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07:断罪の時

顔に雫型の痣の入った女が、近衛兵に取り押さえられてもなお、こちらをすさまじい形相で睨みつけながら、呪詛を吐く。



「ここまで育ててやったのに、恩を仇で返すなんて。おまえなんて産まなければよかった。何の役にも立たない、ただ着飾られていただけの人形のくせに、(わかくし)に歯向かうなんてッ! 」



「さすが、寄生虫であるあなたの子供でしょう? 最後は宿主を苦しめて地獄に落とす。あなたそっくりじゃないですか?」




取り押さえられている女は、私より下で這いつくばっている。逆転ざまぁ展開のはずなのに、現実とはなんともスッキリしない後味の悪いものか……




これも、この身体の記憶なのだろう。愛されたい、こっちを見て欲しい、私を認識してほしい。母親とはこうも繋がりの強いものなのかと体感する。こんなにクズなのに、切り捨てられない、頭では、感情ではわかっているのに―――







証拠、証言、根回し、そして【女神の審判】の材料がすべてそろい、そのあとの手はずまで整えて挑んだ今日という日。手筈通り、王族主催の裁判が執り行われた。




王族、貴族院、教会関係者も集めての裁判だ。はじめは、なぜ自分が呼ばれたのかとあの女とゼニーロ子爵は戸惑っていたが、裁判が進むにつれ言いがかりだ、何かの間違いだと言い始めた。




証拠を突き付けても、24年前の事だからとかなんとか、思いつく限りの言い訳を並べ立てていた。

最終手段としてとっておいた【女神の審判】を教会関係者と、魔封筒の魔力を込めてくださった陛下にお願いしてみんなの前で父様がサインをした。




夢のような光景だった―― 父様がサインをした後、誓約書が青白く発光した。次第にまぶしいと感じるほどの光を放った時、そこに精霊かなと思うような美女が現れた。まるで泳ぐように近づいてくると、まず私の体をすり抜けていった。





特に変わったことは起きずに首をかしげていると、あの女と、ゼニーロ子爵のところへ行き微笑みながら2人の右頬を人差し指でチョンと触っていた。それからクルリとまたこちらに帰ってきて、私の右手を持ち上げ手の甲にキスをすると光の粒子になって消えていった。





幻想的で美しい光景に皆しばし今までの裁判を忘れていたが、私の手に現れた不義の子である紋様。ゼニーロ子爵の顔を見て、自分にもついているであろう雫型の痣に激怒したあの女が私につかみかかってこようとした事により、近衛兵に取り押さえられ冒頭の出来事に戻るというわけである。






「これでもう言い逃れは出来まい? ゼニーロ子爵、男爵に降格及び家督を別のものに継がせ領地も一部没収とする。キャネット=プリラモール、26年前に交わした結婚を無効とし、エルラ修道院に入ることとする。キャネットの生家であるマルタ伯爵家も監督不行き届きと言う事で財の一部を没収。アスクウェルに関しては、当時子供だったことを考慮し、プリラモール子爵に一任することにする。異議申し立てのあるものはおらぬか?…… では、これにて閉廷。」





国王の閉廷の合図により、みんなが一斉に席を立ち出入口が混雑する中、まだこちらをにらみ続けている、かつて母親だった人。ここまで誰かのせいに出来るなんて、(あわ)れささえ感じていたその時、間に大きな体が割り込んで視界をふさいできた。




「アスク、お前はもう何も見なくていい。十分に地獄は見ただろう。これからは楽しい事だけ考えなさい。」




そう言って父様は私の背中を優しく押しながら出口に向かった。この国一戒律の厳しい修道院に入るのだから、もうこれから先の人生、彼女に会うことは二度とないと思いながら帰路についた。





やっと決着がついたのだ。私にとってはほんの2か月ほどの出来事だが、父様、ルシアス、ロベルト、そして領民の皆にとっては、24年という長い間の戦いだった。




さて、父様に楽しい事だけしてもいいとお墨付きもいただいたし、最後の仕上げをしてハッピーライフを楽しみますか。







帰りの馬車に乗り込むために、玄関先で待っていると聞こえる聞こえる父様に対しての誹謗中傷。



‘嫁も制御できないとは、領主は荷が勝ちすぎるのでは?’‘早く家督を譲るべきでは?’‘血の繋がりもない子供など、まるでカッコウの雛のようですな。’




最後の私に対しての陰口だけ父様のコブシがきつく握りしめられた。その上からそっと私は父様の手を握る。気にしていませんよ~という顔をしながら、相手の顔を覚えていく。絶対いいもの作ってもお前らとは取引してやるもんか‼





では、これだけギャラリーがいれば上場でしょう。あとは父様よろしくお願いしますね。



ルシアスの影、主に諜報作業などをしてくれる者たちの中に、周りに魔法を使っているのを気づかれないように、具合を悪くさせるのがうまい者がいるらしい。その人の協力の元、今から昏睡状態になります。事前に打ち合わせはしていたけれど、こんなに気持ち悪いなんて聞いてない。




倒れこみそうになる私を父様が腕に抱えながら何か言っているのが聞こえるが、もう無理―――・・・

ここで私の意識は途絶えた。


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