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019:雨期よりヤバい

思ったより近くてよかった。普通ならこんなに近い距離に野生の動物なんて近づいてこない。それなのにあのコヤンはいた。それがなぜなのか検証する前に、コヤンが吐き出したものが何なのか確かめてたい。



まぁ、わかってましたよ。いくら疲れが吹き飛んだ()がするからと言って、本当に吹き飛んだわけではないので、すぐにシンに追いつかれましたけれども… 私の行動には意味があると思ったのか、何も言わず護衛として付いて来てくれている。



向かった先には、ユリカの木。この辺りだった気がするんだけど…… あった! 先ほど苦しんでいたコヤンが吐き出した物体がそこにはあった。鑑定をかけてみる。



名称:【コヤンの痰】

成分:【鉱砂+ユリカ水+粘膜+血液】

効果:【特になし】



間違いない。これでドロテアの母親が回復する兆しが見えてきたぞ。でも、なぜあのコヤンはこの木が蒸気を発するタイミングが分かったのだろう? 



ここは群生地なのか、ユリカの木がそこかしこに生えている。しかし、葉の色や見た目には何の違いも分からない。



その場に座り込み唸っている私の側に影が差した。見上げると、山じぃがそばに立っていた。


 

「山じぃ、ユリカの木があんなふうにモクモクになるのは、なんで?」


「それがのぉ~、誰もわからないのじゃよ。いや、わからないと言ったら語弊(ごへい)があるの~、研究しようと思った人間がおらんから、わからないが正確な答えかの。」



「どうして研究しなかったの?」


「この木はな、このモナリ山にしか自生していない珍しい木でな。昔、興味を持った魔法研究員の一人がこの木を一本持ち帰ったんだが、他の土地で根付かなかったらしくて、研究を諦めたらしい。あの頃は、蒸気機関も通ってなかったから、この土地は遠すぎた。そう言う事じゃよ。」



他の土地で根付かないと言う事は、この土地に何か絶対あるはず。この木が蒸気を発するのにも必ず理由がある。それが解決できないと、この木を持ち運んだところで意味がない。



「シン、ちょっと私、思考の海にダイブしてきます。しばらく戻ってこないから、あとの事、任せていい? 夕飯の時間に声かけて。よろしく。」



それから私は、返事も聞かず思考の大海原へ旅立った。



そもそもなぜ一定の時期に、一斉に蒸気を上空へ放出するのか? 

弱っている個体がなぜここへ来るのか? 


なぜこのタイミングで山の移動が始まったのか?

なぜこの山以外に根付くことがないのか?



モリーア山は唯一の活火山。地脈ってどうなってるんだ?

蒸気を出すのが何かを逃がす事と(イコール)と、捉えるのなら、何を逃がす?



熱だけなら、地球と同じ原理で雲を発生させて雨を降らせればいいはず…… 魔力か?

魔力じゃないか? 地中に溜まった魔力を吸い上げて蒸気と一緒に放出して雨として降らせて循環させれば土地は潤う。



では、なぜ今回山が動いた? ユリカの木だけでは逃がしきれない熱が溜まったと仮定するとどうなる?

ユリカの木を燃やしたらまずいと、考え移動したしたら……



「火山が噴火する。」


「なんだって‼ 」



護衛として残っていたメニラさんが隣で大声で叫んだ。うるさい。気が付くと拠点をこちらに移してくれていたらしい。空もだんだん暗くなってきていた。



「あくまで可能性の話だけど、このまま行くとモリーア山が噴火する恐れがある。そうじゃないと、仮説が当てはならないところがいくつかある。」



「今すぐか?」



「さすがにすぐって訳じゃないけど、雨期の時期と重なると思う。」



「何でそう思うんじゃ?」



「モリーア山は、モナリ山に、被害が最小限になる様に動いたと仮説すると、噴火した後、長く燃え盛るマグマが滞留すると山火事になる。それなら、雨期の時期にかぶせたらいい。もしかしたら、そうやってイメロデ山は出来たのかもしれない。そうすると、噴火してマグマが向かう先はおのずと分かるよね?」




見る間に青ざめていく皆の顔、特にひどいのはドロテアだった。母親の治療薬のために同行したはずなのにフタを開けてみると故郷の危機ではないか。




だが、実は治療の目途は立っっている。

ユリカの木は地下に溜まっている魔力と地熱を吸い上げ一定量になったら葉脈から放出。



その時、ミスト状になった魔力がああやって肉眼で見えていたと言う事だ。



ミスト魔力は、一定時間その場にとどまるという性質を持つ。

その間に、呼吸により体内にその魔力を入れれば微粒子なので肺の奥まで到達。



鉱砂と魔力が結合すると、棘のような形状で肺胞に刺さっていた形状が丸くなり体外に排出され、症状が回復したと思われる。



これはあくまで仮設なので、帰りに動物を何匹か確保して実験してみようと思っているが、たぶん間違いないはず。この状態を人工的に作り上げれば行けるだろう。



それよりもまずは、ここから早く町に帰って、父様、ルシアスと避難の話し合いをしなければ、思っているより時間の猶予はないかもしれない。



「シン、明日中にここから町に帰る方法ない? 」


「空でも飛べばいけるんじゃないか?」



投げやり感が半端なかったが、ナイス回答だ。私の顔が、よほどキラキラしていたのだろう、シンの顔が引きつりだした。口は禍の元 言った事の責任はしっかりとらないとね。







「やっほーい」


「……いッ、いィャぁ~」


「…ウッ……。」


念願かなって、空飛んでます。ピクニック用で持ってきていた絨毯が役に立ったよ~。裏面に浮遊とか重力に関しての陣を刻んで、表の後ろになる部分には風の陣を刻んで舵取用。前には防御の陣を刻んで風から乗っている人間を守る。



もちろん、改良の余地はあるけど緊急事態だから。ついでにコードをそれなりに上げて山を上空から眺めて見ることにした。



「見て、見て! 思ってるより動いてたんだね~。予測がいよいよ、現実味を帯びてきてるね。」



眼下に見える景色に、予測が確信に変わった。火山口からのぞく赤く煮えたぎっているマグマ。大地の息吹を感じて普段なら感動ものだが、自分の身近に迫っているとなるとそうも言ってられない。



実は今、私、ドロテア、シンの三人しか絨毯に乗っていない。決して、決して、絨毯が嫌だったというわけではなく、効率を重視した結果こうなった。



山じぃは独自のルートがあるらしく、そちらからだと、だいぶ早い。しかし、素人には到底、体力が持たない。そこで二手に分かれることにした、と言うわけだ。馬車も置いて来てるから、取りに行かないといけないしね。




飛び始めて40分ほどして、もう町が見えるところへやってきた。しかし、町に下りるわけにはいかないので、ドロテアと初めて会った、丘の上に下りることにしたのだが…… やっぱり、行き当たりで物は作ったらいけないね。




うしろには風の陣があるから進むけど、上空で停止する機能がないから、どうやって下りよう?

飛行機みたいに胴体着陸するか。それしかない‼




「本日は国際便〝ウル〟をご利用いただき誠にありがとうございます。お客様にご案内申し上げます。激しい揺れが予測されますので、近くのものにお摑まり下さい。それでは最後まで快適な空の旅をお楽しみください。」




結果、何とか丘の上に降立ちました。絨毯ボロボロなりましたけど…。



「ドロテア、大丈夫? 次は安全に配慮して作るから。まずは、お母さんと、ロロ先生のところに行こう。」



生まれたての小鹿の様にぷるぷるしてたので、今度はちゃんとした乗り物としての飛行艇を作ろうと胸に刻みました。



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