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序章 《死にゲー》

バグゲー、クソゲー、死にゲー、ネタゲー、神ゲーetcetc

この世の中には様々なゲームがある。

それは上記の方法で、もしくは新しい呼称で呼ばれるようになり、人々を楽しませる。

実のところゲームという物はプレイヤー、つまり消費者を楽しませるべきものだ。

私にもそう思っていた時期がありました。


私はあるゲームにであってその考えを変えざるを得なくなった。

《death game》というそのゲームは文字通りの意味で死にゲーであり、通称もまた死にゲーである。

死にゲーというのは制作者の意図にかかわらず、プレイヤーの脂肪率があまりに高すぎるゲームを指すものであるが、この《死にゲー》に関してはその通称すら生ぬるかった。


こんな話がある。

ある製作者サイドの人間がインターネットの大型掲示板にこう書き込んだ。

死にゲー?いいえ、我々製作者によるジェノサイドです。

この言葉に廃人プレイヤー、ドMプレイヤーは沸き立った。

ジェノサイド、大量虐殺、つまり死にゲーという方程式が彼らの頭の中で成り立った瞬間だった。

それからしばらくの月日が過ぎ、あるテストプレイヤーがお内掲示板にこう書き込んだ。

チュートリアルの死亡率が百割、開始直後の死亡率が三百割、最初に行き着くであろうダンジョンと街中での死亡率がどちらもEX。

これに対する掲示板の住民の反応はと言えば冷めたものだった。

小学生からやり直せ、チュートリアルで十回も死ぬわけないだろう、街中がダンジョン並みに危険とかなんだよ。

などなど各々に好き勝手に野次を投げた。

それに対するテストプレイヤーの反応もまた冷めたものだった。

やればわかる。この一言を残してそのテストプレイヤーは消えていった。

私はこの書き込みをリアルタイムで見ていてなにか恐ろしいものの片鱗を見たきがした。


それからさらに月日は流れ、ついに《死にゲー》の発売日となった。

……その日の夕方、掲示板にはこんな文章が踊っていた。

「おいテストプレイヤー出て来い、チュートリアルで死亡率百割とか嘘じゃねーか」

確かにウソだった、初見死亡率は軽く見積もって二百割入っていた。

つまりチュートリアルで二十回は死亡する。

「街中の死亡率がダンジョンと同じ?街中のが死にやすいんだけど」

主人公は囚人でそこから脱獄する、という部分がチュートリアルである。つまり脱獄犯というわけだがそんな人物が街に行くと確実に憲兵もしくは町人によって捕獲される。

最悪彼らの剣によって貫かれる者もいる。さらにひどい場合は憲兵から逃げた先で石を投げつけられて殺されるというパターンもある。

それ以外にも多くの罠が仕込まれていた。


初期装備の中に[女神の贈り物]というアイテムがある。

このアイテムを使用すると特別なアイテムを一回だけ取得できる。

その内容はランダムで、体力全快の薬だったり、少し強めの剣だったりする。

しかしここにも製作者による罠が潜んでいた。

「おいなんだこのマスターキーってアイテム」

掲示板に書かれた一文である。

《死にゲー》の世界では様々なスキル、能力がありその中に開錠というものがある。

鍵開けのスキルは宝箱や他人の家の鍵を開けると上達するもので最高ランクは5だ。

しかしランク5となると王族の城や貴族、上流階級の家、高難易度ダンジョンの宝箱位にしか使われないのでほとんどのものが育てないスキルだ。

そんな世界において救世主と思われた[マスターキー]というアイテム。

ランク2までの鍵ならどんなものでもあけてしまえるというものだ。

ランク2の鍵ならば一般家庭の家、初期ダンジョンの宝箱程度しかないがその実半分ほどの鍵を解除できることになる。

ここに罠が潜んでいた。

このアイテムは自動的に使用されるもので、鍵のかかった扉を調べると勝手に使用してしまう。

これはそのうち説明するがどの家にも不正侵入防止のトラップが仕掛けられているが、これは鍵を使用しての侵入ならば発動しない。


しかし考えてみて欲しい、私たちの生活でも適用されているルールを。

つまり家宅侵入罪というものの存在を。

無許可で他人の家に入るとその人は罰せられてしまう。そのためうっかり鍵がかかっているアイコンを見逃して扉を調べると不法侵入とみなされその家の持ち主との友好度が下がる。

この友好度は高ければアイテムを譲渡してくれたり、無償で宿を貸してくれたりと助かる。相手によっては犯罪を見逃してくれる場合すらある。

しかし逆に友好度が低いと、石を投げられる、剣を抜いて威嚇される、いきなり殴られる、罵倒される、最終的には殺される。

普通この友好度は毎日挨拶をする、プレゼントをする、依頼をクリアするなどして高めるのだが駆け出しがそんなことをしているはずもなく、街に行ける段階になっても友好度が低いことが多い。

そのため不法侵入をすると、剣を抜いて斬りかかってくる、どこからか取り出した石を投げてくる、家具を投げてくる、家から出ても追いかけられる、憲兵に助けを求めると不法侵入したことで犯罪者という扱いを受けて大人しく牢屋に入るか、罰金を払うか、ここで死ぬかという三択になる。

ひどい時は問答無用で斬り殺される。

うまく牢屋に逃げ込んでも刑期を終えて出所した瞬間に不法侵入した家の家主に襲われるなどのおまけもある。

つまり[マスターキー]は初心者にとって地雷になってしまうのだ。


他にも街中はとても危険だ。

「鍛冶師の仕事観察してたら走り回ってる子供にぶつかってよろけた。そのまま溶鉱炉に落ちてとかされた」

「兵士が弓の練習をしてて流れ弾にヘッドショットされた」

「女の子におままごとに誘われたので参加した。毒草と泥団子食わされた」

「おままごとは誘われても断らないと死ぬぞ、毒草と泥団子拒否したら泣かれてその街の住民の友好度が急降下した」

「鍛冶師見習いの手からハンマーがすっぽ抜けて俺に直撃した」

などなど、死亡率EXは伊達ではなかった。

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