救いのベリー
ドサッ
その衝撃で目を覚ました。
「あ...」
ルカはうつ伏せのまま数分思考停止した。今まで天界追放された者の例は数回しかない。
少し経つと、怒りと焦りが込み上げて来た。
「やばいやばいどうしよ・・・!!今まで追放されたやつで生きたことなんてない!それより。。。あんのクソ上司ィ・・・お偉いさんにチクりやがったな」
別に悪いわけでもない上司を憎み、ルカはやっと立ち上がりふと周りを見渡した。
「こりゃあまずいな...」
ルカは森の小さな空間に立っていた。森にはたくさんのモンスターがいる。
しかし幸いなことに、今はどうやら朝のようだ。洞窟の近くに行かなければそこまで危険ではない。
ルカは神が使えるスキルをまだ使えるか試してみた。
「天堂―インテリウス!」
「...」
聞こえるのは鳥のさえずりと草のざわめきだけだった。
ルカは片手をゆっくりおろし、拳を握りしめた。
「何もしないまま死ぬより何かして死んだ方がまだマシだわ。絶対に生きてやる!・・・まずはこの森を抜けないと」
そうして暫く歩くと、チェリーを見つけたのでポケットに入れた。
ざわざわ
「結構おいひいやない ん?」
音に気付いたルカが発生源を見つけると、そこにはアプルムの集団が森を歩いていた。アプルムというのは猪と狼を足して二で割ったような性格と見た目をしている。
「ひっ」
無防備のルカは息を殺してアブルムが去るのを待っていると、一匹のアブルムが急にルカの方向に顔を向けた。その一匹が低い声で一回吠えると、ほかの仲間もルカの方へ向いた。鼻を動かしながらこちらへゆっくりと向かってきている。
「・・・!」
どうやらルカの決意は数分にして粉々になりそうだった。しかしルカはあることを思いついた。
「・・・」
見つかったが、アブルムたちはルカをスンスン嗅ぎまくった後、興味がなさそうに歩き始めて行った。
そう。ルカはチェリーをつぶし、それを服につけて死んだふちをしていた。口も都合がいいことに血が出ている様に見えていた。
ルカはアブルムたちが十分に離れたことを確認すると、立ち上がり、草をかき分けながらまたあてもなく歩き始めた。服はまだ神仕様のままで、裂けることはないようだ。
「まさかシルヴァの森じゃないといいけど・・・」
シルヴァの森とは、この天体で最も大きな森のことである。その森は10個の国が入るほど大きく、その森へ迷い込んだ旅人はほぼ必ず死ぬ。
****
何時間歩いたのだろうか。
ルカはすでに疲れ果てていて、のども砂漠の様だった。
「疲れるってほんとに疲れるのね・・・」
息を切らしながらふらふら歩くルカはそうつぶやき、嘆いた。
「あ゛~~~ッ!もう無理!ほんとにシルヴァの森でしょこれ!すごいところに送り込みやがった!」
すると、小さな草原が見えてきた。
「もしこれがシルヴァの森なら、あれは・・・なんだっけ名前」
プラウム草原という名だが、あんなに落ちこぼれなので覚えられるはずもない。
「どうでもいいや」
ルカはそこへ倒れこんだ。
「死ぬかも~」
腕と足を前後に動かしていると、水の音が聞こえてきた。
「川?」
手をぷるぷるさせながら這いずると川にたどりついた。
「水ッッッッッ!」
ルカは顔を川に突っ込んで水をがぶ飲みした。足と手は疲れ果ててまっすぐ伸ばしていた。
他の人から見たら完全にやばいやつにしか見えない。
「ぷはッ」
水を心行くまで飲み、やっとしっかり立ち上がった。
「行かないと・・・」
疲れはまだ回復していないが、どうしようもなく歩き始めた。
いくつもの倒木や小川を乗り切りると、何か建物らしいものが見えてきた。
「あ!あれはッ!家!」
ルカは疲れなど忘れ、筋肉をフルに使って走り始めた。すると、何がグニッとしたものを踏んだ。
「ん?」
ゆっくり下を見ると、起こった様子のたくさんのスライムが襲い掛かってきた!
「うわぁぁぁぁぁ」
全身全霊で家らしきものに駆けこみ、ベルを揺らしまくった。
リンリンリンリンリンリン
そうすると、ルカより少し年上の女の人が困った様子で出てきた。
「あ・・・」