025:新たな町
ハティアの町の震災から6年――
町の復興は町民や中央領や、ルラリアからの移住民のおかげもあり、今では採掘の町ではなく、療養の街【ハティア】になった。
被災した町民に現実を受け止めてもらうべく、私は心を鬼にして上映会を実施した。
もちろん、やり場のない怒りを浴びせられ、泣き縋られ、初めの頃は大変だった。それでも、なんとか協力者を集いながら町民は徐々に現実を受け入れて行ってくれた。
それからは、もともと練っていた計画を皆に伝えた。
今回の事を踏まえると、また200年後に同じ災害が起きないとは限らない。自分たちの子孫にまた同じ気持ちを味合わせたい人はいないだろう? と情に訴えてみると皆、賛成してくれた。
今まで採掘で発展してきた町だったが、これを機に思い切って温泉の町にシフトチェンジさせてみることにした。そうすることで、モリーア山の地熱も利用出来て、山の移動も無くなるのではないかという、素人の安直な考えなのだが、そこはプロであるニニが経過観察をしながら村に滞在してくれると言う事になった。
まずは、噴火が起きてから1か月たったころに、地魔法の得意な人たちとニニ、山じぃ、メニラさん、シン、私で現地調査に行ってきた。
イメロデ山はマグマが固まりしっかり山の形をしていた。隣にあった元町だった場所は大きな池になっている。
「わかっちゃいたけど、実際見ると、来るものがあるな……」
「みんなが早くこの土地に帰ってこれるように、がんばりましょう。」
それから、私はみんなが探索している場所よりもっと深い位置を魔力でサーチしてみた。やはり、モリーア山の下にはマグマだまりと、魔力だまりがある。
待てよ… これからは、モナリ山で生成された雨雲はモリーア山で雨期になる。熱量の高い場所に向かうから! そうすれば、地下水として溜まるはず。それは地熱に温められて温泉になる。
その水の出口となるトンネルを、この湖になってしまった町につなげれば全部温泉にならないかな?
良しやってみよう‼ もちろん皆にちゃんと話しました。ほうれんそうは大事!
それから、私はサーチの魔法を使いながらせっせと穴を掘り続けること半年……。マグマだまりの側を行って返ってくるように掘りました。地道だった。よくやった、長かったよ~。
皆はその間に、人が住めるよう今までの町とは、少し離れたところを切り開いてもらって温泉街を建設中。
それと同時進行で、モナリ山からユリカの木を移植中だ。地熱の通り道になっている場所を教えてそこに移植している。これでうまく根付いてくれれば、ニニのお父さんの研究がこれでまた一つ進むことになるだろう。
「それでは~、開通‼ シン出来たよ。やっと終わった。」
「よくやったな。これで温泉を町に引けるのか?」
「成分とかも調べたいから、数日はこのまま様子見るけど、うまく行けば大丈夫だと思う。」
「なら今日は打ち上げでもするか。」
「するする~ 」
数日後―― ボコボコッぶくッぶくッ
これって、メタンガスじゃないかな?ほら、あれだよ、天然資源とかいうやつ。とりあえず鑑定だ。
名称:【天然温泉】
成分:【メタン+MP、ナトリウム、カルシウム他】
効果:【お肌つるつる】
お肌つるつる、絶対入ろう。しかし、各場所に流す前にメタンを取り除かないと… とにかく、みんなに相談しに行こう。
お昼休憩だったのか、それぞれが弁当だったりを食べながら疲れを癒していた。そのとき不意に聞こえた会話に足を止めて聞き入ってしまった。
「でも、採掘の仕事がなくなって途方に暮れてたけど、これでしばらくは何とかなって本当に助かったよな。」
「しかし、この復興が終わったらまた仕事がなくなるんじゃないか? 俺たちに今更、肉体労働以外の仕事なんてできる気がしねぇ。」
そうだよね。今更、違う畑を耕せなんて… 採掘はもうしないのは決定事項だけれども、ダイヤを人工で作ればいいのでは? 向こうの世界で実現できてたんだもの。コチラの世界で出来ないはずがない。
材料はある。知識も頭にある。あとは、実証だけだ。そうだ、鑑定の使えるドロテアに来てもらおう。
そこからは試行錯誤の連続だった。とりあえず、町に温泉は届けてあげたいので、各場所に送るパイプにメタン+MPを回収する陣を刻んだ。集めたメタンを保存するために、ため池と街の間に大きな工場を作った。
「また失敗だ―― ただの炭になった…。」
「メッ、メタンから、たっ、炭素を取り出すまっ、では、かっ、鑑定でうまくいくんです、けどね…。」
「あぁぁぁぁ~、心が折れそう」
「はッ、箱に入れて、でッ、出来上がれば、楽なんですけどね…。」
「ドロテアなんて?」
「…ひぃ、ごめんなさい、ごめんなさい。そッ、そんな簡単なわけない、ですよね。」
「いや、いいかも‼ 」
~簡単なダイヤモンドの作り方~
まずは、ダイヤモンドの元である炭素をあらゆる物質から切り離し、高気圧+高温にさらします。
どのくらい高気圧+高温なのかと言うと、1カラットのダイヤを作るために必要な気圧100t。それに1600度の炎を当てると出来上がり。ほら簡単でしょう?
ただ、温度と気圧を間違えるとただの炭になります。
人間の感覚で調節しようとするから、いけないんだよ。専用の箱を作って、それに任せればいいんじゃない?
でも、どんな箱ならできるの?
「フフ… 煮詰まってるみたいね~。差し入れよ。ちょっとは休まないと、いいアイディアなんて出ないわよ。」
「ロロ先生。現場は大丈夫なんですか?」
「えぇ、メディアに任せてきたわ。」
メディアさんとは、元は中央領にいた看護士さんだ。今回の騒動をきっかけに、中央からハティアの町へ移住してきてくれた。いろいろな所にそんな人々がちらほらいる。
「町はどんな感じですか?」
「今までと違って、区画を作って建設しているから、とてもわかりやすいわ。それにもう町というより街って規模になりそうね。あぁ、そうよ! ユリカの木、うまく根付いてるみたいよ。これを伝えに来たのよ。忘れてたわ。」
「本当ですか‼ 」
煮詰まっていた私には、何よりうれしい報告だった。町の再建は若手のメニラさんを筆頭に、副相談役をニニにお願いして進めてもらっている。このまま温泉の街はあの二人に任せて行こうと思う。
「これで一つ肩の荷が下りたわね~。でも、移植してどうするつもりなの?」
「私が、ドロテアのお母さんに施した治療、覚えてますか?」
「もちろんよ。あんな神業あなた以外に無理だもの。」
「その神業を、自然界で行ってくれているのが、ユリカの木なんですよ。なので、私がいなくても、患者さんたちの治療が可能になります。温泉の蒸気も呼吸器系の病にはある程度有効です。」
ロロ先生が私をキッと睨みつけながら、
「あなた、いつから考えていたの? はぁ~、まぁ、いいわ。なんだかんだ、あんなに暗かった町が今では活気にあふれて、みんないい顔してるんですもの。あの子も、早くあんなところ切り上げてこっちに来ればいいのに…。」
「あの子って誰ですか?」
ロロ先生が珍しく憂い顔だ。
「姉の子なんだけど、こことは反対側に位置する【モルデラ】の町で研究してるのよ。」
「いいじゃないですか。研究!」
「全然良くないのよ‼ ここハティアの町はダイヤモンドが採掘される鉱山だったけど、反対側の【モルデラ】の町の山脈はハズレ山脈って言って、赤い台地の何も取れない山脈なのよ。それなのにあの子ったら絶対役に立つはずだって、研究している変わり者なのよ。」
赤い山脈だと‼ それはもしかして、あれなのでは?
私はロロ先生の両腕をがっしりと掴み、ニッコリ笑顔で
「先生、そのお姉さんの子供さんに手紙を書いてもらっていいですか? 近々私が会いに行きますと。」




