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031:秘密

ここは、ハティアの街を再建するときに、特別仕様で作らせた場所だ。私がたてた工場の場所とは真逆の所に位置する。周りをユリーカの木で囲ませた離れになっている。独立で台所も作り、露天風呂も管理した。




貴族や王族、時には重症の患者を入れるための場所として作ってもらった。

そこに今、私は一人で湯船につかっている。温泉はかけ流しで、排水設備も整え、排水管にはクリーンの陣を刻んだので、もともと自然界に存在していなかったものを流しても、環境に影響は出ないようにしている。もちろん専用の仕事を作り、定期点検、メンテナンスもしてもらっている。




もともと宿をしていた人たちは、民宿をはじめた。今まで別な仕事をしていた人々は、これを機に職種をがらりと変えたものもいた。




街建設に伴って、それまでふんわりとしかなかったルールをある程度 固めて私が作り直してみた。

職業安定所の開設。労働の基準。自警団の発足。これらに(たずさ)わる人物たちは、みんなルシアスが王都から引き抜いてきた。




どこの場所にも優秀がゆえに、水が合わないのはどこにでもいる。そんな人物にひそかに声をかけて、プリモールに行くよう誘導してくれた。もちろん、すんなり採用というわけではなく、私、父様、バスター、ロベルトの面接をクリアしなければならない。今の所、不採用者はゼロだ。




誰もいない露天で泳ぐ贅沢―― そろそろ温泉という文化に慣れたら、サウナも作ってみるか。そんなことを考えていると、草むらの一角がかさかさと揺れた……。



「誰かいるの?」



急に一人が心細くなった。やっぱりシンもつれてくればよかった。内心すくみ上っていたのだが、しょうがないやるしかないよ。だって一人だもん……




瞳に魔力を持って行き、サーチをかける。相手が魔力を持っているなら、熱感知のように赤くシルエットが浮かび上がる。だが、私はそれどころでは無かった。




「あぁ――― そうだよ、こうして映像をみれば、魔力の動きが分かるじゃん! こんなことしてる場合じゃない。」




私は大慌てで、風呂から出て急いで工場に戻った。戻る道すがら、出店のおっちゃん、おばちゃんたちにお土産をしこたま握らされた。一時期メニラさんや、ニニと行動を共にしていたので顔を覚えていてくれたらしい。



「嬢ちゃん、ありがとな。これ持って行きな。サービスだ‼ 」



「これも、持って行きな。」



「そっちのもらってて、こっちを断るなんてしないだろうね。」



「こんなに食べられないよ~。」




なんだか懐かしい気持ちだった。皆から手渡された品物をバッグに仕舞い、工場を目指す。思いのほか距離があるので、今度ニニに、街の中央を運行するバスを配置することを検討してもらおう。子供は無料。大人は魔力をちょっとだけ込めることで、実質無料。




忘れないうちにメモを取り、近くにいる手紙スズメを呼んで足に(くく)りつけ、ニニの所まで飛んでもらった。通信を早くすることも考えたのだが、あちらの世界を思い出すと、せわしなかった記憶しかない気がする……。こちらは、少しタイムラグがあるくらいで、いいのかもしれない。




急ぎ足で帰ってきたので、せっかくお風呂に入ったにもかかわらず、汗だくだ。



「どうした。何か忘れものか? 」



「ちがう、出来るかも。サーチかけたら、魔力の動きが追えるかもと思って、急いで戻ってきた。」




私がそう言うと、なるほどとシンも早速、準備に取り掛かってくれた。



「いいか、映像 再生するぞ。」




マグマ自体は凄まじいエネルギーの塊だった。太陽と同じ、肉眼で見ると危険! 例の所まで薄目して見ましたよ。



「あッ、すごい、すごい。」



サーチで見たダイヤはすごかった。ダイヤが出来る瞬間、自身の魔力を使って形を形成していた。それからすぐに近くの外魔素を吸収しているみたいだ。ただ、外に向かって魔力を放出するのは、マグマという外敵から身を守るため。



人工で作る場合、外敵がいないので魔力を作る必要がない。よって形を形成できずに何もできないと……

外がダメなら、中に向かって攻撃させてみるか?




「一人で考えてないで、教えろ‼ どうなってる?」


「それなら、シンも見てみればいいじゃん。」


「っおまえな、俺らの一族は魔力が微弱なんだ。出来るわけないだろう。」


「ゼロじゃなくて、微弱なら出来るよ。私が手伝ってあげるから、やってみよう。」


私は、シンの両手を取ると、その場に2人して座り込んだ。



「まずは右から、ゆっくり魔力を流すから、あまりにもアレだったら言ってね。」



「あまりにもアレって、なんだ…。」



そう言いながらも大人しくシンは私に身を委ねた。



「どう? 気持ち悪いとかある?」



「どちらかというと、温かい。」



「それなら、体の中を一周させてみるね。」



とにかく魔力というものを意識させてみるところから始まり、次の日から瞳の所に魔力を集める練習をさせてみた。はじめは苦戦していたが、もともと器用なシンは、コツだえ掴むと難なく習得してしまった。1週間かからなかった。なんか悔しい……




そんなこと言っている場合ではなかった。



「それなら、その状態を維持してね。映像流すよ。」



シンは私が見たのと同じものが、ちゃんと見えたらしい。



「これ、外部に仮想敵でも作って、作ればできるんじゃないか?」



「私それよりも、これがいい。」



それからはまた研究と実験の日々が始まった。途中から、代わるがわるドロテア、ピンキー、ニニ、などが様子を見にくれた。温泉に入ったり、たまには父様に会いに中央へ行ったりなどしながらし、今日という日を迎えた。






「シン、いくよ。」



「こっちは、いつでもいいぞ。」




装置についたレバーをゆっくり手前に倒した。機械ではないので、機械音はせず静かなものだが、装置の中をのぞくと中央に徐々に結晶らしきものが出来てきた。



中は高熱高圧なので、目を保護するための眼鏡をかけながら中をのぞいている。はじめは米粒大の結晶が大きくなってきている。形状はもちろんダイヤモンドカット、そして、中に向かっての攻撃はユリカの葉をモチーフに、ダイヤの中に魔力の溜まる空間を、自分自身の魔力で削って作らせている。




装置が止まったので、このまま魔力を外から装置の中に注いでみる――。



変化が見られず、また失敗かと肩を落としている私にシンが、


「その眼鏡外して見ろ。」



慌てて眼鏡をはずし、装置の中を見てみると、直径二センチほどのダイヤの中央に、葉脈だけのような赤い色の葉が入っているように見えた。思わずシンに抱きつき、



「出来た‼ シンッ、っシン―― これで、有限の資源が無限に近いものになった。これで、危険な事をしなくても安定してみんなが暮らしていける。」




ここまで来るのに、ずいぶんかかった。私とシンはそのまま、さまざまな大きさの人工ダイヤを作成した。もちろん、こぶし大も作った。今度は石なんて言わせない。




それから、ランプの明かりとして、馬車の動力として、(こちらにはまだ、車が届いていない。)数か月、実験を繰り返しやっと満を持して父様に報告に向かった。



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