あらすじ
中汪市の郊外、あらゆる欲望が吹き溜まる夜の歓楽街・眠り知らずの街に、獣は姿を現した。
名は黒蛇。年齢不詳、長身痩躯の優男。こんな街に居る優男なんて、当然真っ当じゃない。
叩いて殴ってジャンケンポンで人を黙らせる、ここらの流儀ってものをよーーく分かっている人間ね。ただ、黒蛇がそこらのグズと違ったのは、命脈の法「隠匿」を持っているというところ。しかもその師範ときた。
命脈の法っつうのはまぁ、そいつそのものと言って良い。祚教の教えによれば、誰もが一生を掛けて極めるべきとされる不思議な力だとか。使い方を間違えれば霧になってしまうとかなんとか。ざっくり言っちまえばこの街では人間の価値を決めるものだ。持つものか持たざるものか。使える奴かグズか。あんまんか肉まんか。どっちにしろ裏社会では食い物にされる事も多いけどな。ちなみに祚教で功徳を積んだり、金を掛けて訓練したりすれば近道早道で習得出来たりもする。いいね。そのあたり、ヒジョーに現実的で嫌いじゃない。命脈の法の生みの親はよーーく分かってる連中だ。
では黒蛇は祚教の敬虔な犬か? それとも非合法組織に金を撒いたのか? あいつに関しては何ひとつ定かじゃない。「隠匿」が全てを包み隠して、その過去を路地裏の闇に溶かしちまうんだ。そう、だからどいつもこいつも黒蛇の情報を嗅ぎまわっている。あいつは今や街の人気者だよ。
そんでもって、ここからが本題。そうだよ、あんたの大好きな情報って奴だ。
とある筋から密命を受けた黒蛇は、このとき偶然にも祚教代表の孫娘、天紅姫の命脈の法が失われている事を知ったらしい。そして天紅姫の共犯として百年に一度の儀式を影で演じながら、その秘密を全国民から隠しおおせるという大役を任されることになり……。
へへっ、もちろん信用するかはあんた次第さ。あと、こっから先は貰うもんを貰ってからな?
謎の敵対勢力、儀式に隠された意図、命脈の法の真実うんぬんかんぬん。
陰謀渦巻くスリル・クライム・アクションが、いま時を刻み始めるってわけね。