027:細工職人
まずは、ピンキーに王都にいる父親を呼び戻してもらう事にした。
「これも入れといて。」
「これは~何ですか~?」
「合金で作ってもらったブローチ。これ見たら、職人魂に火がついて飛んで帰って来るでしょう。」
「わぁ~、そうだとうれしいね~。」
「ピンキーがお父さんのために頑張ったんだから、帰ってきたらちゃんと思いを伝えるんだよ。」
それから2週間後――
思っているよりずいぶん遅く感じたが、ピンキーのお父さんキースさんが町についたと知らせがあった。
あぁ、そうだった。私達がモルデラの町にいるときには、ピンキーの自宅に寝泊まりさせてもらっていた。広さは十分にあったので、みんなで住めるように少し手を加えた。
久しぶりの親子の対面だと少し気を利かせて、ゆっくり目にピンキー宅に向かったのだが、私達の目に広がった光景は、短髪タンクトッブ一枚の男性が両手でピンキーを持ち上げている光景だった。
私とドロテアは、大慌てでそれぞれの腕にしがみ付いたが、ビクともしない…。
「事情はあるのでしょうが、暴力では何も解決しませんよ‼ とにかくその手を放してください。」
「なんだ、なんだ。お前さんたちもして欲しいのか? 」
そう言ってピンキーを降ろすと、代わりに私の両脇に手を入れて高い高いしてくれた。
「ピンキーは、これやるとすっげー大喜びしたんだよ。」
「父さん~、ボクいくつだと~思ってるの~? もう喜ばないよ~。」
「そっ、そんなことはいいから、早く下ろして‼ 」
この年になってからの高い高いは、恐怖しかない。怖かった……。
「なんか珍しいもの見たな。俺も今度してやろうか?」
ニヤニヤしながら、聞いてくるシンにまたもや泣き所をお見舞いしてやった。
「おぉ、それより、ピンキーあれなんだ! 今まで見た事ない素材に、いても立ってもいられなくて、飛び出しそうな首根っこを母さんに捕まれながら、とりあえず今抱えていた案件片づけて来たぞ。」
あぁ、そのワードは……
「あれはね‼ 」
遅かった… だが、そこはさすが父親
「俺が聞きたいのは詳しい構造じゃなくて、どうすれば扱えるのかだけ教えてくれ。それと特性だな‼ 」
さすが職人、詳しい調合は教えられないが、細工に向く柔らかい配合の合金を渡すとそれは見事な細工をこさえてくれた。
「これはいい、柔らかくて扱いやすい。思い通りの形に持っていきやすい。ピンキー、俺は王都を引き上げて帰って来るぞ。」
キースさんの一言に、いつまでもピンキーのお家にお世話になる訳にはいかないと、今更ながらモルデラに拠点を作ろうかと考えていた時、
「ここは~、おじいさんの~家を、僕がもらったから~、お父さんと~お母さんは~、町の方に~家があるから~、大丈夫~ 」
「そうだったんだ。それなら助かった。もう研究所みたいになってるから、移動させるのも一苦労なんだよね。」
そうなのだ、ここから材料を取りに行く場所は近いし、民家からも遠いから本当に助かっていた。
このまま研究施設として登録してもいいくらいだ。
「ピンキー、この建物、研究施設として施設登録してもいい? それから、合金販売のために商会を立ち上げよう。施設代表はピンキー、副をドロテア。シン、誰か商会長にしてもいい人物、捜してきて。利益はしっかりとるけど、ガメつくなくて、シンが信用できる人物。」
「そんな都合のいい奴いるわけないだろう。」
「ハイ、うそ~。返答に一瞬だけどよどみがありました。なるだけ早くしてね。」
中央領にいる父様に商業手続きに必要な書類と、モルデラの町長にちょっと話がスムーズになる様、手紙を書いてもらった。
私が研究だ~、開発だ~と走り回っていたこの6年、ルシアス一家は今も王都で暮らし、そして初めの頃ほどではないが、貴族から支援が続いている。
そろそろ、温泉や観光以外でドカンと利益を出して、ちょっとハティアの街で、でかい顔をしている勘違い貴族にお帰りいただこう。
「こんにちは、今日皆さんにお集まりいただいたのは、この素材を見ていただきたかったのが一つ。それから、本題です。この素材で馬車に革命おこしませんか?」
さかのぼる事、数日前。私はない絵心を総動員させて、車の絵を描きまくっていた。少し地面から浮かすことが出来たら、騒音問題も解決するし、悪路でも平気になるんじゃないかな?
基本は4人乗り設計で、車同士は一定の距離に走行中は近づけない仕様にすれば、事故の心配もなくなる。卵型がかわいいかな~、色は基本白で、カスタムは自由で、ボディは合金にガラスとまずは、手のひらサイズで試作を作ろう。あとは、専門の人に丸投げだ。
紙に描いた図案と素材を持って、キースさんの所へ持って行って丸投げした。中に人が座ることも伝えて、素材も渡して様子を見てみた。外側だけは結構、簡単に再現してくれていたが、そのあとは、町に繰り出し昔なじみの、家具屋、ガラス細工屋、法陣屋と、こうでもない、ああでもないと、繰り広げてくれたらしい。
実際、等身大にして実験してみないと、わからないと言われたが手のひらサイズで、理想の車が出来上がっていた。そして、町民に向けた提案の所へ戻る。
「これが、試作になります。この土地の、今まで価値がないと思われていた、岩山から取れた素材で作られています。この町も独自で特産品が作れるんです。今まで磨いてきたその腕を、ここで発揮しなくていつするつもりですか? さぁ、終わりの町なんて言わせません。反撃の狼煙を上げましょう。」
試作を見せたとたん、目つきが変わった。言葉をかけると燻っていた心が燃え上がったようだ。それでは、素材と、案だけ授けて、あとは専門にお願いするとしましょう。
実験する場所は、町はずれの草原。私が一帯に安全対策として、陣を張り巡らしたので、ある程度は大丈夫なようにしてきた。ピンキーが見に行くのは決定事項なのだがドロテアに監修をお願いして、私達は商会を立ち上げるために奔走するのだった。




