解」には感謝している一方で、止める事が出来ない現状をもどかしくも思っている。
宰相
筋肉魂。天紅姫のお目付役。本名は伴。
細マッチョで鍛え抜かれた身体に一切の無駄は存在しない。
儀式の巡礼にも同行しているが、密かに各地で筋肉的宿敵を見つけるという目的も兼ねている。
普段から暇を見つけては莉珠に将国語を教えているため莉珠からの信頼は厚い。その一方で莉珠との腕相撲に一度も勝利出来ていない事を気にしており、心の中で彼女を生涯の宿敵と位置付けている。
その命脈の法は公にはされていない。
歯車
訛りの強い軽薄な男。自称、自営業の商人。
しかし時折見せる凄味は只者ではない事を伺わせる。口が達者で、美人に弱い。
天紅姫の秘密が知れることになった事件現場にも居合わせており、黒蛇達と同行することになる。
気さくな性格で輪の中に打ち解けるは得意だが、天紅姫のことはどうにも好きになれないという。黒蛇とは食についてよく熱い議論を交わす仲で、時折衝突もするが彼の事を仲間内で一番認めている。
武器として煌びやかな装飾の青龍刀を腰から下げているものの、実際の戦闘でそれを抜いた事は無い。
亡霊
百年に一度行われる儀式は、はるか古に命脈の法によって生み出された亡霊を鎮めるためだという。尤も、現在では形骸化した概念であり、人々は単に祚教のお祭りであると認識している節もある。
今回の儀式においても、各地を巡礼し祚教の布教や慰安に努めるはずだった。
しかし、亡霊が実際に被害を及ぼしているという風の噂が広まり、祚教総本山は騒ぎを抑えるため急遽予定を変更し、最新の目撃地点である中汪市へと天紅姫一行を向かわせることになった。
天老公
祚教の現代表であり、天家の族長。
齢はゆうに百を超えており、前回の儀式にも参加していた。年齢不相応の活発さで、たびたび抜けだしては周囲に迷惑を掛けているが本人は気にもかけていない。
息子との仲は悪いが、孫娘は溺愛している。ことあるごとに天紅姫への支援を申し出ているが、天紅姫はハーブの件で後ろめたさがあり全て断っている。その度ショックを受け姿をくらますため、年々屋敷の警備が厳重になっていく。
更新
7/30 挿絵追加