86:楽しい夜の終わり
なんだかんだありつつも、晩餐会は無事に終了した。
あとは和やかな会話が続き、ゆっくりと夜が更けていく。
気づけばもうすっかり真夜中だった。
「そろそろお開きとするか。存分に楽しめたか?」
皇帝の問いに、皆満足そうに頷いた。
「ま、なかなかだったぜ」
「久々の宮廷料理は素晴らしい! 感謝に尽きるな!」
「僕がこのような贅沢な扱いを受けるなどと、頭の上がらない思いです」
「もちろん! とっても楽しかった。ありがとうね皇帝様」
そしてその日は解散となり、食堂を出てそれぞれの自室に戻った。
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「勇者様の礼服姿、かっこよかったなあ……」
自室で一人、ダームは呟いていた。
思い出すのは晩餐会の時のカレジャス。長い赤毛を惜しみなく晒すのを見たのはあれで二回目だ。なんて男前なんだろう。
彼が皇子だったとは本当の本当に驚きだが、それでもダームの想いは変わらない。
「明日は帝城を案内してもらおうかな。世界を救った英雄なんだから、それくらいは許されるよね……」
皇帝が言っていたのだが、明日国民全員に向かって勇者が自分が魔王を打倒したと伝えるための会見が用意されている。
カレジャス自身は嫌がっているが、きっと誰もが彼を英雄と認めるだろう。そしてダームたちも。
そんなことを考えていると、目がとろんとしてきた。
――とにかく今日は寝よう。
楽しい夜が終わりを告げる。
寝巻き姿のダームはベッドにごろんと横になり、そのまま目を閉じた。




