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033:最後の仕上げ

いったい何があったのか、シンに問いただすが、自分の口から言う事は出来ないと屋敷につくまでもやもやした時間を過ごしたが、あの時間に戻りたいと思うような出来事が屋敷では起きていた。




バスターに連れられて、父様の執務室に向かうと扉の外まで言い争う声が聞こえていた。



「僕は妻以外と結婚するつもりはありません。それなら父さんが迎え入れたらいいではないですか。」



「私では年が離れすぎている。それにこれは王命にも等しい。断ることなどできるはずがない…。」



ルシアスが珍しく声を荒げている。それに、これは……



「ただいま帰りました。二人ともどうしたのですか? いくら気心の知れている人間ばかりとは言え、少しは配慮した方がいいんじゃない?」



私がそう言うとばつの悪そうな顔でフイッとそっぽを向いた。詳しく話を聞かなくてもなんとなく察しが付く。温泉、車の開発、新しい合金もそれはそれは利益を生んでいるのに、ここにきて有限であった資源をほぼ無限にする技術を確立してしまった我が領は、思いのほか超優良領地にランクアップしてしまった。




王家も黙っているわけにはいかなくなったらしく、ルシアスに王の姪にあたる侯爵令嬢を、第二夫人にと内々に打診があったらしい。



実は、メリア様のご実家は男爵なので、本当ならメリア様を第二に、侯爵令嬢を第一に上げるのが通例なのだが、ルシアスの愛妻家は貴族内で有名なので、王様からの破格の提案なのだ。



しかし、そもそも妻は一人しかいらないルシアス。王家からの打診は断れない…。それなら父親が娶ればいいとただ今、多いに揉めている。



「それなら、ルシアスの子供たちの誰かと、王家に連なる誰かを婚約させればいいんじゃないの? 今後情勢がどうなるかわからないから、猶予も欲しいし、婚約ならとりあえず何とかなるんじゃない。」




「しかし、いったい誰と誰を婚約させるのだ?」



「ほら、王弟ガルス様の長女ユリ様に双子のお子様がいるでしょう? 確か男女の双子だったね。5歳になる年だったはずだから、アクア(3才)かルクテル(0才)で打診してみれば? 内々の打診なのだから、少しくらい譲歩してもらえばいいよ。それに、子ども達に大きくなってその気がないならうまく婚約解消すればいいしね。」



ルシアス自身が恋愛結婚なので始めは渋っていたが、育てていく愛もあるんだよ? というと落ちた。

これでしばらくは時間稼ぎできると思う。しかし、話はこれだけではなかった。



「来年、我が領の爵位を一つ上げることとなった。それに伴って、私は爵位をルシアスに譲ろうと思っている。」



爵位が上がるのは、想定の範囲内だったが、爵位を譲るのはもう少し待ってほしい。ルシアスは今まで王都で頑張ってきたので、領地の運営と領民たちとの信頼という点に対していささか心配だ。もちろん父様だっていきなり放り出すようなことはしないと思うのだが……




「父様、どこか不調があるとか?」



「いたって健康体だ。」



「それなら、もうしばらく父様が領主として、支えてあげた方がいいと思う。王都側にいる貴族との関係性ももう少し万全にしてからルシアスはこっちの領に帰ってきた方がいいと思う。それまではやっぱり父様がこの領地を守って。」



私がそう言うと、父様が了承してくれその向こう側でルシアスが少しホッとしたような顔をしていた。











そこからは怒涛の半年間だった。父様とルシアスは新年の授与式に向けて準備が始まり、ファーブラ商会も地獄のような忙しさみたいだ。領地からも経済発展の貢献として、ハティア代表、メニラ&ニニ。




アルミ合金という新しい金属を作ったことにより、ドロテア&ピンキー。そして、エネルギー資源に無限の可能性を見出してくれたと、シンが授与式に呼ばれた。






出発直前までシンは納得いかないと、駄々をこねていた。



「私は、王都に行って、もしもがあると困るから留守番しておくよ。みんなおいしい料理いっぱい食べてきてね。」



「おッ、お土産、買ってきますからッ‼ 」



「ドロテア~、ボクたちも~何かおそろいの~お土産買おうね~。それじゃ~ウル~行ってくる~。」



「ウルさん、ご心配なく。私が必ず皆さんを迷子にならないよう、引率しますので。」



「ボン、うまいもん買ってくるから、いい子で待ってろよ。」




ドロテア、あの頃よりずいぶんスムーズにコミュニケーションが取れるようになったな。ピンキーもブレないな~。ニニ、学校の先生みたい。頼りにしてます。メニラさん何年たっても、私の事子ども扱いだな。良いけど。




「帰ってきたら、話し合いだからな。俺は納得してない。」



「シン、せっかくのイケメンが台無しだよ。出発ぐらい、機嫌よく出かけようよ。」




私がそう言うと、ため息を吐き出し、いいことを思いついたような顔をしてニヤリと笑い、私の頭を鳥の巣のように、くしゃくしゃにして、土産を楽しみにしていろと言葉を残して出かけて行った。




年末まで残り1週間。最後になるであろう、みんなの姿を私は見送った。




さぁ、これから大忙しだ。私は、私の痕跡を消すために走り回らないといけない。今までいろいろな計画に使った企画書は、いろんな理由をこじつけて、清書を別な人間に頼んでいたので、それらの処分。




世界を旅しようと思っていたので、地図、今まで働いて溜まっていたお金だけは持って行こうと思う。洋服に、食料。亜空間があるってサイコー。





「アスクーもう十分領地は潤ったかな? みんなが苦しんでしまった時間の半分にも満たないけど、10年、走り続けたよ。私がんばったよね。もう、何もかもから解放されて、自由になってもいいかな…… なんてね。」







リンゴ~ン♪リンゴ~ン♪ 新年を迎える鐘が高らかに国中に響き渡った。







王都から領地に帰ってきた、領主と各代表の一行。


その人々の手には、誰に買ったのか忘れてしまった大量のお土産……



「シンそれは何だ?」



一緒の車で到着した昔なじみのメニラに聞かれて、



「よその国でとれる珍しい鉱物だと…… なんで俺、こんな物かったんだ? 」



他の皆も、普段自分では選ばないような品ばかり握っている。首をかしげるばかりで、結局 誰のために買ったのか思い出せなかった……。



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