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037:おわり?

建物の中は思ってた以上に広かった。



「こちらの場所は、温泉の源泉を一度あの装置に通したのち、各場所に供給しています。あの装置の中を通ることにより、源泉に含まれている余分なガスをこちらに排出しています。これにより安全に、安定的に供給が可能となっています。」



俺は、珍しくてシンの説明を聞きながら施設内を一通りまわった。



「こちらが最後の工程になります。あちらの箱をご覧ください。あの箱には特殊な陣が彫られています。あの陣がこの工場の心臓と言ってもいいほどの物なので、紋様を知っているのはごく限られた者だけです。今からあそこの職員が陣を作動させますのでご覧ください。」



下で作業している人を見ていると、レバーを下に引いた後、専用のゴーグルを付け、中を覗き込みながら何かを待っているようだった。数分後、レバーを元に戻し、手早くふたを開け中の物を取り出すと、横に用意されていた水の中に出来た物を入れていた。



「あの水は、ユリカの木から発生した雲からできた雨水を、溜めたモノになります。少し前までは、人の魔力を出来上がった人工ダイヤに注いで完成だったのですが、それだと一日で出来る量に限界があります。どうにかできないかと考えていた時、職員の一言でひらめいたんです。」



それからは、作業効率が上がり、より安定的にエネルギー源である人工ダイヤを作ることができるようになり、喜ばしいと話してくれた。そろそろ、他の国にも出荷させるか、技術指導をしに行くことが国で検討されているらしく、まだ課題は山積みだと苦笑していた。



そんなシンに聞きたいことがあると言うと、実はシンも話したいことがあると言う事で、別室に移動することになった。



職員がお茶を持ってきてくれて、扉が閉まるのを見届けると、まず話しを切り出したのは俺の方だった。



「シン、まずは俺の話を聞いてほしい。」



そう言ってここまで来た経緯を、ウルの事を、今思っている可能性の事を話して聞かせた。



「モルデラの町に行ったとき、不思議なことがあった。俺が持っていたこのウルの似顔絵――。あの町にいるドロテアとピンキー夫妻に聞いても、二人とも覚えがないと言ったのに、ほとんど関わりのない近所に散歩に来ていた老人は覚えていたんだ。おかしいと思わないか? そこで俺は仮説を立てた。ウルに関わりの深かった人間の記憶を消す魔法を使ったんじゃないかって…。」



俺がそう言うと、向かい側のソファーに座るシンも何かを考えて、慎重に口を開いた。



「俺は、もともとルシアス様の影をしていました。そんな俺が、今では人工ダイヤを製作した有名人です。その事に対して、違和感しかなかった。ですが、作り方、理論、どういう経緯で完成したか。覚えているんです。俺自身も、ウルと言う人物に全く覚えがありません。しかし、エンリル様の仮説が正しいと仮定すると、納得できる部分が多々ある。」



俺はうれしさと同時に泣きたくなった。俺しか知らない、誰も覚えていないウルと言う人物。あの頃の自分は子ども過ぎて、寂しさから作った幻だったのではないか、と疑った時もあった。



しかし、覚えてはいないが、違和感をぬぐい切れない人物がここにいた。それだけで、俺のやってきたことは間違いじゃなかったと思えた。



「シン、俺と二人でウルを探してくれないか? ウルが何処にいるのか、今の所手掛かりは全くない。でも、たぶんなんだけど、このプリモール領の事を知ることのできる場所にはいる気がする……。だって、困ったことが起こった時、近くにいないと助けられない。ウルは優しい人だった。だから、出来る限りでいい、一緒に探してくれないか。」



ソファーに座りながら俺はシンにお願いした。



「頭を上げてください。エンリル様。」



顔を上げると、こちらの顔をしっかり見るシンの力強いまなざしとかち合った。



「話を聞いた時から、そのつもりでした。もし仮説が正しいのなら、すっかり忘れている俺は、とても繋がりが深かったのでしょう……。」



そう言ったシンは少し顔をうつむけ、不気味に押し殺すように笑いだした。



「ふッ、くっ、くくッ、、ハァーハッハッハッハ――… 」



ニヒルに、顔を歪ませるが美形の為、それもまた男臭くてかっこいいな~なんて思いながら現実逃避をしてみたが、現状は何も変わらない。ひとしきり笑った後、満足したのか笑いは収まったが、俺は魔王を見た気がする…。



「この俺に、すべてを押し付けて消えるとは、いい度胸してやがるな。ウル(・・)」




シンが名前を呼んだので思わず、ぱっと顔を見るが本人は苦く笑い首を横に振った。



「口に出して読んでみましたが、思い出せません。ですが、妙に口馴染みがいい…。やはり、俺はそのウルと言う人物に関りがあるのでしょう。これから俺は、他国に行く機会も増えるでしょう。二人で探せば早い。」




後ろに怒りの化身を背負っていたような気がするが、それはウルの自業自得と言う事で、本人に清算してもらおう。心強い仲間も手に入れて、その日から俺とシンそして、新たに加わる仲間との日々がスタートする―――。






ここまでが、ウルを探し始める前の話になるんだけど… ここからもまぁ、大変だった。この話の続きは、またの機会に‼ それじゃ、バイバイ―――




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