序章 《死にゲー》
また、ダンジョンの死亡率EXも伊達ではなかった。
モンスターを狩った場合その死体は一定時間後光の粒子になって消えてしまう。
それが続くと最終的にモンスターがいなくなってしまう、それを防ぐためにリスポンというモンスターの復活が用意されていた。
そのダンジョンの敵の数が一定未満の場合、モンスターがある条件のもと復活するというものだ。
その条件の多くはダンジョンから出ることだったが、中級以降のダンジョンでは時折特殊リスポンと言われるものが用意されていた。
それは一定時間ごとに敵が復活するというもの。
この特殊リスポンは百のダンジョンを回って1つあるかどうかというものだがその性能は恐ろしいものだった。
私もとあるダンジョンでそれに出くわした時は全力で逃げ出した、そして後ろから串刺しにされた。
このゲームにおいて、一体の敵を倒すのに中級に上がったばかりならおよそに一分、なれてくれば三十秒、上級者なら十秒といった具合になり、初級者がうっかり迷い込んだら五秒もたない。
それに対してリスポン必要時間は十五秒。驚異的なスピードだ。
中級者として馴れた者でも三十秒かかる敵が十五秒に一体湧き出てくる。
「一体倒したら二体に増えていた、何を言っているかわからないと思うが(ry」
という書き込みがあったほどだ。
そして敵の数の上限は普通の場合、多くて1部屋五体程度だが特殊リスポンは1部屋二十体。
四倍だ。この和数ともなると上級者でも死ぬ可能性がある。
ゲーム中最高クラスの鎧と、最高クラスの武器があって初めてまともに戦えるレベルだ。
この特殊リスポンは一定時間経つとりスポンが止まるがそれまでは敵が無限に湧き出るので注意が必要だ。
また初級のダンジョンにも罠は張り巡らされている。
例えば先ほどの[マスターキー]で鍵のかかった扉を開けたとしよう。
鍵がかかっているということはその先に重要なもの、もしくは強大な敵がいることになる。
《死にゲー》みおいてその割合は敵の場合が8、アイテムの場合が2である。
そしてこのアイテムが軒並み強力なため欲に駆られた者たちは強者に狩られることになる。
この出来事が[マスターキー]が出たらリセット推奨という名言を生み出す決定打となってしまった。
町でもダンジョンでも違った意味で使えないアイテムとしての立場を不動のものにした瞬間だった。
また初級ダンジョンのトラップとして代表的なものが製作者の悪意その物であったというのは恐ろしい話だ。
実を言うとこのゲームはチュートリアルに当たる脱獄を終えて、初級ダンジョンに潜れるようになってからもチュートリアルが続いている。
これは「脱獄まではゲームについての、初級ダンジョンは製作者の悪意についてのチュートリアル」と言われている。
例えば、バレバレの落とし穴が仕掛けてあったのでよけた先に別のトラップがあった、だけど落とし穴も必殺の罠だった。
というのは序の口、毒矢のトラップに引っかかったがうまくかわした、そしたらその矢が別のトラップのスイッチを押した。
天井がゆっくり降りてきたので部屋から出た、その先の天井がすごい速度で落下してきた。
穴があったので飛び越えたらしたから槍が出てきて串刺しにされた、微妙に体力は残っていたが串刺しで身動き取れない、そこに毒矢が前後左右から迫ってきた。
トラップを解除したら解除することがスイッチで、四方八方から火炎瓶と火の魔法が飛んできて焼かれた。
などプレイヤーを人間不信にするには十分すぎるものだった。
また職業というものがありその中にはシーフ、盗賊があって彼らの特殊スキルには【罠無効】というものがある。
これはトラップを発動させないというものだが、これも地雷だった。
盗賊は動きが素早い代わりに防御、体力、攻撃力が低めになっている。
そのため剣士など体力や防御に優れた職なら生き残れるトラップでも即死する可能性がある。
それを避けるための措置と考えられていた。甘かった。
すべてのダンジョンに仕掛けられているトラップはランダムで、出入りするたびに配置も種類も変わってくる。
そしてその中に最低でも一つ、【スキル無視】という特性を持つトラップが仕組まれている。
このトラップは上記の【罠無効】や、本人の防御を一定時間上昇させる【ガードアップ】などの効果を無視するもので、警戒しながら進めばかわせないこともない。
しかし、【罠無効】状態の者にとって罠は発動しないものと認識されているため突っ走るなどをの行動に出てしまい、引っ掛て即死させられるというパターンが相次いだ。
またこの【罠無効】は本人にしか効果がないため、被連れていた仲間やモンスターが罠に掛かり、その罠がほかの罠のスイッチを押すという連鎖を起こすなどの事故も報告されている。
まさに逃げ道だと思っていたところに本命の罠を仕掛ける《死にゲー》らしい精神的トラップであった。
さて、長々と説明をしていた理由をそろそろ書いておかなけらばならないだろう。
私、桐山雪はこの《死にゲー》の世界に迷い込んでしまった。