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こちらは短編連作メリガちゃんシリーズの第三弾となっています。

『ぶっ放せ、メリガちゃん!』『ぶっ放せ、メリガちゃん!vol.2』からお読みいただくとお話がわかりやすいです。

バジー国Φファイ-1地区、通称ゴールディストリート。


さて、バジー国はαアルファからΩオメガまで大きく分けて全24地区で構成されている。

その中でまた“α-1”などと仕分けされているのだが、今回は24地区そのものについて。

24地区内、後尾から四番目までの21地区 (現在地) のΦファイ、22地区──通称眩惑の都ダズリウムと呼ばれるΧキー、23地区──通称水の都アクアリムと呼ばれるΨプシー、24地区──王の領域キングダムであるΩオメガの計4地区は王貴族の居住区であり、後ろに行くに従って位は高くなる。

つまり、Ω地区にはその名の通り王城が鎮座ましましているわけだ。

では何故Ω地区ではなくこのΦ地区が通称黄金通りゴールディストリートなのかというと。



「ちょ──────無駄金」



先日購入したモデル体型に似合わないゴツくて大振りな機械式銃剣マキナガンブレードを担ぎ上げながら、隣を歩く相方メリガちゃん──こと、メリガ・チャムが呟いた如く、まさにここは無駄金をフル活用した“黄金通り”なのである。

ここは寧ろ、黄金都市ゴールドシティと呼ばれなかっただけマシなのだろうか。



「こいつらはさー、わかってんの?庶民の税金で暮らしてんだってことを理解してんの?してないっしょ、してないよね?ああ?してんのかって聞いてんのよ“ゾルィ……なんちゃら”さんよう!?」

「……すみません」



そして彼女はやっぱり、堂々と根に持っていた。

絡み方がどこぞのチンピラみたいでこわい……しかもまだ、名前ちゃんと覚えてないし……いいんだ、期待はしていない。

……他と比べたなら、そんなに長い名前じゃないと思うんだけどな。

しかも俺に至っては完全に自活しているわけだから、そんなに睨まなくても……。



「メリガちゃん」

「だからメリガちゃん呼ぶなよ!」

「ああ、うん。あのさ、俺達、組んでどれくらい経つか覚えてる?」

「あー?」



よいせっとばかりに銃剣ガンブレードを担ぎ直したメリガちゃんが、久しく使ってなかっただろう脳味噌をフル回転させて「うーん……?」と唸る。

この際、語尾に付いた疑問符については気にしない。

そしてしばらく後、メリガちゃんの脳味噌はようやく答えを弾き出した。



「わたしが10歳のときからだっけ?」

「!」



思わず嬉しさに顔が輝いたのが自分でもわかった。



「にやけるような話だっけ?」

「……違うよ、嬉しさに笑顔になったんだよ」

「同じじゃん」

「……うん、そうだよね」



言葉のレパートリーのなさを完全に侮ったよ。


つまりはそんな幼少期 (と言うか出会い頭) から連れ回されて (決して自主的ではなかった) 結果的に無理矢理自活の道を歩まされたわけだと言いたかったのだけど、もちろん、それが伝わるはずもなく。

付け加えるなら、そんな山あり崖あり (谷なんて甘い) な人生の過程でしっかりと学歴をも物にした自分は結構な頑張り屋さんではなかろうかとも思ったりするわけだが、やっぱりこれも哀しいかな──伝わることなぞ皆無で。


……やめよう、不毛だ。


まだ目的地に到着さえしていないゴールディストリートの入口で、すでに、メンタルにダメージを負った俺だった。

負けちゃだめだ、こんなことで負けてはいられない!

誰にともなしに挑むが如く見据えた先には、長く長い目が痛くなりそうなキラッキラ通りが続いていて──やっぱり少し、負けてしまったのは……俺の所為なのかな……。



「ほら、さっさと歩けボンボン!」

「ボンボンて言わないでよ……」



空気を読まない (そして読めない) メリガちゃんにまでがっつり抉られる。



「しっかしねー、こういうとこの人がわざわざ優者ゆうしゃギルドに依頼って、何なんだろ」



純粋に疑問を口にしたメリガちゃんが首を捻る。



「貴族ってのは、大抵が専属でそういうの雇ってるもんでしょ。ほら、見たことないけど魔術師とか」

「まあ……魔術師は珍しいもんね」



でもたぶん、憶測の域を出ないけど、メリガちゃんなら相手が魔術師だろうが呪術師だろうが関係ないに違いない。

敵と見なせば、ぶちのめすだけだろう……いや、ぶちのめす。

彼女にとっての壁とは越えるためのものではなく、壊すためのものだ。



「面倒なの押し付けられたりしたらなー、ヤだなー」

「……そうだね……」



完全に尻窄んだ俺に相変わらず気付かないメリガちゃんは「あ、でも、おニューな武器を試すいい機会じゃんね!」とか何とか、何だかんだ能天気だった。

その程度で済めばいいけど、どう転んでも嫌な予感しかしないのは、依頼書に書かれた依頼人の名前が頭から離れないからで。

メリガちゃんがそんなもの見もしないのは、通常運転なので今更だ。



「はあ……」



飲み込もうとした溜め息はあっさり喉元を通過し、それでも、何とか第一歩を踏み出した俺だった。





この先、待ち構えるは魔人ディアーブルより恐ろしき御仁であることを知るのは──今のところ、俺一人である。

この時点で判明した情報。


αアルファ / 1地区

βベータ / 2地区

γガンマ / 3地区

δデルタ / 4地区

εエプシロン / 5地区

ζゼータ / 6地区

ηエータ / 7地区

θテータ / 8地区

ιイオタ / 9地区

κカッパ / 10地区

λラムダ / 11地区

μミュー / 12地区

νニュー / 13地区

ξクシー / 14地区

οオミクロン / 15地区

πパイ / 16地区

ρロー / 17地区

σシグマ / 18地区

τタウ / 19地区

υユプシロン / 20地区。ここまで一般居住区。

Φファイ / 21地区。黄金通りゴールディストリート

Χキー / 22地区。眩惑の都ダズリウム

Ψプシー / 23地区。水の都アクアリム

Ωオメガ / 24地区。王の領域キングダム

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