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俺の名前はレイルダ。
子爵家の長男だ。……まあ、一応姉もいるんだけどな。
俺たちの領地はそんなに広くない。東には畑と屋敷の中心部があって、北の半分は草原、南の半分は森になっている。草原はゆるやかに起伏していて、牛や羊がのんびり草を食んでいる。森の外れでは薪を集める人影がちらほら見えるが、奥へ行くにつれて木々が密集し、人の足では進みにくくなる。
一番人が少ないのは南の森だ。森の最深部には何か遺跡があるっていう伝承があるけど、冒険者たちが探しても何も見つかっていない。この森の一角だけがうちの領地で、もう一角は向かいの港町のもので、残りの大部分は別の男爵の領地だ。港町と俺たちの領地をつなぐ森の中の交易路には、よく商人が冒険者を連れて行き来している。ちなみに、その広大な森を持つ男爵は冒険好きで、自分の領地をとても気に入っているらしい。……まあ、ほとんどが森で農地はほぼないんだけど。
北の草原には遊牧民がいる。昔は穴掘りウサギやら小型魔物やらが大量発生して、牛が穴に足を取られて蹄を折ることが多くて、牧民たちはずっと困っていた。冒険者に依頼を出しても一時しのぎにしかならないし、次の春にはまた増える。最終的には父さんが旅商人から高額でネズミ退治の薬のレシピを買ってきて、ようやく解決したんだ。
次は東の農地。ここでは主に小麦、トウモロコシ、ジャガイモなんかを育てている。綿花は少しだけ。薬草もあるけど、よく使う種類で育てやすいものばかりだ。風邪や打撲なんて日常茶飯事だからな。畑にはいくつかの風車があって、風を受けて回る様子はなかなか見ものだ。ギーギーって音も、なんだか心地いい。
そして一番東の中心部。ここには店や商館が立ち並んでいる。中心部にはちゃんとした商店、酒場、ギルドなんかが並んでいて、外れには農民がやってる屋台や商人の荷馬車の即席の店もある。俺の家は少し北寄りで、そこまで大きくはないが平民の家よりはずっと広い。屋内にいても外の賑わいが聞こえてくる。商人の呼び声、冒険者たちの朗らかな笑い声。
子爵とはいえ、そこそこ広い領地を持っているから、俺は小さい頃から領地のあちこちを走り回って遊んでいた。平民の子供たちとも仲良くなって、よく一緒に泥だらけになった。もちろん、そのたびに両親や姉にこっぴどく叱られたけど、性分はなかなか変わらないもんだ。
少し成長してからは、あまり外で遊ばなくなり、本を読んだりいろいろ作ったりするのが好きになった。よく煙を出して周りを驚かせたりな。
うちには本が本棚二つ分くらいあって、その中でも俺のお気に入りは錬金術や魔法、それに旅行記だ。父さんが昔、自分で魔法や錬金術を学ぼうとして、入門書を一式買ったらしい。結局途中で投げ出して、本棚でホコリをかぶってたけどな。
もちろん、俺にもいくつか成果がある。例えば、錬金術ってほどじゃないけど、石鹸とか。焚き火の灰を集めて水に浸し、布で濾して油脂と一緒に煮て、最後に塩を少し加えれば完成だ。簡単だけど、自分で作ったってだけで嬉しいもんで、子供の頃は家族が俺の作った石鹸で風呂に入ってた。あとで花を混ぜて香り付きにしたりもしたな。
姉は俺より一歳ちょっと年上で、俺が生まれる少し前に産まれた。性格は静かで勉強熱心だ。俺は長男だから王都の中央学校に推薦で入れるが、姉は自力で合格する必要があった。小さい頃はよく一緒に寝たり風呂に入ったりしてたけど、ある時ケンカしてそれっきりだ。仲直りはしたが、もう大きくなったから一緒には入らなかった。
やがて姉は見事中央学校に合格して、その祝いに晩餐会を開いた。知り合いの平民も来て、最後は人が多すぎて家じゃ入りきらなくて、みんなで酒場に移動して祝ったんだ。
数日後、姉は王都へ旅立った。両親は時の流れをしみじみ語り、来年の今ごろは俺も旅立つ頃だろうと言っていた。
その年は、両親に礼儀や勉学をみっちり仕込まれた。主専攻は錬金術、副専攻は魔法と地理学(博物学)と決まっていたから、時間の大半は坩堝の前か、森での探索に費やした。
この頃の探索は、もう遊びだけじゃない。花や木、土壌や地形に目を向け、面白そうな植物を実験用に集めたりした。森には魔物もいるが、数は少なく、大抵はウサギが変異したような小型のキラーバニーで、人を見るとすぐ逃げる。
森には遺跡があるって言われてるけど、俺は見つけたことがない。この辺りは古い土地なのは確かだが、せいぜい三千年前くらいで、最古ってわけでもない。ただ、この森の魔力の匂いは面白い。普通なら同じ土地は同じ匂いしかしない。草原なら草の匂い、町の周辺ならかすかな土や砂の匂い。
だがこの森は違った。外周は普通の森の匂いなのに、奥へ進むにつれて匂いが変わる。海の匂い、燻された煙の匂い、果ては血の匂いまで。地下に何かがあるんじゃないかと疑っているが、深く掘る暇がある者はいない。
気がつけば秋になり、姉から「そろそろ帰る」との手紙が届いた。郵便と馬車の速さはそう変わらないから、もうすぐ着くということだ。
今年の収穫は普通。夏は雨が少なかったが、食べていくには十分だった。ある意味、豊作って言っていいかもしれない。
そんな時、不意に冷たい風が吹きつけて、一気に気温が下がった。一晩中、窓が風に打たれてガタガタ鳴っていた。昔ならはしゃぎ回ってただろうけど、今は落ち着いて少しワクワクするくらいだ。
翌朝、窓がやけに明るい。カーテンを引くと――
「雪……」
外は一面の銀世界だった。小さな雪片が、静かに地面を覆っていた。
この記事は私が執筆したものですが、chatGPTを使用して翻訳されています。