028:商会立ち上げ
商会を作るにあたって、中央領に本店を作ってモルデラの町に支店を作ることとなった。そのため私とシンは、一時中央に帰ることにした。
「ドロテアにある程度の事は任せてきたから、大丈夫。ピンキー、ドロテアの言う事だけは聞くんだよね。」
そう、初めて二人が対面した日、私は人生で初めて人が一目ぼれする瞬間を目撃した。あれから数年が経過するが、いまだにピンキーのアタックは続いている。草食系に見えて意外と肉食系だったことに驚きだ。本当に少しずつだが距離が近づいて来ているような気がする。がんばれピンキー‼
「それで、商会の会頭を引き受けてくれる人に心当たりあるの? なかったら、シンがなってね。」
「なんでだよ。もう手紙で頼んである。相手からの了承も得てるから心配はいらない。」
「楽しみだね。」
馬車の中でシンとジャレながら、会話もひと段落し、久しぶりに父様にも会えるかな~。そんなことを思いながら城へと進んでいく。
「お久しぶりでございます。ウル様。」
「バスク、久しぶりだね。領主様は居るかい?」
「もちろんでございます。本日は久しぶりに、ルシアス様もお見えになっております。」
「それは、会えるのが楽しみだ。」
「それでは、お部屋へご案内いたします。」
今では、あの頃の私の部屋はない、と言う事になっている。父様がそのまま保存しているらしい。
しかし、どこから話が漏れるかわからないので、親しい人間の居ないところではお客人扱いしてもらっている。
通された客間で一息ついていると、同じ部屋にいるシンが、
「ウル、会頭をしてくれる奴をここに呼んでもいいか?」
「シンがいいなら構わないけど、相手もここで大丈夫なの?」
「あぁ、むしろこっちの方がありがたい。」
「それなら、いいよ。いつがいい?」
「こっちは、すぐでも― 」
「それじゃ、お茶だけ用意させてよ。その間に呼んでくれば?」
「実は、いるんだここに…… 」
「どこに?」
そう問いかけた私に、シンは少しだけ、本当に少しだけ申し訳なさそうにしながら、天井を指さした。
「お湯が沸くまで間に合わないね。作り置きがあるんだけどそれでもいいかな?」
取り合えず、姿を見せてもらう事にした。
客間のソファーに、私、シン、その向かい側に、二人の人物が座っている。一人は体にぴっちり添う衣装を身につけ、のぞく肌は褐色。瞳は青、髪色は灰色で短髪、腹筋は板チョコが入っているのかと思うほど見事な女性だ。いや~、かっこいい、エアと名乗った。
同じ配色なのだが、こちらは対照的でゆったりしたアラビアンな衣装を身に着け、髪の長さはエアよりは少し長かった。筋骨な肉体は持ち合わせていなかったが、その代わりにじみ出る知識人感。マオと名乗った。二人は双子でシンの実の兄妹になる。
「この2人がシンが会頭を任せようと思っている人?」
「その事なんだが――… 」
私とシンが話し始めたタイミングで、
「あたしは、反対だ。」
ソファーの向かいから、威圧感たっぷりに待ったが入った。あれ? OK出てなかったの?
「シン兄、考え直してくれよ。マオにそんな大役、務まるわけない。」
今にも掴み掛ってきそうな勢いで吠える。
「シン兄が帰ってきたら、もう言わないって約束したよね?エア…… 」
静かに怒り心頭なマオ。二人の視線の先にはシンが困ったような顔で頭を抱えている。さぁ、勝負はいかに‼
「ウ~ル~、そんな実況いれて遊んでるだろう。あとで覚えとけよ…。」
コッチにまで飛び火した‼ とにかく二人の言い分を聞いてみよう。
「マオは昔から体が弱くて、運動もままならなかったんだ。会頭なんて体力の使う仕事、できっこない。」
「それは昔の話で、今では人並ぐらいなら何とかなるじゃないか。エアは心配し過ぎだ。」
「この間だって、しばらく忙しくてロベルトの手伝いをしていたら、無理してしばらく寝込んでいたじゃないか。これでも大丈夫だなんてちゃんちゃらおかしいね!」
「それは、エアが脳筋で計算の一つもできないから、僕が請け負うしかないじゃないか‼ 自分の事 棚に上げて人のことばかり言うのはやめてよね。」
もうこれは、ただの姉弟ゲンカだな。隣にいるシンが、あちゃ~と目元を手で覆いながら天を仰いでいた。
「お兄ちゃん、大変だね~。でも、真面目な話、ロベルトの補佐が出来る人材、連れて行っても大丈夫なの?」
「そこは本人から了承もらってるから、大丈夫だ。」
「それなら、はい二人とも注目! それでは、マオは会頭をしてもらって、エアには副を請け負ってもらいます。もちろん、いきなり大変な仕事になる訳ではありません。だってまだ取り扱う品が出来てないから! でも、必ず儲けさせるから。それまでの間に商会を回す仲間を探しに行こうかな。マオの負担が少しでも減るぐらいの優秀な仲間を!」
忘れてた~‼ 私、友達いないんだよ…。この世界にはだよ‼ こっちで目覚めて6年、忙しすぎて、それどころでは無かった付けがここにきて来てしまった。
あッ、商会はとりあえず立ち上げてきたよ。商会名は【ファーブラ】
ピンキー宅もついでに研究所として登録してきて、アルミ合金の独占登録もしてきた。これで、3年はうちの商会しか商品を扱えないことになった。
ボーキサイトからアルミナを生成する技術も、登録しに行ったから、閲覧しに来た人から使用料として料金が定期的に入るようになる。アルミ合金は、今後 商会で取り扱う商品になるので、配合は企業秘密になる。
これを踏まえると、裏切ることが出来なくて、商業に関して精通していて、わきまえている人……
そんな都合のいい人いるの?
今は登録の帰りで、商店街をぶらぶらしている。珍しく一人だ。ほら、覚えているだろうか?私が最初の頃に、この場所をうろうろしていた時に発足した、〝天使を見守り隊〟自分で言ってて恥ずかしい… 本当にそのまま自警団になったらしく、ハティアの被災受け入れの時も大活躍だったそうだ。
なので、この商店街だけはシンも一人で歩かせてくれる。代替わりや、新しいお店もできてはいるが、老舗のお店も変わらず、私を覚えてくれている人たちが声をかけてくれたりと、いい気分転換だ。
その時だった、急に手をつかまれ
「あぁ、やはりあなたでしたか。俺のこと覚えていますか?」
またしても私は、最高のカードを一枚手に入れることとなる。




