裏切りの貴族たち
村長を裁いた俺は、次の標的を目指していた。
村長が手紙でやり取りしていた相手──
この村を見捨てろと命じた貴族、ギルデン男爵。
(あいつらがすべての元凶だ……)
許さない。
絶対に、だ。
──
男爵の居城は、村から数日離れた都市領にあった。
だが、俺の身体能力は、既に常人の域を超えている。
吸収した魔獣の俊敏性と体力を駆使し、俺は僅か一日で都市へ辿り着いた。
夜闇に紛れて、城壁をよじ登る。
簡単だった。
(警備が甘すぎる……腐った貴族らしい)
見張りの兵士がこちらに気づく前に、背後から近づき──
「……寝てろ」
ポン、と肩を叩いた瞬間。
≪スキル【強奪】発動≫
兵士の体力と小スキルを奪い取り、静かに気絶させる。
そのまま、無音で城の中へ。
──
地下牢。
そこに、意外なものを見つけた。
ぼろぼろの衣服に身を包んだ、複数の男女。
「助け……て……」
かすれた声。
どうやら、男爵は村人だけでなく、
反抗的な者たちを次々と捕らえては売り捌いていたらしい。
(……救う価値は、ある)
俺は牢の鍵を奪い取り、囚われた人々を解放した。
「逃げろ。今だけは自由だ」
驚きと混乱の中、彼らは一斉に走り出す。
──
そして、俺は、玉座の間へと向かった。
そこには、男爵ギルデンが鎧を着込み、震えながら待ち構えていた。
「お、おまえは何者だ……!」
「……復讐者だよ」
男爵の放った火球魔法を、俺は軽くかわす。
遅い。
脇腹を一撃殴りつけ、男爵を地面に這わせる。
「この世界を腐らせた貴族ども。お前らの罪は重い」
「ま、待て……! 金ならやる! 地位も、女も──!」
「いらない」
俺は、無慈悲に手を伸ばした。
≪スキル【強奪】発動≫
ズズズズズッ!!
男爵の魔力、スキル、そして寿命すら吸い上げる。
干からびた身体が、床に崩れ落ちた。
──
(これで、貴族どもにも震えが走るだろう)
俺は、静かに夜の城を後にした。
復讐の旅は、まだ始まったばかりだ。