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神話の冒険者エリクディス  作者: さっと/sat_Buttoimars
第1部「戦乙女見習いスカーリーフ」

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23 古代都市編1話:戦乱の元凶

 旧帝国の遺跡都市の調査、遥か遠い宮中伯エバーガル七世の”一昔前”を浚う業務は凍結された。ゴーレムの掃討は確認されたものの、次なる地下空間探査のための人手が集まらない。

 最大要因はカッツェス兄弟団が兵隊ゴーレムとの戦いで負け戦並、虐殺評を受ける程の被害を出したこと。それまであまり悪評になっていなかった臨時雇い人の使い潰しの件も緘口令の敷きようもなく広まる。これでは日銭のためなら多少は危険で安い仕事でも請け負う者達が集まらなくなった。

 非定住民及び外国人労働者に強制徴集を掛ける議案は議会で否定された。死神の水脈騒動で流れ者も多い中では暴動も有り得る。登録戸籍に掛けるなどもっての外。

 そうなれば多額の資金を充てての専門集団の再編成を目指す。つまり欲しいのは資金、何にしても金。

 旧帝国遺産に関しては品質よりも浪漫で値が付く世界でもあり、骨董品として発掘品の多くが売りさばかれたものの事業収支は赤字。飛び上がるような高額品は知神の神殿が抑え、使い道は徳を積むため思案中。

 宮中伯エバーガル七世は財政を傾け、施政を怠るような出費をしない堅実運営を志向する。戦時でも無い限りは臨時予算など組まない。

 今回あてにするのは臨時収入、国璽尚書の特権からもたらされたものだ。

 今は亡き大王の腹心だった一人、後継者戦争枠の有望株、フローディス”隻眼公”がサルツァン市へ配下諸侯と儀仗兵を引き連れて城外から行進して来る。基本的に儀礼用武器しか携帯せず、防具を銀ピカに磨き、大型馬を選抜。旧帝国式の行進曲に合わせて人馬共に足並みを揃えた。林立する旗は領国制に定められるフローディス配下諸邦の全てで、当該国出身の旗手の手にある。主役を乗せる四頭立て戦車は前時代も良いところで古典趣味に溢れる。御者だけは専門のサルツァン人。

 旧帝国で発生している戦国乱世、その中でも南部諸邦で展開される後継者戦争では優位に戦いを進め、領国制に定められたザステン及びランコニアの二公領を統治し、新たに三つ目を征服した者が作る列は長い。

 サルツァン市は総出で隻眼公を迎え入れる。”入都”と呼ばれる行事だ。旧帝都を抑える者こそ在れ、帝位無き今、上るに値する先はこの都のみである。

 板と柱で段組みの、位置の高い仮設席。市内外から呼ばれた賓客が座る。行進の終点である宮殿前広場を左右から一望。

 行進列と同じ高さの道路沿いに、最前列には道路警戒をするサルツァン兵が徒列。その直背には仕込みの入った市民達が歓声を上げて手を振り、花を投げて歓迎する演技で日当を貰う。家屋からは指定された窓のみ解放が許され、そこからも演技が出来る市民が声を上げる。

 仕込み有りの背後に仕込み無しの市民。おかしな気をおこさないよう、市の負担で無料の食事と酒が後に広場で振る舞われており、入都期間の市民税は免除とご機嫌取りも欠かさない。また期間中の犯罪行為に対しては倍刑とされる。ほぼほぼ極刑の上に連座制。

 被る三角帽子に羽飾りなど特別に付けるエリクディスと、嫌々風呂に入れられ戦乙女衣装に着替えたスカーリーフは、この入都行進を脇から見送る賓客席に参列していた。チビは不参加、場に相応しい正装の用意が無いということもあるが、純血種至上主義を採る故の伝統国家の壁は厚い。

「興味無いんだけど」

 戦乙女殿は実用度外視の儀仗隊行列などに心は躍らない。目前に来たら飛び降りて先頭から順に、などと言われたら別かもしれないが。

「閣下からのお誘いじゃ、断れんわい」

「何か意味あるのこれ?」

「客は多い方が賑やかじゃろ?」

「部屋帰る」

 立ち上がろうとするスカーリーフの肩をエリクディスが引く。

「あーい! 待て待て。発掘事業の後援者か何かをフローディス公に頼む時にな、その顔がここにあった方がいいんじゃ。それも戦乙女じゃぞ、迫力が違うわい」

「必要?」

 街路を進む儀仗兵に負けぬ銀ピカの彫刻板金装甲に、閣下の予備費で取り換えられた戦乙女の姿は目立つ。大きい身体と強者の風格、珍奇な金エルフの姿からも迫力がある。行進する者達の目にも何れ留まるだろう。賓客、市民からの注目は十分受けている。

「やらんよりやった方が良い。どうせ酒飲んでグダグダしとるだけじゃろが。それにほれ、こんな公式行事、賓客席に座って参列なんて市井のもんには出来ん経験じゃわい。見習い卒業の数ある一歩の内じゃ」

「むー」

「修行というのは苦しいのう。筋肉で骨を削るのとは一味違うがな」

「ハゲ」

「禿げでも何でもいいわい」

「で、これ何なの?」

「ザステン公にしてランコニア公フローディスが、更にアレクマント公の称号を正式に認めに貰いに来ている。この戦国乱世では勝手に称号名乗るくらいは出来るが、皆が認める正統性を付けるとなればここで帝国国璽を押した証書とサルツァン織の領国旗が必要だ。あの三つの公位を持つことになれば、そうじゃな、旧ロイエン親王領の過半を越えて統治しとることになるから、ロイエン王を名乗れるかもしれん。その相談もしに来とるだろうな。そうして正統称号が得られた時、全下位諸侯等も従わざるを得ないという感じになる」

「感じぃ?」

「うむ。反抗する者はするのだが、する名分も気も無い者ならそれで良しとするというところか」

「うん?」

「お前さんならそうじゃのう、族長があれをやるぞ、と言った時に、賛成する気も反対する気も無かったらとりあえず賛成して従うだろ?」

「まあ」

「それじゃい。勝手に族長を名乗ってる変な余所者が言ったら、死ねクソボケって思うじゃろ」

「うん」

 エリクディスは親指を立てる。

「正式な”オヤジ”ってのはそういう能力がある。権威や称号に正統性なんかアホくさいと言う奴がいたらそいつはただの世間知らずか、それに散々打ちのめされて来た奴の恨み言だ」

「大体分かったけど、わざわざここでそれやってやるのなんで? これ、金かかってるでしょ」

「これがサルツァンの主要産業だ。証書代、国旗代、軍の飲食代、膨大な収入になる。発掘事業もこれで再開するだろうな。それからこれは国防策に繋がる。ここを攻めたらその栄誉に預かる者達全てを敵に回すわけだ」

「ほえー」

「旧家は敬われもするが、傀儡に据えたがる者も多い。七大旧家、旧親王等も隙有らばと祭り上げられ、潰されて来た。強引に正統性を得ようと卑賎、人間相手に子も成せないのに結婚もさせられてきた。自害の話も多いな。最近はヴェスタアレン以降の水害、領国境界線の乱れで戦国なりの秩序すら危うい。”お公家”の生き残りも大変なんじゃ」

「うーん、しつこい」

「なんじゃいお前さん、戦乙女には教養も必要だと言っとるだろが。強そうな相手がいるから喧嘩吹っ掛けた、じゃ話にならんぞ。そんなのは狂戦士までじゃ。ちゃんとのう、戦には歴史の文脈というものがだな」

「うるさー」

 スカーリーフ、己の耳の穴に指を突っ込んで聞こえないフリ。

「まあ魔法使いさん、お詳しいのですね」

 隣の老貴婦人が上品に笑いながら声を掛けて来た。遮光の服装、目隠し、混血種ダンピール。

「伊達にこの帽子を被っておりませんので」

「あらあら」

 行進の列、先導騎兵が広場に到達。御者が操る四頭立て戦車に乗り、手摺りを掴みながら手を上げる隻眼公が次いで二人の目前に到達し、周囲の歓声が盛り上がる。

 そんな中、近隣の者なら明らかにスカーリーフとフローディスの目が合ったのが分かった。特に隻眼公、片方しか無い目を広げて笑みを消して凝視。戦乙女の方はというと相手を指差し奇声。

「ひぎょえー!」

 明らかに馬鹿にする、わざと下手にやる物真似の口振り。そして大口開けての、爆の嘲笑。板組みの床を軋ませ震わせる足踏み。

 奇態など無視すれば良いものの、フローディスは己の胸を掴んでの動揺を隠さない、隠せない。歓声の一部がどよめきに変わる。遠くの観衆などは事態が確認出来ないので変わらない。

「何しとんじゃい馬鹿者!」

 あまりの出来事に停止していたエリクディスの思考が回り出した。

「だってぇ! あいつ、前に追っかけた時に”ひぎょえー!”って叫んでたんだもん! 転んで石に目ん玉ぶつけて”ひぎょえー!”」

「ぬ、えい、こっち来なさい!」

 エリクディスは馬鹿の手を引っ張って、板組み席の陰へ行く。えらく目立ったので賓客等の注目、特に耳はこちらに向いたまま。

「何じゃいいきなり!」

「あれ、あれあれ! 千人斬り奉納で大王ぶっ殺した時にいた奴! ふぁー!」

 賓客席から驚きの声が響く。この逃せぬ会話は聞かれている。特に混血種ダンピール、人間よりも耳が良い。

 大王は最近の人物。戦国乱世を終わらせると目され、サルツァンにて複数の正統王号を得た者。帝国領土を再現しようかというところで、水浴びの最中に溺死したと伝えられている。死後、正式な後継者は無く、その跡目争いが始まり、また麻のように諸邦は乱れた。只今その惨禍の真っ最中。

 エリクディスは誤魔化しのしようを考えたが、動揺で何の良策も思いつきやしない。たぶん無い。

「おっかしいの! やろうとしたら直前で戦神が戦乙女の見習いにするとか、おっさんが後で来るとか言うからさ、逃がしちゃったんだけど!」

「何を言っとんじゃお前!」

「ぎゃあっははははは! ひっひぃ!」

 エリクディスは馬鹿の手を引っ張る、のも諦めて、己より大きい身体の腰を肩に抱え上げてとにかく遠くへ走る。笑い止まない狂戦士はエリクディスの尻を叩いて再度奇声をあげる。


■■■


 急な番狂わせに不安が広がる中、サルツァン宮殿前広場を戦車は一周。その間に中央へ全行進隊列が入って整列。

 宮殿前で周回を終えた戦車からは、途中で顔を上げて改めて手を上げ体調不良を否定したフローディスが下車。赤絨毯を踏んで階段を上り、中段踊り場で停止して跪く。

 日中ではあるが顔を出すエバーガル七世は、従者が掲げる日傘の下、椅子に座ったまま微動だにしない。代わりに名代が階段を下りて国璽が押印されたアレクマント公位をフローディスに与える証書を掲げ、観衆が拍手喝采で歓迎する。そして本紙が丸められて筒に納められた後、当人が受け取る。

 かつては公冠も被せられたものだが、目まぐるしく頭がすげ代わっては紛失が繰り返されたので貴金属は現在取り扱われていない。

 フローディスと名代が広場側に向き直り、次の儀式。

 サルツァンの儀仗兵が、アレクマント公旗を掲げて広場に入場して一周。軍と観衆に旗を見せて回り、赤絨毯の階段前で停止してから回れ右、階段を上って中段踊り場でフローディスに授与。風も弱く旗が垂れているので、持って来た儀仗兵が端を掴んで広げる。

 証書入りの筒、広がった旗。これを持つ姿を観衆に見せて再度歓声と拍手。弁えた賓客等は程々のところで声と手を止める。

「この私、ザステンのフローディスは、逆賊から帝国正統領土であるアレクマント公領を奪還したことを宣言し、また領民領土を保護することを宣誓する!」

 再び歓声と拍手。宮中伯より認められていない領主とは逆賊である。正統でありたいのなら料金を納めなければならない。

 そんな中、この度は閣下より少し離れた位置に立っていた知神の神官が階段を降り、挙手して発言の機会を求める。異例ながら神官のすることなのでまた声と手が止まる。

「預言である! 知神より、ザステンのフローディスよ、古の都市ミンルホナを制覇せよ! 以上!」

「暁にはかの戦乙女を我らが軍に!」

「……好きにせよ、と仰せである!」


■■■


 授与式に背を向けて人気の少ない小路まで至ったエリクディス、武装する大女を担いでしまって腰が痛い。階段の手摺りに腰を当てて後ろ反りで伸ばす。

「痛だたた」

 奇声も口から出なくなったスカーリーフ、己の銀ピカの装甲板がうるさくて外そうか外さないか、うずうずし出す。収める袋が無いので何とも手が出し辛い。

「なんでっ……んぁあ、痛い、大王を殺したんじゃ?」

「は? 強いからに決まってんでしょ。何言ってんの今更」

 大王と呼ばれた男は個人としても非常に優れた戦士であった。彼に付き従う戦士達もまた同じで、王よりも武勇だけなら優れていた者も多いと言われる。著名な魔法使いもいた、魔法も剣も使える者も、神学を良く修めた者もいた。それが一〇〇〇余り、狂戦士一人にほぼ皆殺し。後に幾名か生き延び、後継者争いで名乗りを上げているわけだが。

「ん? どうやって勝ったんじゃ?」

「あれ、魔法封じの祝福ぅ呪い? 戦士の魂奉納するたびに時間延長だったかな? たぶん」

「当時のスカちゃんがよくそんなの知っとったの」

「ご先祖の”短慮”ベギルガレン、そういうの使ったって聞いたことあるの。奴等の陣容見てる時にあると便利そうだから戦神に言ってみたら、殺す度にって言ってた」

「ほう。先祖の話を覚えとるとは感心じゃのう」

「ふふん。今はもう普通に使えるし」

「ほう! しかしのう」

「しかし?」

「いや、何でもないわい」

 旧帝国秩序を守る存在でもないエリクディスである。また戦神が戦士の魂を収集するためということもあって認めたものでもあり、非難のしようが無い。ただ多大な不幸の洪水の元凶かとも思うと、こう、気が疲れて来る。

 取っている宿に二人は戻る途中、チビと合流。ゲルギルもいた。都市各所の広場で振る舞われるタダ料理と酒にかぶり付いていた。行事の最中で人通りは若干少なく、食い放題に近い。

「スカー、変な格好」

「おっ、なんだこのチビすけ!」

 慣れぬ酒に酔ってるチビの首をスカーリーフが取って捻って投げた。倒れても寝転がったまま。

 エリクディスが上から、諸々分厚いオークの顔を覗いて、頬を叩く。感度悪し。

「ドワーフなぞと飲み比べしてもせんないぞい。あやつら多少酔いはするが悪酔いせんでな。酒毒が効かん。パン代わりに酒を飲むような生き物よ。通っとるのは配管じゃ」

「んあ?」

「潰れとるわ」

 ゲルギル、酒を煽って鼻息一つ。勝ち誇る。子供相手に。


■■■


 一行が取っている宿に、名代のそのまた名代、人間貴族が訪れる。

 いつの間にか二人は賓客席から去り、どこに行ったか分からぬまま夜になっていた。庶民の酒宴に紛れられると見つけ出すのも難しかった。戦乙女衣装も脱がれたらわからない。苦戦したことだろう。

「知神の預言にて、フローディス公は古の都市ミンルホナを制覇せよとのこと。公はその暁には戦乙女を我が軍に迎えると」

「え、ヤだけど」

 値引き、おまけつきなら、という販売品でもないので戦乙女の返答はこの通り。

「まあ待ちなさい。本人不在の中で? 神理に上手く合わんことですな。一語一句、前後の言葉も合わせて教えて貰いますか。これは重要ですぞ」

 名代の名代は今一度思い出す。

「預言である、知神より、ザステンのフローディスよ、古の都市ミンルホナを制覇せよ、以上。続きます、暁にはかの戦乙女を我らが軍に。続きます。好きにせよ、と仰せである。以上です」

「はあ?」

 罪の無い名代の名代にスカーリーフがごろつきのような視線で圧力を掛けて、エリクディスがその肩を引いて、止めろ、とやる。

「なるほど、これは分かった。さて、その前にミンホルナとは我々の発掘調査地でよろしいのですかな?」

「神殿の見解はその通りです」

「うむ。さて、神話でも前例がある話だ。スカちゃんの嫌いな神学でもしようかの」

「目ん玉野郎を殺せばいいんでしょ」

「急くな急くな。そも、戦神の使徒たる戦乙女を知神がどうこうするというのは領分違いじゃ。好きにせよとは、干渉しないということだ」

「じゃあ何、あいつ勘違いしてんの?」

「そういうことだな。して、これを利用して隻眼公の軍には遺跡都市探索の先鋒を切って貰うわけだ。地下の先、何があるかは分からん。もっと凄いゴーレムがいたら、軍を一度ぶつけてスカちゃんは後ろから様子見をするのが賢い。大規模な坑道工事が必要だろうから人手は幾らあっても足りん。先の兵隊ゴーレム騒ぎで人手が集まる気配は無いからのう。ここは”悪い女”のように”馬鹿な男”をこき使わねばならん。スカちゃんもほれ、身綺麗にしておけば別嬪なんじゃから、やるやらないはともかくとして手管くらいは頭に入れておいて損は無いぞ」

「はん? で、用済みになったら皆殺し。はっ、完璧じゃん!」

「そんな酷いことを簡単に……まあ、今後の旅路を邪魔されるのはよろしくないのだからな。欲しい欲しいと付き纏われては困る、疲れる、危ういのう。うーむ、しかし選択肢があるぞ」

「何?」

「フローディス公の戦乙女として先頭に立てばお前さんの好きな戦争に幾らでも参加出来る。これも見習い卒業の経験としては悪くない、絶好かもしれん」

「だからイヤだって」

「人の好き嫌いはどうしようもないのう。とりあえずこれは知神が寄越した援軍ということだ。有難く使い潰そう。そしてこちらが騙しているということを言ってはいけない。”悪い女”のように騙すのだ。いいか? これもまた戦乙女の一つの姿だな。重大なのは騙し切ること。死ぬまで、最低でも滅ぶ直前までそうとは気付かせないようにする。作物は実ってから刈り取るものだ。青田はいかん」

 名代の名代は賛同して二度、俗に頷く。サルツァンの方針に適っている。

 さてスカーリーフ、長い首を傾げた。

「”悪い女”って、盗み食いとか?」

 長い冬に備えなければならない北極出身者にとり、略奪殺戮等の大事を除いた最大悪の一つは蓄えに口を付けるそれである。

「うーむ、これはワシの口から言うのはあれなんじゃが、そうさな、金エルフに分かり易く言えば、黒エルフの女商人」

「殺す」

「殺しちゃいかんぞ!」

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