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032:長期休暇

「父様、今日はお時間を取っていただきありがとうございます。ルシアスもいてくれて助かったよ。」




今日は、いよいよこれまでの成果を発表する日だ。タイミングよくルシアスも屋敷に滞在していた。私ははやる気持ちを抑えながら、父様たちの前に横長の木箱を置いた。



「父様、ぜひ開けてみてください。」



「これは何だい?」



そう言って、開けた父様が固まった。その同じソファーに座っているルシアスと、後ろに控えていたバスター、ロベルトも時が止まったように微動だにしない。



「ウッ、ウル、これはいったいなんだい…。」



「人工のダイヤです。ちゃんとエネルギーとして使えますよ。ランプにも、馬車や車の燃料としても、もちろん大丈夫です。ちゃんとここ数か月、実験しました。」



なぜか父様たちは、卒倒しそうな雰囲気だった。



「シン、あなたがいながら、なぜこのような事になっているのですか‼」



ロベルトがなぜが怒り心頭だ。ルシアスは遠い目をしている。バスターは… 見てはいけない。



「これは、私達の手に余る。王家に報告しなければならない案件だ。」



大きくため息をついた父様に私は、ちょっと、イヤかなりしょんぼりしてしまった…。



「私、作らない方がよかった?」



「いや、いつかは必ず直面する問題だったはずだ。しかし、これを王家に報告すると、間違いなく爵位が上がる。やっかむ人間が出てくるはずだ。領の防犯強化もしなければならないし……」



「父様、ハティア、ルラリア(マーラル窓口)、ローベン、フェニル(ダスタフ窓口)、モルデラ、各町に自警団の設立を10年前から推奨し、連携もとれています。今では、中央の騎士団と合同訓練を行うほどの仲ですので心配ありません。王都にはルシアス一家がいます。王太子派、第二皇子派、中立派、その中でも温厚派の方々と親交を深めています。むしろ王族に恩を売っておきましょう。」




父様は、倒れそうな顔いろをしていたが、ルシアスは思案顔だった。王都で生活するようになって、(したた)かになったみたいだ。良きかな、良きかな~




「それはそうと、ウル 製作者にお前の名前を出してもいいんだね?」


「えッ、それはダメだよ。製作者はシンの名前を出して。シンならすべての作り方、理論も理解してて説明もできるから。」



「何を言ってる。俺はただ手伝っただけだ。製作者はお前だろう。それに、今までの功績にお前の名前が一つも入ってない。ずっと聞きたかった。どういうつもりだウル。」



トンズラするつもりなので、そんな重たい功績要りません。なんて言ったらどんな手を使ってでも止められそう。シンは感がいいから気づかれてそうだな~。



「ちゃんと報酬はもらってるし、私は、プロデュースしているだけで本当に走り回って、立て直しているのはそこに住んでいる人たちだよ。本音を言うと、もしも誰かに私の正体が露見した方が面倒なことになるよね? いくら暗黙の了解があるのだとしてもね。」



そうごまかすと、しぶしぶ納得してくれた。



「では、王都に報告する。私が直接王に謁見してくるから、この人工ダイヤは持って行くよ。バスター、予定の調節を頼む。」


「かしこまりました。」



「父さん、僕も謁見に同行させてください。」


「わかった。ウルは何か希望があるかい? お前の功績だ。なるだけ希望に沿うように今のうちに言っておきなさい。」



「私は、この技術で世界に混乱や争いをもたらしたい訳でも、この国だけで利益を独占したい訳でもありません。ですので、ある一定の期間を設けたのち、この技術の情報開示(かいじ)をお願いしたいです。」



はじめは驚いていたが、父様は笑って私の願いを聞き入れてくれた。











政治やら難しいことは分からないので、そこはバスターたち大人組にお任せして、私はシンと一緒に工場に戻ってきてセルフモードで人工ダイヤを量産していた。



「急にヒマになったね~。」



この世界に来てから、もう9年になる。肉体年齢は23歳、精神年齢なんてアラサーだ。

ずいぶん遠い所まで来た気がする。見た目はあんまり変わらないんだけどね……。



それがね、あの母親またもや余計な事をしていたみたいで、男の子は大きくなると可愛くないから、大きくならない薬を食事に混ぜていたらしい。それを長い期間 取り続けていたので、薬を止めたのにもかかわらず、私の見た目は十代後半ぐらいにしか見えない。




「シン、私一年ほど休もうかと思うんだけど、ここお願いしてもいい? シンが信頼できる人を雇ってもいいからね? 」



ジーっと私の顔を見つめて、はぁ~と深いため息を吐き出したあと、



「いいぞ、だが、必ず戻って来いよ。約束だからな。」



笑ってもちろんと言い、私はその日のうちに旅支度を済ませた。











ここは、プリモール領 港の街【ローベン】

時には辻馬車だったり、親切な人に乗せてもらったり、しながら一人旅をしている。手紙鳥が一時期はすごかったが、定期的に絵葉書のようなものを送るようになると、気を付けるようにと、何かあったら必ず頼る様に手紙が来た。



もちろん変な輩に絡まれることも、なかったわけではないのだが、防衛の護符そして、自警団しっかり仕事してくれてます。



さすが港の街、海鮮サイコー‼



「ウルちゃん、今日も来てくれたのかい。取れたてのエビが入ってるよ~。」



「おう、嬢ちゃん。今日はサザエとハマグリが取れたぞ。持ってくかい?」



「こっちの干物持って行け。どこよりもウマいから‼ 」


「あぁ、こっちの方がうまいに決まってんだろ。」


「あぁ、なんだと。表出ろやぁー」



毎日の事だが、元気が有り余ってるのかな? この町も滞在して一週間になる。そろそろ次の町に行こうかと思い始めていた時、こんな所にいない人がなぜかいる。



「シン、何してるの?」



「すまん、休暇は終了だ。領主館に帰るぞ。」




こうして、私の半年に及ぶ休暇が強制終了した。



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