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第2話 元魔王、恋を覚える

「ミナ」

「なに?」

「恋とは何だ?」

「ぶっ!」

私は紅茶を吹き出した。

「急に何!?」

「人間の恋愛について調べていた」

元魔王の手には恋愛指南書。

タイトルは――

『愛される男になる100の方法』

「なんでそんな本買ったの!?」

「お前に好かれたいからだ」

「…………」

また胸が鳴った。

「そ、そういうこと平然と言うの反則……」

「勉強したところによると、女性には花を贈るといいらしい」

「へえ……」

翌朝。

家の前に巨大な花束が置かれていた。

「……何これ?」

「贈り物だ」

「大きすぎる!」

「小さいと失礼かと思った」

「花束で家が隠れてる!」

さらに翌日。

「女性には甘い言葉も必要らしい」

「……何て言うの?」

元魔王は真剣な顔で私を見る。

「お前は、太陽より眩しい」

「……」

「月より美しい」

「……」

「そして、魔王軍三千人より大切だ」

「比較対象がおかしい!」

だが、そんな彼が王都へ行った日。

事件が起きた。

元魔王の正体がばれたのだ。

「元魔王を拘束せよ!」

騎士たちが彼を囲む。

私はその前に立った。

「待って!」

「勇者様、お退きください!」

「この人はもう魔王じゃない!」

「しかし――」

「私が倒したんです!」

騎士たちが黙る。

「この人は、今はただの不器用な男です」

「……不器用?」

「料理をすると卵を炭にして、洗濯すると服を黒くして、掃除すると家具を消すくらいには」

「勇者様、それは本当に大丈夫なのですか?」

「……たぶん」

後ろで元魔王が呟く。

「家具は消していない。庭に置いただけだ」

「今そこ重要じゃない!」

私は彼の手を握った。

「この人は私が守ります」

元魔王が驚いた顔をする。

そして――

嬉しそうに笑った。

「……ミナ」

「なに?」

「今の言葉、もう一度言ってくれ」

「言わない!」

「録音したかった」

「録音機能ないでしょ!」

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